世界で最も美しい駅14選に国内で唯一選ばれた「金沢駅」。鼓門のおもてなし力
金沢駅は2011年にアメリカの旅行雑誌「トラベル&レジャー」のWeb版で、世界で最も美しい駅14選の6位に選出されています。
北陸新幹線の開業に伴いリニューアルした「金沢駅」。GW中の賑わいもニュースで多く取り上げられていましたね。
実際に間近でみると、「鼓門(つづみもん)」の威風堂々とした門構えと、「もてなしドーム」と言われるガラス張りの天井アーチは、まるで巨大なオブジェのような佇まいです。
そこに表現されているのは、加賀藩以来、伝統と芸能を大切にしつつ育まれてきた「おもてなしの心」と、アートを愛する金沢の未来へ挑戦ともいえるのではないでしょうか。
では、世界が認めた美しい駅「金沢駅」を紹介しましょう。
駅は立派な観光名所
金沢に着いたらまずは兼六園に行こうか、それとも金沢城か。あるいは近江町市場で美味しいモノを食べようか……。そんな観光プランに思いを馳せるのは楽しいひとときですよね。
でも最初に「観光」してほしいのが、駅そのもの。金沢には素晴らしい建築物が数多くありますが、それらを代表するにふさわしい立派な観光名所、なのです。
なんと国内だけでなく海外でも評価が高く、2011年にはアメリカの旅行雑誌「トラベル&レジャー」のWeb版にて、世界で最も美しい駅14選の6位に選出! ちなみに1位はベルギーのアントワープ中央駅。2位はイギリスのセント・パンクラス駅。3位はモザンピークのCFMマプト中央駅。
1位のアントワープ中央駅は、大理石がふんだんに使われたネオバロック様式の豪華な素晴らしい駅です。2位のセント・パンクラス駅は、高い時計塔が象徴的な由緒ある宮殿のような駅。3位のCFMマプト中央駅は、エッフェル塔の設計者であるギュスターヴ・エッフェル氏が設計に参加した、ドーム状の屋根とエメラルドグリーンの外壁が美しい駅です。世界にはいろいろな駅があるのですね。
大きな傘をイメージした「もてなしドーム」
では、金沢駅に視点を戻してみましょう。
まず目を見張るのが、ガラスとアルミ合金からなる巨大な天井ドームです。使用した強化ガラスは3,019枚、アルミフレームは6,000本になります。その様はまさに巨大なオブジェ!
ガラスとアルミ合金の組み合わせはアートのように素晴らしく、太陽の光や夜のライトアップによって様々な表情をみせます。この天井ドームは、通称「もてなしドーム」と言われ、大きな傘をイメージしているのですね。雨や雪の多い金沢で、駅を降りた人にそっと傘を差し出す、そんな粋な心意気を表現しているのです。
らせん状の柱の内部には送水管が!
そしてドームの先端で、厳かに佇むのが「鼓門(つづみもん)」です。
高さ13.7mの太い2本の柱に支えられた門は、伝統芸能である能楽・加賀宝生(かがほうしょう)の鼓をイメージしています。
この鼓門には、米松の構造材が使われており、らせん状に組み上げられた柱と、ゆるくカーブを描く面格子の屋根が一際美しく、風格のなかにある繊細さが、とても素晴らしいです。この鼓門ともてなしドームが一体となった風景は、観光スポットとしても見応え十分!
そして建築美もさることながら、注目したいのが構造面。鼓門の2本の柱の内部には送水管が通っており、もてなしドームの屋根に降り注いだ雨水は、この2本の柱の内にある送水管へと流れ、貯水槽に送られています。雨や雪がとても多い金沢で、大きな傘であるドームの水が柱の下に流れ込んでいく――。そんなところにも「おもてなしの心」があらわれているのです。
庶民にも親しまれた能「加賀宝生」
駅の顔といえば、その土地の顔ともいえるもの。ではなぜ、能楽の「鼓」が玄関口に選ばれたのでしょう。
金沢は、加賀藩の初代藩主・前田利家の時代から、代々能楽を愛好してきました。能には5つの流派がありますが、5代藩主・綱紀になると、当時の徳川将軍・綱吉にならい宝生流を愛好。綱紀は宝生流をとても手厚く保護し、武家だけでなく庶民にも広がっていきました。
「金沢へ行くと松の上から謡が降ってくる(植木屋)」のたとえもあるほど、暮らしに能楽が溶け込み、多くの人々に愛されていたのですね。
金沢は今でも、その文化が脈々と受け継がれ、石川県立能楽堂や金沢能楽美術館という能楽専門の立派な美術館もあります。石川県立能楽堂では、毎月(8月のぞく)定例能が行われているので、こちらに足を運んで、歴史文化に触れてみるのもいいかもしれません。
能楽の鼓をイメージした門構えで、観光客をお出迎えしている理由がおわかりいただけたでしょうか。城下町である金沢は、伝統芸能でおもてなしをする文化が息づいているのです。
北陸新幹線開通でいま最もホットな街・金沢の新しいシンボルとなった金沢駅。近くから細部をじっくり観察するもよし、遠くから全景をとくと眺めるもよし。そうそう、鼓門を背景にパチリと写真を撮るのをお忘れなく!
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