インタビュー

「甲子園の土、その後どうしてますか?」 元甲子園球児たちに聞いてみた(3/3 ページ)

あの「奇跡のバックホーム」の走者だった方にもお話を伺いました。

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監督「いっぱい、甲子園の土をさわっておけ!」

 1991年、夏大会に出場した岡山東商業高校ナインにもお話を聞けました。1回戦、センバツ準優勝で、後に日本ハムへ入団する上田佳範投手擁する松商学園(長野)を前に、惜しくも2-6で敗退。

 キャプテンで3番キャッチャーだった橋本さんはこう語ります。

 「お世話になった方々へ配りました。親がリビングの棚に、花と一緒に飾ってあります」

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 「甲子園練習で、監督に『試合前に、いっぱい甲子園の土をさわっとけ!』と言わわれ、すごくサラサラで、砂のような手触りでビックリしたのを覚えています」

「息子の野球友達がみんな、こっそり土を触っています」

 1番セカンドだった大森さんは、当時のクラスメートへ粋なはからい。小さなビンに詰めて、20人へプレゼントしたそうです。いまはメダルや盾らと共にビン詰めで土を飾っているとか。

 「甲子園の土はやはり『いい思い出』ですね! 息子が野球をしているのですが、友達が来て、勝手にみんなで触ったりしているそうです」


練習する野球少年。甲子園の土を踏めるのはひと握り

「土を見て、甲子園を目指す我が子を思います」

 6番センターの大塚さんもやはり同じクラスの子に配り、いまはビンに詰めて寝室のタンスの上に飾っているそう。

 「子供がいま、甲子園を目指して頑張っていますので、この土を見ていろいろ思います。本当に……良い思い出です」

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「甲子園の土をまいた畑の野菜を、毎日食べています」

 滋賀の高校で甲子園へ出場した佐藤さん(仮名)。土はビンに詰めて家族や親戚に配った後、なくしてしまったとか。

 「特に飾っていたわけではなかったですし。その前に……残った土は祖父母の畑にまきました。夏はトマトやきゅうり、ナス。冬は白菜やキャベツが採れて、その野菜を今も毎日食べていますよ。野菜がおいしくなるかな、と思ってまいていたと思います。特に味の変化はありませんが、高校生のときは何か、豊作になるなどのご利益でもあるかな……と思っていたことは確かです」


甲子園の土で育ったキャベツはおいしくなりそう(写真はイメージです)

「タンスの上にあって、時々見ていました」

 1999年の夏、3番ファーストとしてタイムリーを放ち、公立高校・柏陵のベスト8躍進へと貢献した太田光一さん。

 友達や親戚にあげた後は残った土を小さな瓶に入れて、タンスの上に保管し、その姿を時々見て確認していたとのこと。甲子園の思い出は大事にしているものの、土にはそこまでこだわりはなかったそうで、「土を眺めて、何かを想ったり……はしませんでした。今は押し入れの中です」と笑います。

甲子園の土は「特別」としか言えない

 青森の高校で高3のときに甲子園へ出場した下畑さん。県大会決勝の光星学院戦では、1番バッターとして殊勲の先制タイムリーを放ち、甲子園へ導いた彼も、親戚などに配っていったとか。いまは実家のリビングのトロフィーらとともに、甲子園で買ったビンに入れて飾ってあります。

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 「甲子園の土は、特別……としか言えない。強豪たちを倒して、苦労をして得られたものなので」


途方もない闘いの末につかみ取る、甲子園の土

 普段あまりされないような質問に、本当に皆さん誠実に、丁寧に答えてくださいました。

 “甲子園の土”はたかが土、されど土。解釈によってその重さは変わり、それを反映するような、それぞれの「土のその後」がありました。

 時には、人の大きな思いも込められる甲子園の土。それは野球少年の誰もが目指した舞台に立てたからこそ、つかめたもの。そんな特別な土は、これからも憧れでありつづけるでしょう。

 今年ももうすぐ、甲子園の決勝がやってきます。

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