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» 2016年12月04日 11時30分 UPDATE

リアル猫侍とネット騒然の「よろいを着た猫を散歩させる猫耳の武士」、実は現代アートだった なぜ生まれたのか作者に聞いた

有名ブランドとのコラボ作品も発表している現代アーティストのアクリル画!

[Kikka,ねとらぼ]

 猫耳の兜を身にまとった武士が、リードを付けたよろい姿の猫を散歩させている――。そんな絵画作品がネット上で度々話題になっています。この作品は誰がいつ制作したものなのか、今回は作者本人を取材しました。


野口哲哉 話題の作品「着甲武人猫散歩逍遥図」

 「この時代から猫耳があるという衝撃」とネットをざわつかせているのは、「着甲武人猫散歩逍遥図」と呼ばれる絵。ひげを蓄えた武将らしき人物が、ピョーンと奔放に走る猫を散歩させる様子が描かれており、歴史的絵画と勘違いする人も現れるほど精巧に描かれています。

現代アーティスト・野口哲哉さんが語る「猫と侍」とは

 話題の作品を作り上げたのは野口哲哉さん。野口さんはよろい兜や武士を題材に、一見楽しい、でもどこか悲しい不思議な世界観を再現する現代アーティストです。その評価は高く、「南蛮渡来の紋様を家紋とした紗練家(しゃねるけ)の武者像」など、有名ブランドとのコラボレーションでも知られています。今回は野口さんご本人に作品についてのお話を伺いました。


野口哲哉 野口哲哉×Audiとのコラボ作品

――「着甲武人猫散歩逍遥図」が話題となっていますが、なぜこのような作品が生まれたのでしょうか

野口:なんだか紛らわしい作品でスミマセン(笑)。この作品は、古い記録を読んでいる時に猫好きと思われる戦国武将が幾人かいたらしい、と気が付いた事がキッカケになっています。現代の僕達が猫を好きなように、どの時代でもどの国でも、猫好きはいたはずです。何かが間違えば、彼らの文明の中で「猫のよろい」や「猫をかたどった甲冑」は発生し得る、というシミュレートが制作の根幹になっています。


野口哲哉 2008年の作品「猫鎧」

――なぜ題材に「猫」を選ばれたのでしょうか

野口:日本の古い絵巻や肖像画の中には、時々猫が描かれています。興味深いのは古典絵画の猫の多くが「首輪にリード」をしていることで、逆に犬は外で放し飼い。文明の中でのルールが今とは逆ですね。猫は一度、縄張りが固定されるとストレスが緩和するので、当時は物騒な外よりも室内でヒモをつないで大切に飼っていたのでしょうね。ルールは逆でも、猫が好きな事は変わっていない。ここを理解する事が面白いと思います。

――なぜ猫耳の武士なのでしょうか

野口:「猫耳」は現代人の感性に思えますが、数千年前から猫と人が一緒に暮してきた以上、条件さえ整えば過去にも発生していた可能性があります。実際に猫耳みたいな兜もあります。一般には「ミミズクの兜」と呼ばれているものですが、多分あれは猫を象っているはずです。理由を詳しく話したいですが、長くなりそうなのでまたの機会ですね(笑)。


野口哲哉 2010年の作品「Talking Head」(作品部分・甲冑部のみ)

――「着甲武人猫散歩逍遥図」はどういった画材で作られているのでしょうか

野口:画用紙にアクリル絵具です。自分の作品は樹脂やアクリル絵具など、全てありふれた物で制作しています。

――つまり今回の作品もアクリル画だったのですね! 野口さんの作品はネット上でも度々話題になっています

野口:あまり頻繁にネットに触れない僕にとっては実感が薄いのですが、作品はともかく、みんな猫が本当に好きだということではないでしょうか。きっと何百年前も僕たちに負けないくらいの猫好きが居たでしょうし、何百年後の未来にも同じように猫好きがたくさんいるのでしょうね。


野口哲哉 2013年の作品「Shoulder bag and Sneaker and SAMURAI」

――野口さんといえば、「ありそうでなかった」というテーマが多いですよね

野口:「ありがとうございます。 でも実際は「ありそうでなかった」物よりも「なさそうだけど、ホントは有った」物をモチーフにした作品が大半です。「猫のよろい」はありませんが、「馬のよろい」や「象のよろい」は実在します。その他にも、猫の耳の兜、兎の耳の兜、数メートルもあるような旗指物など、人間は生きてゆく中でウソみたいな姿になってゆくことがあります。文明が生み出したイレギュラーな姿はとても恐ろしいですが、同時にすごく神秘的であるとも感じます。

――作品を作るうえで大切にしている考えはありますか

野口:「過去や未来にも猫好きはいる」の話と同じで、変わる社会のルールの中で、それでも人間は“変わらない部分”があります。その部分をしっかり見つめていれば過去や未来のシミュレートが正確にできると考えています。人間にとって“楽しいこと”は大切ですが、悲しいことも、怒ることも、同じように大切です。相反する感情が調和するから、世界は面白いんだと思います。


野口哲哉 2013年の作品「Traveler 旅する侍」

――最後に野口さんの目指す作品とはなんでしょうか

野口:よく誤解されるのですが、僕はサムライのフィクションや精巧なトリックが作りたい訳ではありません。表面的にはフィクションに見えても、文明や人間の可能性をリアルな視点から見つめてみたいのです。どの時代であっても人間に対する興味や信頼は、リアリズム芸術になり得ると信じています。


 野口さんのユニークな作品は著書「野口哲哉ノ作品集 『侍達ノ居ル処。』」にまとめられています。「煙草を吸っている侍」など現実にはありえないと分かっていても、すんなりと受け入れてしまう心地よさが随所にちりばめられた作品が多数掲載されています

 また12月15日から12月24日まで、ギャラリー玉英(南青山)で開催される野口哲哉展「ANTIQUE HUMAN」では野口さんの作品を生で見ることができるほか、2017年1月9日まで静岡県立美術館で開催中の「再発見!ニッポンの立体」にも野口さんは参加しています。


野口哲哉 2010年の作品「Sleeping head」

 現代アーティストが、実際に過去に行って見てきたようなリアリティーは野口さんの、甲冑やよろい、歴史に関する知識に裏打ちされたもの。これからもどんな作品が創作されるのか楽しみです!

野口哲哉展「ANTIQUE HUMAN」

12月15日から12月24日まで開催

場所:ギャラリー玉英(東京都港区南青山6-8-3)

入場:無料

時間:10時30分から18時30分まで

日曜・祝日は休み

問い合わせ:03-6410-4478

(Kikka)

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