音が出るものから計算できないものまで!? 作者の“変な電卓”愛が爆発した同人誌に電卓の可能性を感じる:司書メイドの同人誌レビューノート
変な電卓が114種類を掲載した「変な電卓2017」を紹介します。
新年度もはじまって1カ月が過ぎ、そろそろお仕事や新生活に慣れてきたころでしょうか。無理せずにマイペースが一番! とは言うものの、やるべき作業は待ってくれないときもありますよね。ああでも、細かな計算表なんて見るだけでめまいが……。この計算を早く終わらせて、よく晴れた青空の下に解き放たれたい……。今回は、そんなつらい作業のときも、こんな相棒が机の上にいてくれたら作業が楽しくなっちゃうかも! という、ユニークな電卓が勢ぞろいの同人誌です。
今回紹介する同人誌
「変な電卓2017」 A5 34ページ 表紙・本文カラー
著者:藤村阿智(ふじむらあち)
こんな電卓があったとは、変な電卓が114種類も大集合
ページを開けば、ハート形の電卓、イチゴ形の電卓、布で作られた電卓……とまあ、出てくる出てくる、オフィスではなかなかお目にかかれなさそうな、ちょっぴり変わった電卓たちが114個も掲載されています。本文もカラーで、豊富な実物写真と価格やメーカー、入手先と、分かりやすい解説が添えられています。これらは全て作者さんがコレクションしている電卓で、さらに今でもコレクションは拡大中とのこと。本にもまだ全部載せきれていないというのだから驚きです。
なぜこれを電卓にしようと思った? 形、機能……バリエーション豊かな電卓コレクション
そんな充実のコレクションから選ばれただけあって、紙面には個性的な電卓が並びます。丸い形のものやカエル型、あれ? これはあのゲーム機のコントローラーっぽい? などなど、形が変わったものは色もカラフルで、見ているだけで楽しくなりそう。
見た目だけでなく、見ても聞いても楽しめる、動きや音があるタイプも多いようです。なかでもキャラクター電卓はひときわ多彩なアプローチ。
ゲーム「クドわふたー」の電卓はキャラクターにちなんで、一部ロシア語でおしゃべり。90年代に少女マンガからアニメになって大人気だった「ママレード・ボーイ」は、しゃべるのに加えて、電卓の上に鎮座したかわいい光希ちゃん人形が動く仕様なんだとか! そして赤いタイプライター風の「ルパン三世」の電卓に至っては、キーをたたく度、アニメのサブタイトル表示と同じ「カシャカシャ」とタイプ音がし、イコールを押すと衝撃的なあの効果音が流れるんですってー! うわ、そんな電卓、今すぐ計算したくなってしまうではないですか。
変な電卓があるお店はニオイでわかる!? 電卓愛あふれるコメントも見どころ
作者さんの「変な電卓」愛は、なんと“計算できない電卓”が載ったページまであるというところからも伺えます。ボタンを押すと水が噴き出るイタズラ電卓、電卓柄のハンドタオルに、電卓柄のぽち袋……いずれも計算機能はありません。それを誰がいつ使うのか? と疑問に思ってしまいそうになるものの、そこで私は気付いたのです。いや、これらが世の中に出回って、作者さんの手元にやってきたことこそが、世の中に電卓が愛されていることの答えだと。よく考えてみてください。“計算できない電卓”ってかなり根本的な存在意義から疑問になるお品ですよ。それが流通し、また大切にコレクションされているなんて、作った人もコレクションする人も、その両者による電卓愛のなせる業ではないでしょうか。
そして、電卓への思いあふれる作者さん、「どこで変な電卓を買えるの?」と聞かれたときの回答コメントが最高潮に盛り上がります。変な電卓収集の極意は「変な電卓のありそうなニオイ」を感知することですって! 電卓という、これ以上ないくらい、さっぱりとお堅い機器でありながら、そのコレクションを支えるのは第六感という、柔軟なエピソードはさらりと語られていますが、とても味わい深い一言だと思います。
作者さんはコレクションをサイトでもご紹介されてらっしゃるので、ぜひその電卓愛をのぞいてみてくださいませ。
サークル情報
サークル名:メルプのお部屋
Twitter:@AchiFujimura
Webサイト:http://www.blackstrawberry.net/
入手先:COMIC ZINで取り扱い予定
次回のイベント参加予定:コミティア、コミックマーケット
今週のシャッツキステ
前回の写真は、ガイスターさんを仕分けましたが、今回は、笑い笑えばフレンズ! 昨年「けものフレンズ」のフレンズさんたちをお迎えし、あれから1年……。なんとまたシャッツキステでフレンズさんたちにお給仕レッスンすることになりました。ジャパリカフェinシャッツキステまであと1カ月!
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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初版は1990年。ゴン太くんの中の人・井村淳さんの死をきっかけに再販が決定したそう。