レビュー

決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』司書メイドの同人誌レビューノート

忘れたと確信したときのドキドキ感……。

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 すっきり晴れ渡った空。こんな時はおうちを飛び出して、たっぷりお出かけを楽しんだ後、帰路についた頃に、はたと気付くのです。「あれ? 家のカギどうしたっけ……」と。こんなこと、一度はありませんか?

今回紹介する同人誌

『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』

A5 20ページ 表紙2色刷り 本文モノクロ

作者:ITK


暗闇にぽっかりと浮かび上がるお顔がちょっと不安げなその訳は……

タイトルそのまんま! そのとき彼女は……

 充実の映画鑑賞をして、夜10時に帰宅した彼女は、玄関で気付くのです。カギが無い! と。今回のご本は、『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』。このタイトルが示す通りの状況に陥ってしまった作者さんが、己の身に起こったことを克明にレポートしたマンガです。

 カギを忘れたショックで立ちつくす作者さん。震える手で管理会社に連絡するも、夜遅かったために管理会社は既に営業を終了しており、マスターキーは明日の朝9時にならないと入手不可。そうそう、家の鍵のことを思い出すときって、帰路についてからなんですよね。1日しっかり外出して、ほどよく疲れて、しかも日が暮れている……。それはもう、彼女のように血の気が引くショックが襲ってきます。

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いい気持ちで自宅についたのち、悲劇が襲い掛かる!

あなたならどうする? 日常にひそむうっかりの落とし穴

 震えるほど驚いて、それでもとにかく宿泊先の確保を! とネットで検索をはじめる彼女。おお! 突然の出来事にも冷静な対応ではないですか。すごい! と、共感して見守ってしまうのは、何を隠そう、私も同じく「深夜にカギを忘れて家に入れず」という経験があるからです……。わざわざ周りに聞いたことないですけど、意外とありませんか? この体験。

 ちなみに私は大きめの駅で降りて、見える範囲の宿泊先のフロントに片っ端からアタックする、という体当たりの解決法で一夜の宿を確保したのです。それと比べたら、彼女の「いいかんじの宿泊先をネットで探す」というというのは、突発的な危機に遭遇した中でも、かなりのスマートな解決方法だと思います。素晴らしい。

 “突発的な危機”というのをちょっと大げさじゃない? と思われたでしょうか。これ、ほんとに体験すると、自分でも意外ほどショックを受けるんですよ……。誰にだってありうるピンチ。自分ならどうする? マンガを読みながら、頭の中でシミュレーションが広がります。

ちょっとした情報がうれしい。いつもの過ごし方に+αのサプライズを!?

 作者さんは、女性限定のカプセルホテルを探してそこに落ち着くことに。カプセルホテル! あの個別に仕切られた箱が重なっているのが、宇宙船ぽくてかっこいいと思いつつ、泊まる機会が無かったので、丁寧に描かれると、ふむふむそうなんだ~と、じっくり読んでしまいます。パジャマは? 基礎化粧品も置いてあるの? などの疑問も、作者さんの驚きと一緒に追体験です。ちょうど、アニメ作品とのコラボも行われていたようで、ハプニングの結果ではありますが、一晩をちょっとどきどきしながらも、楽しみを見出しながら過ごされる様子に、ふふっと笑いながら読み進めることが出来ます。


不安の中、目指す先はカプセルホテル!

 実際に体験すると「うわ……やっちゃった……」感がする出来事も、まるでお昼休みに同僚から「いや~実はこの間、大変なことがあってねぇ」という、“そんなに大変じゃない、でもけっこう大変だった話”を、「うんうん、それは大変だったねぇ」と聞いているみたいな、ふんわりしたエンタメに変えているのは、まるっこい輪郭とざっくりした線の画面の力も大きいのでは。まんまる目の彼女が、表情豊かに危機を乗り切ってくれるおかげで、「私もあるある!」と、あの失敗を笑い話にして話せる感覚になれます。

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 最後のページで、無事に朝を迎えた彼女の表情は全力の笑顔! こんな風に笑って朝を迎えることが出来るなら、たまにはこんなサプライズもありかしら? なんておもってしまうご本です。


思わぬ楽しさも!? 笑顔が戻って良かった

サークル情報

サークル名:ホロケウ

Webサイト:Webサイト

Pixiv:Pixiv

Twitter:@psy110

購入先:Comic ZIN

次回イベント参加予定:コミティア122

今週のシャッツキステ


曇りのち雨の朝は、開館前はいつもよりひっそりとした雰囲気。本の整理をする静寂も心地よいものですねー

著者紹介


司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

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