ディズニーシー「ストームライダー」終了に反対の声 裏側にあった綿密なストーリー設計、オリエンタルランドの見解は(1/2 ページ)
「ストームライダーのクローズはポートディスカバリーの世界観を崩壊させるもの」とはどういうこと?
東京ディズニーシーのエリアの1つ「ポートディスカバリー」に、2001年の開園当初からあるアトラクション「ストームライダー」。新規アトラクションの開設にともない2016年中旬に終了することが、5月19日にオリエンタルランドから発表されました(関連記事)。
これを受けて同園のファンの一部から、ストームライダーのクローズは「ポートディスカバリーの世界観を崩壊させるものだ」と非難の声がネットに上がっています。Twitterには「#ストームライダークローズ反対」といったハッシュタグが登場。このほかクローズの中止を求める署名ページも立ち上がっています。
え? ストームライダーってただの乗り物系のアトラクションじゃないの? 同園へ2、3年に1回行くか行かないか程度の筆者にとって、ファンたちの訴えは意外なものでした。ポートディスカバリーの世界観? ストームライダーと何の関わりが? 調べてみると、同エリアだけでなく東京ディズニーシー全体には、ただ園内を巡っているだけではわからない綿密なバックグラウンドストーリーが設定されているのが分かりました。
ポートディスカバリーはストームライダー完成のお祝いのまっただ中
そもそもストームライダーとは、スクリーンの映像や音響に合わせてゲストの座席が動くことで、飛行型気象観測ラボ「ストームライダー」のフライトを仮想体験できるというアトラクション。ゲストは気象観測施設「気象コントロールセンター」から「ストームライダー」の2号機に搭乗し、接近中の史上最大の嵐を消滅させるミッションに参加する、というストーリーになっています。
ポートディスカバリーは、その気象コントロールセンターあたりを一帯とする「時空を超えた未来のマリーナ」のテーマのエリア。水上をくるくる回りながらランダムに蛇行していくアトラクション「アクアトピア」があったり、デッキにはマンボウ型の潜水艇が停泊していたりと、全体で「自然と科学が調和した未来」を演出しています。このテーマを知らずとも、建物のデザインやBGMから未来の空気を感じ取っていた人も多いはず。
こうしたエリアと施設・アトラクションとの調和だけではなく、実は次のようなバックグラウンドストーリーもあることが、講談社からの書籍「旅する東京ディズニーシー」(2013年発行)で紹介されています。
現在、マリーナ(※ポートディスカバリー)には気象の謎を解明するために、世界中の科学者たちが集結し、最先端の輝かしい実験結果をゲストに公開しています。そして、ストームライダーという科学の新時代を告げる新型機の完成を祝って、フェスティバルも開催されています
ほかの情報もあわせてまとめるとこういうこと。私たちがストームライダーに乗るときに入り込む建物「気象コントロールセンター」はもともと、地球上の複雑な気象の謎を解明する研究施設でした。科学者たちの最終目標は壊滅的な被害をもたらす嵐を制御すること。彼らはいよいよ、ミサイル「ストームディフューザー」を撃てば嵐を消し去ることができる新型機・ストームライダーを完成させます。
その完成を祝おうと、ポートディスカバリーではフェスティバルを開催。「アクアトピア」は本来は新しい航行システムの研究施設で、フェスティバル期間中に特別にゲストへ開放し、新たに開発された3人乗りウォーターヴィークルに試乗してもらっていたのです。デッキに泊まっている数々の潜水艇も、ホライズン湾(エリアにある海)で開催中の海底レースに出場するマシンという設定。
このようにポートディスカバリーと各施設・アトラクションはストーリーで結びついており、特にストームライダーは接点が多かったのです。単純に乗ったり歩きまわったりするだけでも楽しかったのですが、背景を知った上で建物1つ1つを観察すると「時空を超えた未来のマリーナ」という異世界にますます入り込めそう。
東京ディズニーシーにはほかにも「ミステリアスアイランド」や「アメリカンウォーターフロント」などコンセプトの異なる6つのエリアがあります(同園ではこのエリアのことを「テーマポート」と呼称)。テーマポートにはそれぞれにストーリーがあり、なかにある施設やアトラクションと密接な関わりがあるとのこと。熟知して世界観に浸ってみたくなると同時に、来園者を「夢の国」へ誘うディズニーシーの設計の深さに感心させられました。
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