ユナイテッド航空で話題の「オーバーブッキング」、日本で起こった場合は? JALとANAに対応を聞く
米ユナイテッド航空で起こった過剰予約による乗客の強制連行事件。日本の場合どうなるのでしょうか。
過剰予約(オーバーブッキング)が原因とみられる、米ユナイテッド航空で乗客が強制的に降ろされた一件――機内の一部始終を捉えた動画がSNSへ投稿されたこともあり、ネットでは同社の対応に大きな非難が集まっています(関連記事)。ではもし日本の航空会社でも同じような状況が発生した場合、各社はどのような対応を取っているのでしょうか。日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)に取材しました。
オーバーブッキングとは
オーバーブッキングとは、実際の席数よりも多くの予約を受け付けること。座席が調整できない場合、航空会社では一般的に乗客に協力金額や代替の交通手段を提示し、それに同意した乗客に自主的に降りてもらうことで対応しています。
4月10日、ユナイテッド航空3411便では移動が必要な4人の自社乗務員の座席を確保できておらず、予約が座席数より4人分多いオーバーブッキングの状況を招いてしまいます。同社は800ドルとホテルへの宿泊を条件に降機への協力を募りましたが、誰も応じなかったためコンピュータで4人をランダムに選出。うち1人の69歳男性が降りるのを拒否したところ、警察によって強制連行されてしまいました。SNSの動画には男性が機内の床を引きずられたり顔から出血する姿が映っています。
米運輸省が米メディアに出したコメントによると、「航空会社は協力者がいない場合、予約過剰となっている便で搭乗拒否することが法的に認められています。その一方で、航空会社には公平な搭乗順を決める責任があります」とのこと。
つまり米国においては、ユナイテッド航空のとった“強制的に降機させる”対応そのものは合法でした。しかしその手段として無理やり引きずり下ろす実力行使に出たこと、不手際で従業員の席が足りなかったのに乗客を降ろそうとすることに、ネットでは批判や疑問の声が沸き上がっています。
日本の航空会社の場合
日本の航空会社では、座席数が足りない状況で乗客が降機に協力してくれない場合どういう対応をとるのでしょうか。
JAL、ANAをはじめ国内航空会社は、共通の「フレックストラベラー制度」を掲げてオーバーブッキング時の対応を一律にそろえています。協力金(現在は当日1万円、翌日以降2万円)と代替の交通手段を乗客に提示し、自主的な協力を募るというものです。しかし協力者が発生しなかった場合の対応は、各社公式サイトには明記していません。
JAL広報部は「同じ航路の数時間後の便や地上の交通手段を手配しており、基本的にはこちらの提案に手を挙げてくださる方が多いです」とした上で、協力者が出てこない場合は「ケースバイケースで対応することになってくると思います。お客様と弊社との関係になってくるので、具体的にどのような対応をとってきたかは控えさせていただきます」と回答しました。
ANA広報部は、「少なくともユナイテッド航空のように、抽選で降機する人を選んだり、強制的に降ろさせたりするような対応はしません。フレックストラベラー制度の範囲内でケースバイケースで対応を変えながら、最後まで乗客のみなさんに納得いただくまで、粘り強く協力をお願いしております」と答えました。
確認しておきたいのは、日本の航空会社も米国のように、オーバーブッキングの際に強制的に乗客を降機させる権利を法的にもっているかどうか。こちらについてはJAL・ANA共に「そうした権利はもっていません」との回答でした。
国内のフレックストラベラー制度は空の旅に高い自由度をもたらす一方で、協力者が名乗り出ずに離陸できない膠着(こうちゃく)状態を生む可能性もはらんでいます。しかし米国のように強制連行する権利がないのであれば、ユナイテッド航空のような悲劇に発展するケースはまずありえないと考えていいでしょう。
(黒木貴啓)
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