「Flash終了」までの20年とはなんだったのか? ネット文化からアニメへ至るFlashの歴史を振り返る(1/3 ページ)
「おもしろフラッシュ倉庫」とかいろいろあったなぁ(遠い目)。
7月26日、米Adobe Systemsが「Flashの開発と提供を2020年で終了する」というアナウンスをしました。1996年に誕生して以来、デジタルコンテンツの世界で強い存在感を示してきたFlashが終了するというニュースは、各方面で大きな話題となりました。
ただし、一口に「Flash」と言っても、その意味するものはさまざまです。例えばアプリ開発ソフトとしてのFlash、画像や音声を使ったWebコンテンツとしてのFlash、そしてアニメ制作現場で用いられるFlashなど。それぞれの世界にそれぞれのFlashがあり、かつそれらが複合的に絡み合って発展してきたために、これまでその歴史が横断的に語られることはありませんでした。
この記事では、主に「ネット文化」と「アニメ制作」の観点を中心に、Flash誕生からの20年余りを振り返ってみたいと思います。
ブロードバンド前夜の「Flash黄金時代」はswfが大人気
まずは「ネット文化におけるFlash」から。Flashに一番活気があった時期は2000年代前半です。ブロードバンドが普及する前だったので、比較的小さなデータ量で、豊かな表現ができる「swf」(Flashのコンテンツ形式の1つ)が重宝されていました。このswfは動画としてだけでなく、ゲームやサイトなどのインタラクティブ要素にも活用できます。
2000年代前半は、ネット文化の観点では「Flash黄金時代」と呼ばれていた時期ですが、このFlash黄金時代におけるFlashも、実質上swfを意味することになります。もちろん、閲覧するにはFlash Playerが必要です。
特に大規模掲示板「2ちゃんねる」では時事ネタやパロディー、MADや二次創作に該当する作品が多く制作されました。2002年に設立された「FLASH・動画板」では、「紅白FLASH合戦」「FLASH★BOMB」といったイベントなどでも大きな盛り上がりを見せました。
それらに伴い、作品を紹介するサイトも人気を集めました。当時は「イイ・アクセス」「かーずSP」「ホタテプロダクツ」が“御三家”とされていましたが、多くの人の印象に残っているのは、類似の名称で複数存在した「おもしろフラッシュ倉庫」でしょう。
おもしろフラッシュ倉庫の人気ぶりは、「Yahoo! JAPAN」の検索ワードランキングにも反映されていました。その年の検索ワードを積算し、上位50位を掲載したランキングに、2004年から2007年までランクインしていたのです。
現在でもその名残はWeb上の各所に見られ、今回のアナウンスを受けて登場したTwitterのハッシュタグ「#まだ生きてる歴史的Flashページを紹介する」でも、swfのアニメやサイトなどをたどれます。
その一方で、例えば2016年にメジャーデビューした3ピースバンド「ヤバイTシャツ屋さん」のMV紹介ページには「おもしろフラッシュ倉庫」の名前があります。メンバーのこやまたくや氏は、岡崎体育氏のMV制作を担当する「寿司くん」としても知られ、当時のネット文化からの影響を感じさせます。
2ちゃんねるにおける混乱とYouTubeの台頭
しかし、記事冒頭で述べたように、Flashの意味するものはさまざまで、swfコンテンツである「おもしろフラッシュ」と、「Web制作におけるFlash」では大きく性質が異なります。同じ2ちゃんねるの中でも、「web制作管理板」でFlashの話をしようとすると、“板違い”とされて「FLASH・動画板」で議論をするように誘導されるなど、「異なるFlashにまつわる混乱」が既に見て取れます。
さらに「FLASH・動画板」では、swf以外の動画形式が“板違い”の状況になりました。2ちゃんねる開設者であるひろゆき(西村博之)氏は、動画スレッドが各板に散らばっていることから、2006年に「動画閲覧版」の新設を提案し、結局は先に存在していた「ストリーミング板」の名称が「YouTube板」に変更されるという形に落ち着きました。「YouTube」は2008年から先述の検索ワードランキングの1位を独走しますので、その需要は言わずもがなです。
ブロードバンド化が進む中、2005年にYouTubeが誕生して以降、「ニコニコ動画」などの動画サイトが続々登場。一時の熱狂的なFlash黄金時代は終わりましたが、それらの動画サイトでも、閲覧にFlash Playerを必要とする「閲覧環境としてのFlash」が圧倒的に支持されたため、やはりFlashの時代が続くように見えました。しかし、2007年にAppleが「iPhone」を発売したことで、早くも時代は次へと移っていきます。
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