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やはり猫侍は実在した? 戦国時代の“ミミズク兜”、「実は猫耳がモチーフ」と美術作家が新説提唱(1/2 ページ)

新説が認められれば歴史的な大発見になるかもしれません。

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 一般に「ミミズクをかたどった」といわれている松平信一のよろい兜(かぶと)について、「猫をモチーフした兜ではないか」という新説を唱えている美術作家がいます。野口哲哉さんご本人に詳しいお話を伺いました。

松平信一着用具足(上田市立博物館蔵・画像提供:上田市立博物館)

 野口さんは、以前「ねとらぼ」でも取り上げた現代アート「着甲武人猫散歩逍遥図」の作者。猫耳の兜をかぶった武士が猫を散歩させているという、実在したとは考えにくい武士の姿をいかにも存在したかのように描いて話題となりました。学生時代には博物館で甲冑の欠損した部品を補作したり、よろい兜の解説文章を書いていたほか、現在はよろい兜や武士をモチーフにした作品を多数発表する注目の美術作家です。

 そんな野口さんが唱える新説とはどのようなものなのでしょうか。

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野口さんの作品「着甲武人猫散歩逍遥図」

 野口哲哉さんに聞く「ミミズクの兜、やっぱり猫の兜なんじゃないか」説

 今回注目するのは旧上田藩主・松平信一(まつだいらのぶかず)が着用したという「松平信一着用具足」の甲冑です。大きく目を引くのは猫耳がついたような兜で、一般的には「ミミズクをかたどった」とされています。

美術作家・野口哲哉さん

――野口さんが唱えられている説について、概要を説明してください

野口松平信一の兜はミミズクではなく、「猫をモチーフにしたものだ」と個人的には考えています。

――松平のよろい兜を知ったきっかけを教えてください

野口幼少期からよろいや兜に興味があり、松平の甲冑は有名なものなので知っていました。初めて見たときは「(モチーフは)猫なんだろうな」と思いました。

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――最初に見たときに「猫だ」と感じられていたのですね

野口はい。しかし専門書などには「ミミズクをかたどった」と書かれていましたので、偉い人たちが言っているのならきっとそうなのだろうと考えを放棄していました(笑)。しかし、それから月日がたち、物作りを専門にするようになってから、ミミズクがモチーフとする説に違和感を覚えるようになりました。

――その後はどのような行動に出られたのでしょうか

野口展覧会で松平の甲冑を見られる機会があったので、実際に見てみました。そこでやはり、この兜は猫をモチーフにしたものだと確信しました。

松平信一着用具足の背面(上田市立博物館蔵・画像提供:上田市立博物館)

――具体的にはどうしてそう思われたのでしょうか

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野口耳の造形ですね。背後から見ると一目瞭然ですが、明らかに猫の耳の形状をしています。猫の耳は集音機能に特化するために「パラボラのようなお椀型」をしているといわれています。一方ミミズクの羽角(耳状の羽)は飛行時に風の抵抗を受け流すため、横へ「寝そべるような形」をしているから、「お椀型」にはならないはずです。それに、猫とミミズク、この動物を正面から観察すると、猫はアルファベットの「M字」に、ミミズクは「V字」に近い印象を受けます。そして松平の兜の印象はやはり「M」に近い。造形上の多くの特徴が「猫」なんです。また、そもそもあの兜が制作当時に何と呼ばれていたかは不明で、実は「ミミズクである」という確かな証拠も無いのです。

猫の耳とミミズクの羽角の違い(作・解説:野口哲哉)

――なるほど。ではなぜ「ミミズクをモチーフにした」という説が有力視されてきたのでしょうか

野口それはミミズクをモチーフにした武具が、いくつか残っていることが関係しているのかもしれません。例えば個人が所蔵しているほかの兜では、平たく寝そべるような耳がついた“ミミズクの兜”も存在しますし、ミミズクの意匠が施された刀の飾りも残っているなど、武具とミミズクは割とメジャーな関係にあります。

兜の特徴(作・解説:野口哲哉)

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