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遠藤憲一、スナックのママになる 「バイプレイヤーズ」第9話、あのカレーパンの意味はねとらぼレビュー

ドッペルゲンガーな村民大集合。

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 テレビ東京のドラマ24「バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」。第9話は「バイプレイヤーと監督」。舞台は、村民のほとんどが芸能人の誰かにそっくりだという、栗卒村(くりそつむら)。

エンケンさん……???

 遠藤憲一さんのそっくりさんは、スナック「はっぴ~えんどう」のママやってました。こういうママいるよね。カラオケでデュエットもします。田口トモロヲさんのそっくりさんは、院長さん。

 他にも川島海荷さん、ダンディ坂野さん、村上淳さん、安田顕さんのそっくりさんが村に登場(演じているのは本人です)。ダンディ坂野似の警官の登場・退場のインパクトはお見事。安田顕さんは「俳優 亀岡拓次」という、まさにテーマが「脇役」の映画で主役を演じています。

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今までのおさらい

 遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さんが、本人が本人を演じる形式のドラマ。10年前の自主制作映画「バイプレイヤーズ」の失われたフィルムを見つけて、どうしてもラストシーンを撮りたかった大杉さん。一旦解散はしたものの、彼の真摯な思いに、6人は再びシェアハウス生活を再開しました。

 そこで浮かんできたのが、「バイプレイヤーズ」撮影の際、監督を務めていた鬼屋敷演之助。彼は現場をギスギスさせ、映画を空中分解させてしまった挙句、音信不通になってしまった。

鬼屋敷監督の話になると、微妙な空気になる面々。ジャスミン、映画の話がポシャっても早朝からシェアハウスに通ってます。いい子だ……

 10年たっても、受け入れづらい苦い思い出。でも大杉さんは、鬼屋敷監督が撮るべきだと言い続ける。

そして監督は帰ってこなかった

 結論から言うと、鬼屋敷監督は栗卒村に引きこもったまま、帰ってきませんでした。

 最初、村に遠藤さんと田口さんが探しに来た時。鬼屋敷は、気まずい顔で食品サンプルづくりをしていました。岩松了さん似の彼、栗卒村にすっかり馴染んでいます。

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満面の笑顔と、ちょっとしたジョークで場を和ませようとする田口さん・遠藤さん。右側にいるのは安田顕さんに似た村人

 田口さんと遠藤さんは、とりたてて鬼屋敷に監督してもらいたいわけじゃない。大杉さんに言われたから仕方なく。笑顔で対応しよう、戻ってきてもらおうとしたところで、鬼屋敷は言います。

鬼屋敷「映画は、日本でちまちまちまちま。興行収入なんて、大人用紙おむつの市場規模と殆ど変わらないって話じゃありませんか。しかも、百歩譲って主役ならまだしも。バイプレイヤーって」

映画を、俳優業を、バイプレイヤーを、バカにしまくる鬼屋敷。そりゃ遠藤さんや田口さんも、キレる

 いくらなんでも言いすぎ。あと大人用紙おむつに失礼。ただあまりにも煽り方がおおげさすぎて、意図的に嫌われようとしているように見えます。

もうひとつのバイプレイヤーズ

 鬼屋敷は、そっくりさんの村人を集めて、自分が壊してしまった映画「バイプレイヤーズ」のニセモノを遊びで撮っていました。もちろん素人だらけだから、演技はへたくそ、セリフは棒読み。

鬼屋敷が個人的に撮っていた、そっくりさんの村人を集めた映画「バイプレイヤーズ」。遠藤さん似のママ、煙でむせます
ヒロインは、川島海荷さん似の娘さん。頑張っているけどうまく演じきれていない(のを川島さんが熱演しています)

 でもこれが、すごい楽しそうなんだよ! 「つまんない芝居をするやつはノーサンキューです」なんて言ってた人の撮るものじゃない。

鬼屋敷「やりません。やれるわけないじゃないですか一緒になんか。私が終わらせてしまったんですよ。私にチャンスをくれた、大好きなみなさんの期待に応えようとして。それが空回りして」

 この村は、そっくりさんだらけ。作っているものは食品サンプル。大正期から日本が世界に誇るすごい文化です。でも食べることはできません。

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 村の人たちで撮った映画も、撮りたかった作品「バイプレイヤーズ」のフェイク。

 かつて鬼屋敷は助監督として大いに認められていたらしい。気遣いが完璧で誰からも愛される助監督であったゆえに、監督になれなかった。映画が好きで好きでしかたないのに、現場でメガホンを握れなかった。

 いざ監督になった時。彼は背伸びしすぎて空回りし、「監督様」というフェイクだったことに気づいてしまった。

 今回、鬼屋敷の中で唯一本物だったのは、懐から取り出したカレーパン

懐から取り出したカレーパン、なぜかサンプルじゃない

 鬼屋敷が田口さんに渡したカレーパン、サンプルかと思いきや、本物でした。なんで袋に入ってないんだ。

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 フェイクにやりがいと居場所を見出した彼の中にも、オリジナルはあった、という意味のカレーパンだったら、ちょっと切ない。

監督の存在意義

 5話の、学園モノMV撮影の時に出てきた監督。横暴で、適当で、指示が曖昧。見捨てる人続出な監督でした。しかしバイプレイヤーズは、彼の指示に完璧に従いました。プロだからです。

 どんな現場でも、必要とされたら、作品の支えとして全力をつくすだけ、と松重さんは言っていました。

 今回鬼屋敷が現場に戻ってきたら、メンバーは文句は冗談混じりで言うかもしれないけど、きっちりやり遂げるはず。むしろ大杉さんは彼の欠点も見抜いて、チャンスを与えたいと考えている節すらある。彼が自分のやり方を見いだせたなら、理想の監督になったかもしれない。……と考えてなかったらここまで執着はしない。

 5話の監督はうまくMVを撮り、鬼屋敷は監督業には戻ってこなかった。

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 明るいコメディながらも、現場のブルースをチラ見せするのが「バイプレイヤーズ」の魅力です。

「山田孝之のカンヌ映画祭」との異様なシンクロ率

 「バイプレイヤーズ」の後、テレビ東京では「山田孝之のカンヌ映画祭」というドキュメンタリードラマが放映されています。「バイプレイヤーズ」が「現実の俳優を模したフィクション」だとしたら、「カンヌ映画祭」は「ドキュメンタリー風に俳優を撮影する、本物かウソかわからない映像」です。

河原でゲッツ。村上淳さん似のおちゃらけた警官……あれ?

 「バイプレイヤーズ」9話。村にいる警官は村上淳さん。鬼屋敷の映画では死体役を演じます。少女が森の中、女性と男2人を殺す映画です。田口さんは鬼屋敷の家の前で、ゴムで首吊りごっこをして遊んでいます。

 「山田孝之のカンヌ映画祭」8話から9話。村上淳さんは山田孝之の撮る映画の俳優として参加。森のなかで首吊り自殺をした父親役でした。そのため危険な首吊りの特訓をします。撮っている映画は、芦田愛菜さんが、母親と愛人男性を殺すという内容。キャスティング会議で、「木」の役として松重豊、大杉漣、田口トモロヲの名前があがります。

 「バイプレイヤーズ」1話では、「七人の侍」主役の役所広司さんが登場していました。「カンヌ映画祭」2話では役所広司さんが主演の映画「うなぎ」がパルム・ドールを取った時のトロフィーを見学しています。

 かたや「プロによる趣味とこだわりの自主制作映画」。かたや「カンヌ映画祭でトップを目指すための作り方の探求」。「映画を撮る」姿勢が真逆な作品。見比べるのをオススメします。

(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会

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