連載

これは福音である 「プリキュア男子」という多様性についての考察サラリーマン、プリキュアを語る(2/4 ページ)

「プリキュア論」をどうしても書きたかったので、いつもと文の雰囲気が違います!

advertisement

多様性の最先端「プリパラ」

 その前に女児向けアニメにおける多様性とは何か? を語る上では外せない作品があります。

 タカラトミーの手掛ける女児向けアニメ「プリパラ」です。


劇場版プリパラ み~んなでかがやけ! キラリン☆スターライブ!(Amazon.co.jpから)

 2017年現在、女児向けアニメにおいて最も「多様性」を描いてきた作品です。

advertisement

 プリパラは「みんなトモダチ、みんなアイドル」を基本テーマとし、その世界では「誰でもアイドルになれる」のです。

 ごく普通の子、勝気な子、内気な子はもちろんのこと、男装の麗人や、「男の娘」も普通にアイドルとしてステージに立ちます。

 さらに少しお年を召した人から、従来のアイドルアニメでは存在すらなかったことにされがちな「太った子」も、一様にアイドルとなりステージで称賛されるのです。

 高飛車な子も、イタズラ好きな子も、お金が大好きな子、さらにはうまく歌えない子、踊りの下手な子までもを許容し、「全ての女の子」がアイドルとなりステージで光を浴びることが許される世界なのです。

 2017年4月にスタートした「アイドルタイム プリパラ」においては、「男の子」もステージに立ち、性差を越えてステージ上で共演するシーンも見られ、また美容師を夢に持つ女の子の活躍など、アイドルの世界を描きながらも「アイドルではない夢」をも許容し始めています。

advertisement

 プリパラの世界に一歩入ると、そこでは全てのLGBTを許容し、全ての職業を許容し、あらゆる生き方を認める世界が描かれているのです。

 生まれつき持った属性が何であれ、アイドルを始めとしたあらゆる「夢」をかなえて良いんだよ、ということを「プリパラ」という女児向けアニメを通じて女児に提示しているのです。

 「プリパラ」は女児向けアニメ、いや日本アニメの「多様性」の最先端を突っ走っているアニメなのです。

プリキュアの描く多様性

 かたや「プリキュアシリーズ」は女児向けアニメーションの雄でありながらも、性の多様性を描くことは一歩遅れていました。

 須川亜紀子さんの著書『少女と魔法 ガールズヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版)では、プリキュアはあくまで、女の子のジェンダー規範(子育て、ファッション、お姫様など)を基礎としているとし、プリキュアはジェンダー規範からの脱却ではなく、ジェンダー規範を内包し、昇華することにより女の子の活躍を描いてきた作品である、ということが示唆されています。プリキュアで描かれるのはあくまで「女の子」が「戦いながら」も「女子に与えられた育児やファッションを楽しむ姿」でした。

advertisement

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

 そこには「多様性」の概念は薄く、女の子はこうである(べき)という一種の呪いが蔓延(まんえん)していたように感じられます(それは主人公のプリキュアが毎年、大人からみた「良い子」にみえる、といったことなどにも伺えます)。

近年のプリキュアのジェンダー感

 しかし2015年以降、プリキュアもようやく「多様性」を意識してきているように感じられます。

 2016年「魔法つかいプリキュア」においては、そのオープニングソングで、

人はね…みんな違う 愛し方や 痛みも違う
その違いが”素敵”だって 今なら言える
前期オープニングソング:「Dokkin 魔法つかいプリキュア」

という歌詞に象徴されるように、「人はみんな違い、その違いこそがすてきである」という多様性の概念を描いてきました。


魔法つかいプリキュア!(Amazon.co.jpから)

 2017年「キラキラ☆プリキュアラモード」でも6人もの個性的な人物を描写し、多くの「多様性」に配慮しています。その最たるキャラクターが、「男装の麗人」ではなく「ナチュラルなスタイルが男子っぽい」と定義されたキャラクターである「剣城あきら」でしょう。

advertisement

 また、第40話においては、プリキュアだけではなく、一般市民も、妖精も、動物も、あらゆる種族が「キラキラル」を生み出すことができる存在である、として「種族間、人種間」の区別すら無くしています。

 近年プリキュアの多様性については、筆者の「プリキュアの数字ブログ」の記事「虹色のプリキュア「キュアパルフェ」は「多様性」の象徴なのか?」に記しました。

 公開後、大きな反響とコメントをいただきましたが、その中でも多かったのが、

「男子がプリキュアになれない以上、プリキュアは多様性を描いているとはいえない」といった趣旨の意見でした。

 確かにそうなのです。

advertisement

 「男の子がプリキュアになること」は、プリキュアの多様性の幅を広げる大きな一歩なのです。

 そして、

その答えこそが「リオくん」なのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. 「雨の日は大活躍」 ワークマンの“2900円ジャケット”に称賛の声が続出 「春先の外出に役立ちました」「言うことなし」
  3. 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  4. そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  5. 「まじで神商品」 かっぱ寿司が販売している「まさかの110円メニュー」に仰天 運営が明かす“意外な需要”
  6. 【ダイソー】A4額縁にマグネットシートを入れるだけで…… 2児ママの天才アイデアに「こういうのほしかった」「感動」
  7. 朝起きて“ディズニーにいる”と気付いた3歳娘が…… 抱きしめたくなるリアクションに「やばい泣く」「一生の思い出だ」
  8. 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  9. 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  10. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」