コラム

「インターネット」が初めて国語辞典に載ったのはいつなのか?(3/3 ページ)

説明文も「板チョコ」から「チューインガム」に進化。

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消えた情報技術用語「電気計算機」

 さて、パソコンもコンピューターもまだ国語辞典に載ってないころに載っていたIT用語として「電子計算機」「電気計算機」という言葉がある。

 1963年に出版された、『岩波国語辞典』の初版を見てみる。


『岩波国語辞典』初版 1963年

電子

-けいさんき【-計算機】→でんきけいさんき。


『岩波国語辞典』初版 1963年

電気

-けいさんき【-計算機】電力・電気装置を使って計算を行なう装置。▽普通の計算機を電力で動かすもの(=電動計算機)と、電気回路を利用するもの(電子計算機はその一例)とがある。

 どちらもそれぞれ「電子」「電気」のブランチの1つとして、控えめに登場している。しかも、電子計算機は、電気計算機の種類の1つとして紹介されているのみ。『岩波国語辞典』がいう「普通の計算機」というのは、おそらく、手回し計算機のようなものだろう。手でぐるぐる回して計算するやつだ。

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 電子計算機といっても、この頃はまだ本当に計算しかできない機械、という認識だったとおもわれる。


手回し計算機

 ただ、1963年というと、すでに、当時の国鉄は発券システムにコンピューターを導入(1959年)しており、社会のあらゆるところでコンピューターが使われはじめていたころである。

 しかし、コンピューターはまだ国語辞典に登場しなかった。つまり、1960年代前半の日本では、コンピューターはまだ一般的に使うものではなく、業務用であり、特別な場所で特殊な使われ方をする「機械」でしかなかったのだ。

 しかしその後「電子計算機」の説明がどんどん詳しくなっていく。


『岩波国語辞典』第四版 1986年

電子

-けいさんき【-計算機】制御装置・演算装置・記憶装置・入出力装置から成り、プログラムにより複雑なデータ処理が電子的に高速で行える計算機。コンピュータ。

 「電気計算機」の方は第五版以降、項目自体が消えてしまった。計算機といえば、電気を使うものが当たり前になったのだ。

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 以上、国語辞典のIT用語をしらべて、年代順に並べてみた。ざっと通してみてみると、分かりやすく説明しようとする『三省堂国語辞典』、なりたちから説明する『広辞苑』など、IT用語の取りあげかたや説明にばらつきがあり、個性がかなりあることが分かった。

 とかく、国語辞典は「どれを買っても同じ」とか「昔のものを大事に使っているから新しいのはいらない」みたいな先入観をもたれがちだが、おなじ言葉をしらべても、各国語辞典で、その説明の仕方に大きな違いがあるうえ、つねにアップデートされていることがよく分かる。(アップデートされない国語辞典もあるけれど)

 国語辞典、意外と面白いのだ。

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