インタビュー

「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」ボビン監督の頭の中に意外な“ワンダ”

幻想的な世界を創り上げた監督の頭の中を知ると、作品がもっと楽しくなる。

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 7月1日から公開の映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」。ルイス・キャロルの名作をティム・バートンが映画化し、大ヒットした「アリス・イン・ワンダーランド」待望の続編。そのメガホンをとったジェームズ・ボビン監督にお話を伺いました。


まず紅茶の飲み方からしてかっこいい英国紳士・ジェームズ・ボビン監督

―― 原作「不思議の国のアリス」はイギリス生まれの物語ですが、イギリス出身のあなたがメガホンをとったことで、ティム・バートンが前作で確立した「アリス」の世界にどんな要素が持ち込まれたのでしょう。

ボビン 「アリス」はイギリス人であれば、最も早く読み聞かせられる物語。私自身イギリスで生まれ育ち、原作の挿絵を描いたジョン・テニエルの絵がとても大好きで、今作では自分が好きだったその世界観を持ち込めると思いましたね。

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 今作では、村やその住人など、いわゆる普通の人たちが前作よりもたくさん登場することもあり、それらに、テニエル、そして、ヴィクトリア朝の雰囲気を出したいと考えました。バートン監督が作った世界やキャラクターに敬意を払い、守りつつ、それらの要素を取り入れていきました。

―― 今作ではマッドハッター(帽子屋)の過去が重要なキーで、ハッターがよりエモーショナルに深く掘り下げられていますよね。ハッターを演じるジョニー・デップにはどんなことを求めましたか。

ボビン 前作のジョニーの演技を見て、見事にマッドハッターを演じていると感じました。単なる狂気でなく、どこかが壊れている、複数の人格がそこにいるような演じ方で、もろさや脆弱(ぜいじゃく)性を感じることができました。

 今作でも、もろさを感じさせるジョニーの演じ方がとても有効ではないかと思いました。なぜなら、マッドハッターはまさに心が壊れて危機的な状況にあり、それが物語のエンジンにもなっているからです。

 今回、ジョニーと「もともとマッドである人物が病むとどういう状況になるのか、それは正常になるのか?」といった話をしました。作品の最初に登場したとき、ハッターはいつもと違う状況になっていて、死にかかわる危機に面しているのですが、そんなハッターの感情的な面も含めてジョニーは信じられないほど見事に演じてくれました。

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ジョニー・デップ演じるマッドハッター

―― 「タイムトラベル」も重要なモチーフとなっていて、時間をつかさどる人物「タイム」も登場しますよね。彼はどうキャラクター化させていったんですか?

ボビン タイムは、演じたサシャ・バロン・コーエンと話して、力強い人物だが完璧ではない欠陥がある、自信過剰で自分を大きく見せたがるキャラクターにしようと決めていきました。いわば自信満々の愚か者(笑)。最初に登場するシーンを見れば、自分をとても偉大に見せようとしているけれど、別にすごい人ではないというのをすぐに感じ取ってもらえると思います。

 キャラクターと環境はお互いを定義することがあります。タイムはとても虚勢を張りながら、内面は少年のようなところがあり、大きな城に住む彼が安らぐ部屋は温かみのあるやさしい空間となっています。

 タイムというキャラクターを作り上げるとき、彼の「孤独」な要素も大切だと思いました。一緒に過ごす相手もいない、とにかく孤独な彼は、だからこそほかの登場人物に利用されてしまうんです。

―― 監督は日本のビデオゲームもお好きだと聞きました。自身の感性や生み出す作品に、そうしたものから影響を受けている部分はありますか?

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ボビン 興味深い質問だね(笑)。私がとても好きなゲームは、上田文人さんが手掛けた「ICO」と「ワンダと巨像」。これらはゲームでありながらも、どこか悲しい孤独で寂しくなる作品です。

―― ワンダと巨像! ワンダつながり! 作品を新たな視点で楽しめそうな気すらしてきました。ありがとうございます!


白の女王(アン・ハサウェイ) 、マッドハッター、アリス(ミア・ワシコウスカ)
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