BPO、「NHKスペシャル」のSTAP細胞報道に勧告 小保方さんへの名誉毀損があった
放送の内容に対し「真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる」と決定を発表した。
BPO(放送倫理・番組向上委員会)は、2015年8月18日より審理入りとなっていたNHKのSTAP細胞報道(関連記事)について、委員会決定を公表。「勧告」として小保方晴子さんに対する名誉毀損の人権侵害が認められると判断したことを発表した。
対象となっている番組は2014年7月27日に「NHKスペシャル」で放送した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。小保方さんは、同番組の内容に対し「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と申し立てていた。
BPOは上記の件について、同番組は「申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている」と指摘。真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められるとした。またその原因については「場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があった」としている。
さらに番組が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材についてBPOは、「取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった」とし、これらの問題点の背景には「科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか」と指摘。NHKに対し、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告した。
なお、その他の小保方さんと笹井芳樹さん(理研の発生・再生科学総合研究センターグループディレクター)間の電子メールの内容を無断で公開したことや、番組内での2人の扱いの違い、未公表の実験ノートの公表などについては、いずれもプライバシーの侵害や人権侵害、または放送倫理上の問題があったとまでは言えないとしている。
(宮原れい)
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