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劇場アニメ「傷物語」の舞台あいさつに神谷浩史、櫻井孝宏ら アフレコは原作とのニュアンスの違いに悩み

音楽を担当した神前暁さん、プロデューサーの久保田光俊さんも登壇しました。

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 西尾維新さん原作による劇場版アニメ「傷物語」の第2部「熱血篇」の上映が8月19日に始まったことを受け、東京・新宿の「新宿バルト9」でキャストらによる舞台あいさつが行われました。

 舞台あいさつには主人公・阿良々木暦役の神谷浩史さんをはじめ、忍野メメ役の櫻井孝宏さん、音楽を担当した神前暁さん、同アニメのプロデューサーであり、アニメを制作したシャフトの代表取締役でもある久保田光俊さんが登壇。完成した映像を見ての感想や、制作の裏話などが語られました。


左から櫻井孝宏さん、神谷浩史さん、神前暁さん、久保田光俊さん

 傷物語は、物語シリーズの原点ともいえる作品で、阿良々木暦がいかにして吸血鬼になったのを描いたストーリー。今年の1月に公開された第1部「鉄血篇」はどちらかといえば会話を中心とした“静”の展開だったのに対し、熱血篇はバトルを中心とした“動”の物語。ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターといった吸血鬼ハンターたちとの圧巻の戦闘シーンが描かれます。

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 そんな吸血鬼たちとの戦いを強いられた暦を演じる神谷さんは、完成した映像を見て「声優をやっていてよかった」と思えたそう。鉄血篇と同じく、原作を片手に台本をチェックするスタイルでアフレコに挑んだ神谷さん。傷物語はテレビシリーズと違ってモノローグやナレーションが極力省かれており、その分ビジュアルで説明している部分が多いことから、その絵にどういった意味が込められているのかを原作から拾い上げ、それを正確に「音」にしていく作業が求められたといいます。

 特に羽川翼とのシーンは原作とニュアンスが大きく異なっており、原作の通りにアプローチすべきか、それとも絵の通りにアプローチすべきか悩んだそう。結果、「原作とアニメーションの間に立つ者」として、「なるべく、原作のニュアンスをとれるところはアニメーションに落とし込む」という方向になったとか。また、羽川と暦の距離が猛烈に近く、かなり青春しているとも。「その青春の部分で、原作のニュアンスをどの程度落とし込めるかというのが僕の中での戦いでしたね」(神谷)。


「人間強度下がりすぎですよね」と神谷さん

 そんな暦と吸血鬼たちの橋渡しをする自称「怪異の専門家」忍野メメを演じる櫻井さんは、「それぞれのキャラクターのスタンスとか考え方とかそういうものが、この熱血篇にはぜいたくにたっぷりと描かれていた」と感想を口に。メメに関しては、テレビシリーズとは違った、ミスをしたりしくじったりする姿が描かれ、「役者側からするとアプローチに悩むような感じで、方向性を決めなきゃいけない」という課題も生まれたといいます。

 また、暦に対して「コラ!」と怒るシーンでは、そのニュアンスに関してだいぶ悩んだそう。話し合いも行われ、最終的には「慈愛というか、優しく包み込むようにというか、そういうニュアンスでいいんじゃないか」との結論に至ったそうですが、「なんか(「コラ!」というせりふが)堀江由衣さん(羽川翼役)の声で聞こえる」という意見もあがったという裏話も披露し、会場が笑いに包まれる一幕もありました。


神谷さんに「コラ!」のニュアンスをほめられ、「ふうん、そ、その通りです」と若干噛みながら同意し、ここでも会場が沸いていました

 シリーズの音楽を担当している神前さんは、尾石達也監督とのエピソードを披露。尾石監督は、古きよきフランス映画みたいなおしゃれなテイストを入れたいと考えており、神前さんは鉄血篇からその考えに沿った曲を入れるようにしていったそう。監督はイメージを伝えるために10枚ほどのメモを渡したといいます。熱血篇ではEDにフランス人歌手のクレモンティーヌさんを起用しており、ここにも尾石監督のこだわりが見られます。

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「人前に立つことがあまりないため緊張しています」と神前さん

 傷物語は、もともと2012年に公開を予定されていた作品。久保田さんは、公開が遅れてしまったことを謝りつつ、待ってくれていたファンたちに対しての感謝。作品に関しては自信をのぞかせ、「いまできる一番のやれることを形にしたものだと思っている」「(お待たせしたことにも)耐えうる素晴らしい映像美になったのではないか」と語りました。

 また、公開が4年遅れたからこそできたこともあったと神谷さん。「『人間強度が下がるから』というせりふ一つとっても、あれは『終物語』で描かれていることなので、『この言葉の意味ってここにあったんだ』ということをあらためて知った上で音にできているというのは、僕にとってすごいプラスになっている」「もし2012年に公開していたら、自分の想像であの音を作らなきゃいけなかったのが、今回ちゃんとした形で音にできているというのは僕の中で非常に大きいし、その時々で一番いいものを作っていければいいと思っている」と、公開延期がすべてマイナスだったわけではないことを強調。

 「17歳の少年を演じる上で、その歳に近ければ近いほど感性が近いから、演じるにあたって都合がいいということは当然あると思うんです。……とはいえ、2012年にやったとしてもいい歳ですから僕も」と、持ち前のトークスキルで会場を沸かせつつ、「いまこうして、このタイミングで皆さんにお届けできたのはなにか意味があったんじゃないかと思っています」と、パーフェクトな回答を披露しました。


「本当によく完成したなと胸をなで下ろす思いです」と久保田さん

 傷物語の第3部「冷血篇」は2017年1月に公開予定。既にアフレコの日程も決まっているそうで、神谷さんは「傷物語は悲劇へつながる悲劇の物語です。いったいこの先にどんな悲劇が待ち構えているのか、ぜひその目でお確かめください」と作品をアピール。鉄血篇では劇場で5回も見たという神谷さん。「皆さんもぜひ4回、5回と足を運んでいただけたら幸いです」と呼びかけ、登壇者の誰よりも深く深くお辞儀をし、嵐のような拍手の中会場を後にしました。

 劇場版アニメ「傷物語〈II 熱血篇〉」は8月19日に全国117の劇場で上映を開始しています(PG-12指定)。

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「傷物語〈III冷血篇〉」のキービジュアル
(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

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