おまけ付き菓子の世界に異変? 大人が夢中になるバンダイ「スーパーミニプラ」はなぜ生まれたか(2/2 ページ)
2016年にザブングル。
知られざる良コンテンツ、“ミニプラ”
――スーパーミニプラシリーズはどのようにして始まったのでしょうか?
バンダイ: もともと「スーパー戦隊シリーズのミニプラ」というものがあったんです。80年代に発売して以来、ずっと続いている長寿商品で。やっぱり子どものものなので、いつかは卒業してしまうんですけど、めちゃくちゃ数は出てたんです。隠れた名コンテンツだったんですね。
このミニプラの調子がよくて、戦隊だけじゃなくて他のロボットにも広げられないかと。戦隊のミニプラって子どもが買っているイメージだったんですけど、アンケートを見ると半分くらい大人の方が買ってくれていたんですね。
それならということで完全に大人向けに振ったシリーズとして新しく「スーパーミニプラ」というブランドを作ったんです。
――大人のファンも手を出すようになったきっかけってあったんでしょうか?
バンダイ: これはけっこう明確で、「海賊戦隊ゴーカイジャー」という作品がきっかけです。過去の歴代戦隊が出てくる作品で、それもあって子どもだけではなくて大人の方にも見ていただいていたんですね。それで、昔ミニプラを買った人たちが「ああ、まだミニプラってあるんだね」みたいな反応をしてくれて。
この「ゴーカイジャー」の頃にはミニプラってすごくスタイルのいい商品が出せるようになっていて、大人が見ても素直にかっこいいと思えるものになっていたんです。そこから評価がネットとかでも広がっていって、今に至ってます。
ザブングルになったきっかけは「好きだから」
――「ゴーカイジャー」から始まっていたんですね。しかし戦隊ヒーローからなぜザブングルに……?
バンダイ: ザブングルは、社員の1人が持ち込んだネタがきっかけになっています。彼はコレクターズ事業部という完成品の大人向けトイなんかを開発する部署で超合金とかを担当していて、ロボットものの商品に関する知識も経験も社内でトップクラスだったんです。
で、最初がザブングルになったのは、「その彼が好きだったから」の一言に尽きるんですよ……。ミニプラが売れているのにかこつけて「この波に乗るしかない」的な感じでやってみたら、誰も分からないうちに企画が通って売れたと(笑)。
――なるほど。しかしキャンディ事業部さんでこういう商品って珍しいですよね。
バンダイ: 僕らも子ども向けのプラキット以外を開発したことがなくて、大人向けのプラキット開発はゼロからのスタートだったんですよ。後の商品に行くにしたがって技術も精度も上がっていくんですが。
後から出した大獣神とかガオガイガーは、戦隊のミニプラに近いんで「あらためてプラモデルを1から作る」という部分でのつまづき方はしませんでしたが、最初のザブングルはけっこう大変でした。
スーパーミニプラでしかできないこと
――バンダイさんは他の事業部からもプラモデルは発売していますが、それらと比べてスーパーミニプラの強みってどんな部分だと思いますか?
バンダイ: ガンダム以外のいろんなロボットの程よいキットがほしいっていう希望に応えることができるのが強みでしょうか。「でもなんでそれがキャンディ事業部から出てるんだ」っていわれると困ってしまうんですが(笑)。
――スーパーミニプラから出ていることで手を出しやすい感じがするというか、いわゆるプラモデルほどの気力を要求されない感じもある気がします。
バンダイ: それはやっぱりミニプラというブランドがそういう気持ちにさせているのかな、というところですね。でもこのガオガイガーなんかは、フルで組み立てると大きめのHGくらいの組み応えがあるんですよ。ミニプラはそれをバラして売っているので、心理的に軽く感じられるのかも。一箱でも完成させることはできますから。それを3~4個繰り返すので、「ず~っと腕作ってんな……」みたいな感覚には陥りにくいと思います。
――バラしてあるというのが大事なんですね。
バンダイ: ミニプラの開発でも「まとめて売ればいいじゃないか」っていう話は常に出るんですけど、まとめてしまうと商品1つあたりの価格が高くなってしまう。価格が高くなるとスーパーでの取り扱いができなくなってしまうんですよ。また、1箱に1つのマシンというのがミニプラの基本であり、アイデンティティなので、そういう魂は残したかったんです。それらが合体して巨大ロボになる、と。ミニプラもスーパーミニプラも1つの箱に1つのマシンではないことも最近はありますが……(笑)。
――値段が高くなるとミニプラの美点をつぶしちゃいますもんね。
「バンダイっぽさ」からの脱却
――今後はどのような展開をお考えですか?
バンダイ: ガリアンとかのシリーズが始まるのを見ても分かるんですが、今までは超合金で既に出た機体だったりとか、割と安定感や実績があるものを選んで商品化していたんですよ。でもスーパーミニプラっていうブランドにお客さんが付いて来てくれて、また実績の面でも好調なのを受けて、今後は他でやっていない分野やキャラ選定が増えていくのかなというのはありますね。
――初めて立体化されるようなものということですか?
バンダイ: 詳しくは言えないんですけど、ブルーオーシャンというか「これ欲しかったんだけどな~」っていうものがまだまだたくさんあると思うので、そこを見つけて掘って行くということになるのかなと。だから今までとは少し違う商品が増えるのかなという感じですね。「昔のできの悪いキットしかなかったから、これがめっちゃ欲しかったんだよ!」っていうのが出だすのが今後かなと。
――今まで出たザブングル、イデオン、ガリアンっていう並びから予想される次の商品っていろいろとあると思うんですが、そこの範疇(はんちゅう)から出た商品も今後はありうるということですね。
バンダイ: そうですね。スーパーミニプラっていうブランドを軸にいろいろなものがつながっていくというのもありますし、作品の中でも例えば「主人公機のできはよかったけど僚機はイマイチだった……」というタイトルの僚機を出すとか、そういうことが起こっていくのかなと。
ありがたいことに反響が大きくて、会社的にも今後このブランドを加速させていこうという流れがあるんですけど、正直われわれもどうブランド構築をしていこうかというのは模索中な部分もあります。ですのではっきりとは申し上げられないんですが、方向的には超合金など、いわゆるバンダイっぽいメインの流れからは外れていくような感じになるのではないでしょうか……。
――今後は予想のつかない方向にいく可能性が高いということですね……。めちゃくちゃ楽しみです!
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