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「まとめブログ」の責任はどこまで追求されるべきなのか?

「転載しただけ」は無敵のヨロイ? 連載「ネットは1日25時間」。

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 先日、NHKの番組で紹介された貧困家庭の女子高生に対し、「やらせ/捏造だ」とする騒ぎがネットで発生し、この騒動に乗っかったメディア「ビジネスジャーナル」がNHKの報道を「捏造」と指摘するような記事を掲載。結局は捏造が事実かどうかも不明確な状態で無責任な内容の記事を発信し、さらに記事中に載せたNHKからの回答が架空のものであり、その記事自体が「捏造」だったことが判明して、後日謝罪する事態に発展しました。 

 この記事では件の女子高生の騒動そのものについてはことさらに言及しませんが、「ビジネスジャーナル」の行動も、それに同調するタイプのネットの反応も、さらに便乗してきた某議員の振る舞いも、極めて思慮が浅く愚かしいものだと考えています。

 ネットでのネガティブな反応がここまで沸き上がった背景には、「ビジネスジャーナル」のように企業が運営するメディアの暴走もさることながら、数々の「まとめブログ」が扇情的な記事を書き、騒動をあおったことも一助になったのだと思います。

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 前提としてここで表現している「まとめブログ」とは、2chやTwitterなどの反応をまとめるタイプの、表向きには企業による運営を挟んでいないブログのことを指しますが、弱者や少数派などに関わる社会性の強い話題を取り扱うとき、ほとんどのまとめブログは記事の方向性を「弱者たたき」や「少数派たたき」へと舵を切る傾向にあります。理由は簡単で、負の方向へ注力された記事のほうがまとめブログを愛読するタイプのネットユーザーの感情に響きやすく、共感を呼びやすいからです。

 今回の騒動に関しても私の確認したところ多くのまとめブログでは、対象の女子高生たたきはもちろんのこと、報道事態が捏造であることを前提にしたような偏向が多分になされています。

まとめブログに用意された都合のいい逃げ口上

 では、数々のまとめブログは「ビジネスジャーナル」のように謝罪や訂正をする必要があるのかというとこれを追求するには難しい部分も多く、この手の「まとめブログ責任論」に言及すると往々にしてまとめブログサイドから「運営の主張ではなく、ネット上の反応を転載したにすぎない」という言葉が返ってきます。

 当然、転載するにも編集段階である程度のバイアスがかかり、誰の手にかかっても一定の偏向はあるものですが、先述のように大幅に読者を扇動しやすい方向へ記事を練り上げておき、その影響を無視しながら「単に転載しただけ」というのも、都合のいい逃げ口上。単なる言ったもの勝ち感が否めません。

 また、企業が運営するメディアと個人が運営しているまとめブログとでは、記事に対する責任を取る必要性などが大きく異なっているという部分があります(もっともまとめブログがどれも個人運営によるものだ、というのも最近は曖昧になりつつありますが)。企業倫理を考える必要がないまとめブログは信用や信頼をいくら損なっても痛くもかゆくもなければ、それに伴う経済的損失も薄く、よほどの記事を出さない限り法的に罰せられる可能性も低いからです。

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 ですが、今となっては企業のメディアよりも下手に拡散力や影響力が強いまとめブログも出てきている以上、「個人の運営だから」「単なるネットの反応の転載だから」で責任逃れできることを、私たちはこのまま看過していいのか、真剣に考える頃合いになってきたのではないでしょうか。 

 「ネットの反応を転載しただけ」という行為が恐ろしいのは、その印象から「これが正しい反応なのだ」「認識として正解なのだ」という印象を受け手に与えやすいところです。そうなると「正しさ」を求めてまとめブログを読む層には「転載の結果が正しくなかった」「反応として危うい可能性がある」ということが想像しづらくなるので、転載の結果で起きたことに責任を追わせ罰を求める、という認識を抱かせることが極めて難しくなります。

 その一方で「まとめブログは正しさを求めて読むものではない」という認識も最近一部には定着してきています。これはある程度の諦めに結び付きやすく、ここで「読まない」という選択を取ることは情報に接する上での個人の判断としては非常に賢くありつつも、根本的な問題の解決には至らないため、われわれの意識だけではまとめブログに対し、責任を負わせることは困難であることが分かります。

 そうなると手っ取り早いのは法的な力の介入、ということになるのですが、これも「転載」という不鮮明な表現に対し、どの程度まで口を挟めるかという問題が生じます。法が整っていないという理由で見過ごしてはいけないものもあれば、行き過ぎた法の監視に繋がりかねないケースもあるからです。

「転載しただけ」は決して無敵ではない

 とある在日韓国人の女性ライターの方がネット上において某政治団体からヘイトスピーチを受けたことを理由に訴訟を起こし、勝訴しました。ネット上の表現においてもヘイトスピーチは暴力として成立するという事例ですが、こちらのライターの方は今回の案件と並行して、某保守系2chまとめブログで受けたヘイトまとめ記事に対しても法的措置を取っており、現在係争中となっています(参考)。

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 まとめブログの悪らつな内容が法的な処置を受けるのかどうか注目したいところですが、当然のことながら表現の自由にはそれに見合った責任が伴うもので、それは「単にネット上の反応をまとめただけ」という言い訳で逃れられるものにしてはなりません。「大衆の反応」「転載しただけ」というクッションがいかなる攻撃からも管理人を守ってくれる無敵のヨロイではないということを、どこかで確実な形で証明しておかなければ、今後もまとめブログはアクセスや広告収入を目的に、思うままに事実や他者の尊厳を踏みにじったりしても無傷なままなのです。

 「まとめブログ」に対しどこまでの責任を負わせるべきか、罰を与えるべきかは時代が進むにつれて変化していくネット上の表現やユーザーの意識、そして法とのすり合わせで形成されていくものですが、当然それは表現の自由を縛るものであってはなりません。

 当然盗用レベルの転載は著作権侵害でしかありませんが、「まとめる」という表現もまた守られなければならず、これを一概に悪とするのもまた別の悪です。まとめブログの発信するもの全てが一から十まで間違っているということももちろんないでしょう。その程度問題を誰が守り、誰が見張り、誰がどのように罰するのか、私たちは試されているのかもしれません。

星井七億

 85年生まれのブロガー。2012年にブログ「ナナオクプリーズ」を開設。おとぎ話などをパロディー化した芸能系のネタや風刺色の強いネタがさまざまなメディアで紹介されて話題となる。

 2015年に初の著書「もしも矢沢永吉が『桃太郎』を朗読したら」を刊行。ライターとしても活動中。

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