コラム

ロードバイクはオレ専用○○である! 「自転車に50万円」が“安い”理由(後編)(2/2 ページ)

一度ハマったら抜けだせない。

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 リアディレイラーの操作は、ハンドルにあるレバーでおこなう。変速動作に合わせてジャキン! ジャキン! と動いて伸び縮みし、チェーンを変速させるのだ。そのエモーショナルな姿はロボットの腕が稼働している姿にクリソツ。個人的にリアディレイラーが大好きで、愛車のリアディレイラーをじっと見つめるのが就寝前の日課だ。

 変速させるシフターはこんな感じ。人差し指と中指でパッシーン、パッシーンと押し込んで変速させれば、気分は完全にビームライフルを撃つアムロ少年。指先に伝わってくる機械のうごめきも心地よい。

 ミリオタ、サバゲーファンなら「銃の引き金を引き、弾が発射され、ブローバックから一瞬遅れて吐き出された薬莢(やっきょう)が足元に落ちてカーンと跳ね返る……」という一連の動作の快感を知っているはず。ロードバイクのシフトアップ&ダウンはそれに酷似している。

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 自分は高校生の頃、バイトでためた金でM16のモデルガン、UZIのガス式エアガンを買って山で友人らとぶっ放して遊んでいたので、ミリオタファンの気持ちは分かるつもりである。

 さしずめ、シフターが引き金、リアディレーラーは銃本体、チェーンが弾薬……だろうか。街中で好きなだけ引き金(愛車のだが)を引き放題、銃(愛車のだが)をぶっ放ししまくりできる。弾切れは起きない。これが楽しくないわけがない。

 リアディレイラーが好きすぎて、専用デザインを施したオリジナルTシャツを自腹で作ってみたことも。すっかり気に入ってしまったので、希望者を募って大量生産してみたり、ネットショップで販売してしまう始末。


職場の仲間とおそろいで

 妻からは「こんなキテレツなシャツ、買う人いねーよ」と鼻で笑われたが、フタを開ければそこそこ売れている。「隠れリアディレイラー愛好家」は自分だけではなかったのだ。


妻にも無理やり着せました

 「自転車=オレ専用モビルスーツ説」がこれで証明された。

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モビルスーツだと考えれば、タダみたいなもん

 「ロードバイクの素晴らしさは分かったけど……でも、お高いんでしょう?」

 そんな声が聞こえてきそうだ。

 ピンキリあるが、ざっくりいうと初心者モデルで15万円、中級クラスで25~30万円。40万円を越えると趣味と自己満の領域になり、50万円を越えると自転車沼に肩までハマッたジャンキー……にカテゴライズされる。

 この価格帯をどう感じるだろうか? 2万円前後で買えるママチャリの価格に慣れている人からは「高すぎるだろ」というリアクションをされるのだが、ちょっと待ってほしい。ロードバイクが高いのではなく、ママチャリが安すぎるのである。

 いいですか、モビルスーツが数十万円で手に入るんですよ?

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 これはもうタダみたいなもの。買うしかない。初心者用はたったの15万ほど。MacBook Air(1.6GHzプロセッサ 256GBストレージ)と大差ない。25~30万円の中級モデルでも、15型MacBook ProのTouch BarとTouch ID 2.7GHzプロセッサ (512GBストレージ)の27万8800円(税別)と同等。スペック高めのノートPCとモビルスーツが同価格。勝負あった。※MacBookをディスってるわけではありません(´-`)


サーキットなら思う存分かっとばせます

 趣味性の高い50万円オーバーのモデルでも、「モビルスーツだし」と考えれば許容範囲内。何しろ自分専用である。フルカーボンのフレームに、実業団やプロ選手が使うドライブトレインや空力に優れたホイールを搭載し、サーキットでガンガンに飛ばせるハイエンドロードバイクだ。このクラスはシャア専用ザクか、ランバ・ラル大尉の愛機、グフ並の性能を誇る。そんな憧れのモビルスーツを床の間に飾り、独り占めできる悦び。ぜいたく、ここに極まれり。

 さらに! 車と違って、ロードバイクは維持費が安い。税金、燃料、駐車場、車検費用がかからない。自転車保険は年間数千円なので、タダみたいなもんだ。モビルスーツは体育館くらいの修理ドックが必要だし、大量のメカニックも雇わねばならない。交換パーツは安い物でも数百万円はするだろう。オーバーホールしようものなら億単位の金がかかるはず。石油王でもない限り、モビルスーツ所有はかなわない。しかし、ロードバイクという名のモビルスーツなら床の間に置ける。

 ただ、街中の中古車販売店の値段が「50万」とか書かれているのを見ると、「オレのバイクと同じ値段で中古車が買えるのか……アレ?」と現実に引き戻されそうになるので、ぶんぶんと頭を振りながらその場を離れ、思い出さないように努めている。

沼は待っている

 前編、後編と、ここまでずいぶんな文字数を使って自転車への愛を語ってきた。正直、これを読んで「おまえは何を言っているんだ」と思った人もそれなりにいることだろう。

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 だがしかし。その反対に、少しでも「ほう……なるほど……?」と思ってしまった人! そこのアナタ! 目の前に道は開けています。さあ、かくもすばらしき自転車沼の世界へ、ようこそ――。

中山順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。

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