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ドイツで広がる「痛車」文化 オーナーに聞くその魅力や苦労とは

ドイツの「痛車」事情を探るべく、「痛車」グループの代表にインタビューを行いました。

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 ドイツでは近年、自動車の外装にアニメキャラクターなどを施した「痛車」を見かけるようになりました。とくに昨年以降、アニメファン向けイベントではグループで展示されていて、「痛車」文化は浸透しつつあるように見えます(関連記事)。調べてみると「ドイツ欧州『痛車』ネットワーク」(Network of German & European Itasha:NGE痛車)なる団体の存在が明らかになり、設立者にインタビューをすることができました。今回はドイツの「痛車」事情をご紹介します。


アニメファン向けイベントの会場前にずらりと並ぶドイツの「痛車」。ここはドイツです
ドイツの「痛車」グループ「NGE痛車」のWebサイト

ドイツの「痛車」サークル「NGE痛車」とは?

 「NGE痛車」は、欧州における「痛車」のオーナーや「痛車」に関心のある人たちの情報交換と交流を目的に2015年に設立された団体。現在のメンバーはおよそ130人で、ドイツを中心に、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランド、フランスなど欧州各地にいます。このうちメンバーが保有する「痛車」はおよそ40~50台。ドイツが最も多く、デュッセルドルフを州都とするノルトライン=ヴェストファーレン州だけでも10台存在するそうです。


インタビューに応じた設立者で代表のクリスティアン・メンツェルさん

 代表のクリスティアン・メンツェルさんによると、設立の理由は「『痛車』のグループは、アジアやアメリカには存在しているが、ドイツにはまだなかったため」とのこと。

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 主な活動内容は、イベントでの車両の展示と情報ブースの設置。オンラインではFacebookのグループで交流しているそうです。「いつの日か、メンバー全員が集結できるような大きなイベントを実施したい」と抱負を語ってくれました。

 メンバーは設立当初はゆっくりとしたペースで増えていきましたが、イベントへの出展を契機に、急速に増加。会費は存在せず、有志のメンバーによりボランティアで運営されています。

「痛車」の魅力とは?

 もともと車ファンで、自分好みにカスタマイズしたいと思っていたというメンツェルさん。同時にアニメファンでもあり、ネットでアニメの絵が描かれた車を見たときに、そのカラフルな車体に一目ぼれ。最初は「痛車」という言葉を知らなかったため、情報収集には苦労したそうです。

 また「ファン同士の交流が非常に和やかで、お互いに助け合う傾向が強いのも、『痛車』文化が他のオタク文化のコミュニティーとは違う魅力のひとつかも」と教えてくれました。

どうやって作っている?

 「情報収集は基本的にインターネットですね。英語の情報がメインですが、検索エンジンで『痛車』を検索し、その検索結果を参考にしています」とメンツェルさん。痛車雑誌も重要な情報源です。

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 最近話題になったのは、「先日、ある雑誌が休刊したことで、ドイツでもファンが非常に残念がった」こと。雑誌は、日本の通販サイトで注文しドイツに発送してもらっています。


情報源には日本の雑誌も

 では、具体的にどうやって「痛車」を製作しているのでしょうか。まずは依頼を受けてくれる業者を探すところから始まります。完成イメージとなるコンセプトを作成し、さまざまなところに問い合わせたそうです。

 「当初は自動車の整備工場などに聞いていましたが、なかなか良い返事をもらえず、最終的にはタクシーやバスのラッピング広告を手掛けるグラフィックデザイン事務所にたどりつきました」(メンツェルさん)

 1台にかかる費用はおよそ1300ユーロ(今のレートでおよそ17万円)。ただし価格は作業内容によって異なり、メンバーの中には4500ユーロを投じたという強者もいるとか。また、国ごとに物価が異なるので、どの国で発注するのかでも費用が変わってきます。

 苦労した点は、高解像度の画像データを手に入れること。その次は実際にフィルムの貼り付けを行ってくれる業者を探すこと。メンツェルさん個人の体験としては、他人の「痛車」をデザインすることも苦労だったそうです。「自分の『痛車』だと楽しいことばかりでしたが、妻の車をデザインしたときは純粋に作業ばかりで楽しくなかった(苦笑)」

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ドイツのアニメファン向けイベントで展示された「痛車」

ドイツでの「痛車」への反応は?

 「99%ポジティブです」と言い切るメンツェルさん。特にイベント会場ではコスプレイヤーに好評で、車と一緒に撮影を希望するコスプレイヤーが多いと話します。

 メンツェルさんは仕事に行くときもプライベートでも『痛車』に乗っているので、よく声をかけられるそうです。「ある時、警官に呼び止められたことがあり、理由を聞いたところ、車をじっくり見たかったからだと言われたこともありました」。ドイツの警官も「痛車」に興味津々なようですね。

 イベントでよく聞かれる質問はと聞いたところ、一番多いのは費用について。次は、日常生活でもこの車に乗っているのか。また、制作方法についての質問も多く、あとは写真を撮ってもいいかと必ず聞かれるそうです。


「痛車」の人気モチーフの1つ「初音ミク」

痛車文化の今後は?

 「少なくとも5年くらいはまだ広がり続けるでしょう」とメンツェルさん。「私たちも今年はドイツを離れて初めてスイスで『痛車』の展示を行いました。来年はフランスのパリを予定しています。その他の欧州の国も現在検討しています」。今後も欧州のイベントで「痛車」を目にする機会は増えそうです。


他にはこのような「痛車」も

 最後に日本の読者へメッセージをいただいたところ、「日本で開催されている『痛車』イベントは、私たちにとってとても貴重なインスピレーション源となっています。いつの日か日本の『痛車』オーナーの皆さんと交流ができればと思っています」とメンツェルさん。

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 日本を飛び出した『痛車』文化は、ドイツで着実に広まっているようです。日本とドイツは有名な自動車メーカーを抱え、自動車ファンも多いという共通点も。『痛車』を通じた日独交流というのも楽しいかもしれませんね。

(取材協力:アニメメッセ・ベルリン2017、写真協力:N.G.E. Itasha、Lena Kluth)

筆者紹介

Kataho:ドイツ、フランクフルト在住のアニメ・ボカロ好き。日本文化を通じたドイツと日本の交流に興味があり、ドイツ各地の日本イベントに参加(Twitter:@sakaikataho

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