男児置き去り事件が浮かび上がらせた「イメージ探偵」たち 印象だけで誰かを犯人扱いしてしまわないために
私たちは印象論から脱却できるのか。連載「ネットは1日25時間」。
ベタな青春マンガなどを読んでいると、普段から問題行動の多い不良生徒がやってもいない悪事の罪を教師から疑われてキレるというシーンがちらほらと見受けられます。これを「因果応報だ」と見るのか、「事件は事件で個別に考えるべきだ」と見るのかは人それぞれであり、この不良生徒は後に学園のマドンナかイケメンあたりといい仲になったりするのですが、それはともかく「相手側の勝手な印象だけで犯人扱い」というのは見舞われた当事者からすれば筆舌に尽くしがたいいら立ちを覚えるものです。
平成以前の冤罪(えんざい)事件を掘り下げてみると何かしらの事件が発生した際に、生まれ育った地域や人種といった特定の出自や趣味嗜好、生活習慣だけを理由に容疑者扱いされ、そのまま有罪になっているケースが顕著に見受けられます。平成以降は偏見の払拭(ふっしょく)や人権配慮の観点、捜査技術の発達に伴い、公的な機関によるそういった乱雑な「犯人探し」はずいぶんと減りましたが、それでも印象論や根強い偏見の持つ身勝手な「有罪認定」は根強く残り続けています。
特にインターネットの普及によって個人の主張を大勢に向けて広めやすくなった昨今では、自分の持つ印象だけで善悪の判断や物事の是非、他人に対する評価を下せる機会が多くなり、どんな賢人でも一度はそういった行動に及ぶものかもしれません。
男児置き去り事件が浮かび上がらせた「イメージ探偵」たち
先頃、北海道で七歳の男児が父親による行き過ぎた「しつけ」の一環として林道に置き去りにされ、一週間近くにわたり消息不明となった事件は、男児が無事に発見されたことにより日本中が安堵(あんど)に包まれる結末を迎えたわけなのですが、この事件は外部に思わぬ形で波及し、ことネット上においてさらなる問題を浮かび上がらせました。
とある著名な教育評論家の方が、この件に関しブログで刑事事件性を疑うような記述をしたことで炎上してしまった、というものです。
この教育評論家が炎上してしまったという事実自体はともかく、さらに深刻かつ重要なのは、今回の件で教育評論家と同様に、事象の雰囲気や自分の中にあるイメージからあらぬ事件性をうたがって、それを声高に訴えたり、中には疑うどころか既に決めつけて大前提で話をする人たちが、男児発見までの間に非常に多く見受けられたことです。
もちろんそれは悪いことではあるのですが、誰かの目に付くところで「実はこうなんじゃないの?」「実際はこうに違いない」と言い放つまではいかなくとも、「もしかして……」と心に思うまでは、誰が歩んでも不思議ではない道なので、それを実際に表に出すと出さないとでは大きな違いがあるとはいえど、我が身を振り返ると一概に他人を責めきれないという人もいるのではないでしょうか。
こういった、データや事実に基づいた推理ではなく、自分の中にある単なる第一印象やイメージで刑事事件の存在をにおわせたり、罪なき人を犯罪者に仕立てあげ、裁こうとする「イメージ探偵」ともいえる人たちの存在は決して新しいものではなく、以前からあらゆる出来事において姿を見せてきました。
偏った知識や思想信条の違いなどからくる偏見によって他人を裁き、ある場合は壮大な陰謀論となり、ときとして大量の命すら奪うという行為は、差別的感情とも非常に相性が良く、世界中で幾度と無く繰り返され、形や規模を変えてもいまだに残り続けています。
日本のネットというミニマムな環境においても、ひどいケースでは「◯◯だから、あれをしたに違いない」にとどまらず、「あれをするようなやつは、絶対に◯◯しかいない」「××がああいうことをするわけがないので、きっと犯人は◯◯だろう」という偏った意見も見受けられ、これらはまとめブログや動画サイトなどで極端な思想の普及が昔よりも簡単になった今日では何かしらの目立つ事件が起きるたびに囁かれています。
もしもエルキュール・ポアロが相手の出自だけを理由に殺人犯を決めつけたら、脳細胞どころか事件までもが灰色になってしまいます。
「イメージ探偵」にならない方法はあるのか
「印象で決めつける」というのはあらゆる場面において知性やセンスからかけはなれた行動ではあるのですが、市井に生きる一般大衆のレベルになると得られる情報に限界があり、一定の規模になるとどうしても印象論に頼らざるを得ない部分があるというのも現状です。そうなると、自分の意見が表明しやすいネット上において「イメージ探偵」の存在が目立つようになるのも致し方ないことなのかもしれません。
自分が向かい合うあらゆる事象に対し、十分なデータと考察で語るというのは個人の力ではほぼ不可能に近いので、そうなると「印象で物事を決めつける頻度を減らす」という点に目を向ける必要が出てきます。そこには論理的思考力がどうだとか、自制心がこうだといった要素が絡んでくるので、いよいよハードルが高くなります。もっとも手っ取り早い方法として、あらゆる話題に向い合っても「空きれい」とか無関係のことしか言わないか、貝になって黙っているという手もあるので、どちらを選ぶかは自分次第です。
先述のように、われわれのような一般大衆では得られる情報に時間や深度といった制約があり、どうしても限界があります。限定された情報からは限定された考え方しか導き出されません。それらを一つとして、例えば本などから、質の高いジャーナリズムに極力触れるようにするという方法があります。
高品質のジャーナリズムに触れることのメリットは、そこに書かれている深度のある情報を得られることよりも、わずかな情報というものからどのように考えを編み上げ掘り下げていき、新たな情報へとたどり着くかという「技術」を学ぶことができるという面です。情報の適切な継ぎ接ぎを繰り返す、という行為には印象で物を語る余地を与えさせない効果があるのです。
当然、どのようなものが高品質と呼べるのか、という部分には大きな個人差があります。特に思想の違いというものは大きく、どれだけ知見と熟慮に満ちたジャーナリズムであっても、自分の思想と根本的に異なっていたら、それだけで「これは偏見と妄想に満ちたやつだ」と思いがちになってしまいます。人によっては、自分にとって面白いとさえ感じられれば、まとめブログですら高品質のジャーナリズムだと錯覚する場合もあります。
「イメージ探偵」からの脱却はすこぶる難しいものですが、今回の男児置き去り事件から私たちは多くのことを学ぶ必要があります。それは恐らく、一介の教育評論家ではとても教えられないことなのでしょう。反面教師にはなったとしても……。
星井七億
85年生まれのブロガー。2012年にブログ「ナナオクプリーズ」を開設。おとぎ話などをパロディー化した芸能系のネタや風刺色の強いネタがさまざまなメディアで紹介されて話題となる。
2015年に初の著書「もしも矢沢永吉が『桃太郎』を朗読したら」を刊行。ライターとしても活動中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
余った毛糸は捨てないで! 四角く編んでいくと……目からウロコのアイデアに「知れてよかった」「素晴らしい」
ニットで口元が隠れた赤ちゃん、そっと脱がせてみると…… “想像を超える”表情が2300万再生「心に刺さった」「今まで見た中で1番!」【海外】
ダイソーからついに出た便利グッズ「何のために使うの?」→実は…… 「これは欲しい!」有名メーカーを上回る実力が話題沸騰
「イオンにヤバいブツが売ってた」 店頭で思わず購入した“97%引き”の商品に大興奮 「完全勝利」
“不倫報道”の声優、約10ケ月ぶりの姿に「別人かと……」「かなり痩せましたね」と驚きや心配の声
妻「電気代2万ごえ」→単身赴任中の夫にLINEで報告したら…… “予想外”の返信に反響「ウルウルです」「最高of最高」
芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に
和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
長期滞在していた客が帰った部屋に入ったら…… オーナーが涙した“まさかの光景”が200万表示「うわ~!」「懐かしい」
「才能が止まらないwww」 予想ナナメ上すぎる妻の“塗り絵”が笑撃「天才すぎて吹いた」「そう来たか」
- 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
- コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
- 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
- 雑草ボーボーの荒れ地に“牛3頭”を放牧→2週間後…… まさかの光景に「感動しました」「いい仕事してますねぇ~!!」
- “この子はきっと中型犬サイズ”と思っていたら……たった半年後とんでもない姿に 「笑わせてもらいました」
- 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
- 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
- サイゼリヤ、メニュー改定で“大人気商品”消える 「ショック」悲しみの声……“代わりの商品”は評価割れる
- ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
- 「さすがに無神経な内容」 “暴言受けた”伊藤友里が降板発表→岡田紗佳の直後の投稿に批判の声 Mリーガーも反応
- ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
- 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
- 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議