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「やれたか~」と振り返るのは男のさが マンガ『やれたかも委員会』クラウドファンディングに新展開!

ストレッチゴール設定でLINEスタンプ制作へ。作者の吉田貴司さんを直撃してみた。

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 やれそうでやれなかった――人生でふいやってくる巡り合わせを勇気が出ずに逃してしまった人たちの思い出を描いたマンガ『やれたかも委員会』(吉田貴司)のコミックスがついに発売となる。


「やれた」「やれたとは言えない」を判定(画像は【やれたかも委員会】単行本出版記念プロジェクトから

 同作は、一期一会の「やれたかも」エピソードを“やれたかも委員会”に告白しにやってくる人物に、3人の委員が「やれた」「やれたとは言えない」の札で判定する1話完結のオムニバス。大人たるもの、1つや2つは胸にしまっている(であろう)同様の思い出をほろ苦く想起させる作品である(第1話は無料公開)。

 “やれたかも”という表現から分かるように、現実にはやれてはいないし、直接的にはそうした描写もないものの、まるでざんげをするかのように告白される内容はどれもが絶妙に“やれた”感を醸し出すものばかり。そうした告白を聞き終えて、委員長的ポジションの能島明がためになるのかならないのかよく分からない格言を与え、委員会の紅一点、月満子さんが現実的で冷酷な解釈を添えて「やれたとは言えない」理由を説明するのがお約束のようになっている(例外あり)。

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やれたか~(画像は『やれたかも委員会』第1話から)

 2016年4月に「note」で第1話が公開されると話題を集め、最新話が公開される度にネット上では「やれた」「やれたとは言えない」で議論が巻き起こる同作。続編執筆のための資金を募るために立ちあがったクラウドファンディングは、リターンとして用意された「やれた」「やれたとは言えない」札もファンのツボに入り、あっという間に目標金額の3倍以上が集まる事態に。


新たに設定されたストレッチゴールを達成したらLINEスタンプが生まれることに(画面はイメージです)

 6月22日には「200万円を達成したらLINEスタンプを作成する」ストレッチゴールが設定されたところ。作者の吉田貴司さんを直撃してみた。

―― 単行本の発売、おめでとうございます。エピソードが更新されるとネット上では毎回、「やれた」「やれたとは言えない」の議論が巻き起こります。エピソード内の判決は吉田さんの見解ですか?

吉田 漫画内の判決が僕の見解というわけではないですよ。僕は全く分かりません。あくまでキャラクターたちの見解です。ネットの反応は、「そうかー、なるほど」と思うものもあるし、「それはないだろ」ってのもありますが、総じて面白く見ています。

―― 吉田さん自身にはやれたかも委員会で告白したいような出来事はありました?

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吉田 山ほどありますねー。20代のころはそんなのばっかだった気がします。そういうのをいったん精算するために描いているのかも。第1話の内容は友人から聞いた話で、2話目以降にもちょくちょく自分の体験談などを挟んだりはしていますけど、やっぱり「もし自分の身に起こったとしたら」というふうに考えないと、いまひとつ面白くなってくれないようです。

―― そもそも告白者たちは、実際にはやれていないですよね。それを告白することが「救いを求めているんだな」と感じます。そこで月満子さんの「やれたとは言えない」理由が心に刺さる一方で、過去を悔いても仕方ないなと前向きな賢者顔になれるのですが、女性って難しいですね。

吉田 僕の最近の研究によると、「やれた」「やれたとは言えない」の判断って、どうやら時間がたつと変質するみたいなんですよ。女性ってそのとき「してもいい」と思っていたとしても、そこを過ぎると「やれたとは言えない」を挙げる方もおられるみたいで。

―― 何だよそれっ……何だよっ……!

吉田 男からすると「それってズルい!」って思うんですけど、そういうものらしいです(一概には言えないと思いますが)。エヴァンゲリオンのウイルス性の使徒みたいな感じです。やれたかも委員会は今のところ、回顧録というか「思い出話」なので、そういう意味では満場一致の「やれた」はかなり難しいですが、一応考えてはいるので2巻を楽しみにしていていただければと思います。

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―― 密やかな思い出を委員会が判定する、というのがいいですよね。もし吉田さんに実写ドラマのキャスティング権があったら、やれたかも委員会の3人の配役は?

吉田 そういう話は夢があっていいですね。以前、自分で考えていたんですがそのときは、

  • 能島明:阿部寛
  • パラディソ:スガシカオ
  • 月満子:菅野美穂

でした。自分の好きな人集めただけですが。


委員長的ポジションの能島明(画像は『やれたかも委員会』第1話から)

―― パラディソはスガシカオ(笑)。ところで、今後のストーリーを制作するための原資をクラウドファンディングで募り、あっという間に目標額を達成してしまったわけですが、この反響はどう感じました?

吉田 クラウドファンディングは、当初はもちろん「次巻の製作費がほしい」という意図ではじめたのですが、いろいろ計算してみると、リターンを充実させるとお金はあまり残らないんですよね。

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―― 本末転倒じゃないですか。

吉田 でもクラウドファンディングをやること自体の広告効果も大きいのではないかと思い、始めたわけです。結果としてはすごくやってよかったと思います。

 まず「6月27日にやれたかも委員会の単行本が出る」ことを大きく告知できたのが良かった。今、告知って難しくて、雑誌に載っても人に知ってもらうところまでいけないですから。

―― ネット上で口コミで人気を広げていった同作でもそう感じるのですか?

吉田 ネットって自分の好きな情報だけを見ることができて、自分のnoteだけでやっていても毎回同じ人に来てもらうことになるので、それはそれですごくありがたいのですが、告知をしたということにはならない。だから、こっちが知ってもらいたいとなると、いつもは関わりのないところに自分が飛び込むしかないですよね。そういう意味でやってよかったと思うんです。ファンの方から直接応援メッセージをいただけたのも大変励みになりましたし。

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 あとはリターンなどを用意する中でいろいろな人と出会えたのもよかったです。「やれたかも札」を作るときにもネットを使って業者さんを探して、個人で業界外の人と契約書を交わして、イベントの作り方とか全然これまで知らなかったことをたくさん勉強させてもらったことも今後の大きな糧になると思います。

―― クラウドファンディングはメリットが大きかったと。

吉田 他の人もどんどんやればいいと思います。ただお話ししたように、リターンのための費用が結構掛かるので、クラウドファンディングで集まった金額をそのまま制作費と考えてしまうと、がっかりしてしまうかもしれませんね。

 そのような分かりやすい金額よりも、Makuakeのトップページにずっと「やれたかも委員会」の画像が出ていることの効果ってすごいと思いますし、“達成率300%”とか出ているだけで、「なんか人気みたいだな」って思うじゃないですか。

 少なからず出版社の人にアピールもできます。ここだけの話、(単行本の)刷り部数も上がりましたし。(やれたかも委員会の)キャラを広告として使いたいという依頼もいただきます。

 皆さんが出資してくれたお金と、知名度が上がったおかげで増えた印税額や舞い込む仕事、そういったところを見越せば、漫画のジャンルでクラウドファンディングをやるのも1つの選択肢として、アリなんじゃないでしょうか。あと、僕はMakuakeさんの回し者ではありません。念のため。


本稿掲載時点でもMakuakeのトップページには「やれたかも委員会」の案件が表示されていた

―― クオリティの向上も目的として挙げられていましたが、今後は更新頻度が上がることも期待しています! 最後にファンに向けて一言いただけますか。

吉田 具体的なクオリティアップはスタッフを1人雇ってしっかり背景の入った画面を作りたいのと、空いた時間でもっとネームを量産したいですね。

 支援してくださった全ての方々、本当に大大大感謝です。

 頑張ってリターン返しますので、待っててください。

 今後ともよろしくお願いいたします。

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