通販会社になぜ“猫部”? 「フェリシモ猫部」の秘密を聞いてきた
猫アイテムを多数扱う通販会社フェリシモの「猫部」。誕生の経緯や製品開発の裏側、猫の保護に関する支援活動について聞きました。
猫好きにとってたまらないアイテムを豊富に販売している通販サイト「フェリシモ猫部」。もともとは衣類や雑貨などを扱っている通販の会社でしたが、2010年に猫アイテムを扱う「フェリシモ猫部」が発足。その誕生に関する裏話を聞いてきました。
お話をうかがったのは、猫部長の松本竜平さん。部屋に入った途端、目に飛び込んできたのはかわいい商品の数々。思わず「かわいい!」と声を上げて見入ってしまいました。
―― 「猫部」はどのような経緯でできたのでしょうか?
松本竜平さん(以下、松本) 今から7年前、毎週水曜日の午前中は組織から一度離れて自分たちの好きなことをやる部活動をしてもいいという制度が生まれたんです。そこで、好きなものから緩やかに事業につながればいいねと。おてらとか女子DIY部など、いろんな部活ができました。そして、僕が発起人となり猫好き6人が集まって「猫部」が誕生しました。
―― 猫部がオープンした際は、ユーザーさんからはどんな反応が寄せられましたか?
松本 猫好きの方からは「待ってました!」という声をいただきました。また、「よく猫のことを分かっていますね」とも言われました。最近、猫ブームで猫モチーフのものが増えていますが、「猫の柄を載せておけば売れるだろう」という商品と、本当に猫が好きでやっている商品は分かってしまうんだなと思いました。だから、企画会議のときは、「ただ猫柄を載せるだけじゃダメだよ」と言っています。フェリシモ猫部では大事にしていることが3つあります。1つ目は猫愛があること。2つ目は「猫格」を大事にしようというもの。3つ目は新しいものを作ろうということです。
―― 猫格……? と言いますと?
松本 人間の「性格」と同じように、猫も「猫格」があります。例えば、「このコはもふもふしているね」とか、「ツンデレだね」とか、そういう猫によって異なる特徴ですね。
―― なんともユニークな造語! さまざまな商品がありますが、どういうときにアイデアを思いつくのでしょうか? 部員みんなでアイデア出しをするんですか?
松本 そうですね。常に猫のことを考えているので、猫の画像をネットで見たり、猫を飼っていない部員は猫カフェに行ったりなどして、イマジネーションを膨らませています。
―― 猫ちゃんが使うアイテムを開発する際はモニターの猫ちゃんが必要になると思うのですが、モニターは部員の飼っている猫ちゃんですか?
松本 部員の猫もモニターになりますし、猫カフェさんに行ってモニターになってもらうこともあります。また、猫部はユーザーさまとも距離が近いので、親しくしている方にサンプルをお送りすることもあります。2月22日に出た猫部のムック本(関連記事)にモデルとして出演している猫ちゃんの中にも、ユーザーさまの猫ちゃんがいますよ。投稿企画の際に、かわいいと部の中で話題になった猫ちゃんにモデルをお願いしました。
―― ユーザーさんの猫ちゃんがモデルデビューとは、飼い主さんは自分のことのようにうれしいでしょうね。
松本 実は猫ふせんという商品もユーザーさまから送っていただいた猫ちゃんの写真です。3700枚以上の猫ちゃんの写真が送られてきたなかから13枚を選んで商品にしました。
―― 3700枚も!? どういう基準で猫ちゃんを選んだんですか?
松本 全部1枚1枚見て、担当の思っていたイメージに合うような表情やポーズだったりする、かわいいコを選びました。
―― ユーザー参加型なのですね。ユーザーさんの意見を参考に商品を作ることもあるんですか?
松本 「猫の肉球の香りのするハンドクリーム」(関連記事)開発の際は、SNSで「みにゃさまの愛猫の肉球はどんな匂いがしますか?」と聞きました。一番多かった答えがポップコーンの香りで、それを元に調香会社の社長さんに保護猫カフェに来てかいでいただき、開発しました。もともとはピンク色だけだったのですが、「うちのコの肉球はピンクじゃない」というお声をいただきオレンジやあずき、グレーを作りました。
―― このクリーム、つけてみてもいいですか?(ぬりぬり) あっ! 甘くて良い香りです。確かにうちの猫の肉球もこんな感じの匂いかも……。
松本 少し甘めの香りにしているんですが、時間が経つと甘さが飛んで、より猫の肉球の香りに近くなります。
―― 今までで一番ヒットした商品はどれですか?
松本:にゃんそうこう(猫のひっかき傷をかわいく隠すばんそうこう)ですね。漫画家の山野りんりんさんにアイデアやイラストを提供していただいたばんそうこうです。以前、ねとらぼさんでも取り上げていただいた(関連記事)おかげで、その日のYahoo!の急上昇ワード1位になり、テレビでも紹介されました。また、手帳シールも売れています。これも山野りんりんさんのイラストで、スケジュール帳をかわいく飾ることができます。
―― 猫部さんは「わんにゃん支援活動」という犬や猫の殺処分を減らすための活動もしていますよね。これはどういったものなのでしょうか。
松本 猫部には支援活動のための基金が2種類あります。1つが「フェリシモの猫基金」。対象の商品を購入すると、その一部が基金として運用されます。猫部を作ったのは、ビジネスを通して猫の殺処分を減らしていきたいという思いがあったんです。
もう1つが「フェリシモわんにゃん基金」。これは毎月100円、お買い物のついでに寄付できるものです。東日本大震災があった後に、原発の近くで取り残されて死んでしまった猫がいたと聞いたとき、もっと日本の動物愛護団体に力があったら助かる命もあったんではないかなと思い、始めた基金です。
フェリシモは、事業性、社会性、独創性の3つの輪が重なる事業をしましょうという企業理念を掲げています。昔から、「フェリシモの森基金」という、毎月100円を植林活動のために寄付できるものがあったので、お客様から「動物を助ける基金もあれば」とご意見をいただいたのも、わんにゃん基金を始めたきっかけの1つです。
また、お買い物をしてもポイントがたまるので、それも寄付できます。2月1日には、「フェリシモ猫部VISAカード」も発行されました。このカードを使うと、対象商品でなくても全ての利用につき0.12%がわんにゃん基金に寄付されます。例えば、光熱費の支払いなんかでも寄付できるんです。フェリシモ猫部VISAカードのユーザーさまがお買い物で利用いただいた金額の0.12%が三井住友から自動的に寄付される仕組みになっており、ユーザーさまは金額の上乗せをしなくても寄付ができます。
―― これらの基金は具体的にどのようなことに使われるのですか?
松本 支援先は国内の約60の愛護団体さんです。すごく大きなシェルターを持っている団体さんもいれば、お母さんが身銭を切って保護活動をしているような小さなところもあります。用途は、飼い主がいない動物の保護と里親探しの活動、保護動物のフード代と医療費、野良猫のTNR(去勢・避妊手術をして地域猫として再び放す)、災害時の動物救助です。
―― 動物愛護活動をされている方はいろんな考えの方がいます。気をつけていることはありますか?
松本 お客様からいただいた大事な基金ですので、先ほどお伝えした目的で使われているかどうかきちんと審査をしています。また、細かい考え方の違いはあるかと思いますが、保護活動が全体として盛り上がっていけばと思っています。
猫部というと、少し変な商品を作っているイメージがあるかもしれませんが、殺処分を少しでも減らしたい、飼い主のいない猫の里親を捜したいという目的があります。猫ブームにより、飽きたら捨てるということにはなってほしくないし、飼いやすいから飼うという声もたまに聞きますが、別に飼いやすいわけではありません。一生、猫の下僕としてお仕えする覚悟がないと飼ってはいけないと思います。
実は、会社(神戸)の商談スペースで猫の譲渡会もやっています。土日は会社の商談スペースが空くので、神戸猫ネットさんというNPOの方と譲渡会の会場として使っています。神戸市の須磨区に物流センターがあるので、そこのホールと交互で行っています。こちらの活動は基金などは使わず、完全にボランティアでやっていますね。現在24回行われ、既に284匹の猫の里親さんが見つかりました。
猫の殺処分を減らしたいという熱い思いが、かわいくて新しい商品を開発する原動力になっていることが分かりました。実は、筆者も猫部のアイテムを愛用中。今後は部員たちの猫愛をひしと受け止めて使用すると、ユーザー側もさらに猫愛が深まりそうです。
(姫野ケイ)
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