「応援なんて誰にでもできる」という正論に、プリキュアはどう立ち向かったのか? 「HUGっと!プリキュア」開始3カ月を振り返る:サラリーマン、プリキュアを語る(3/3 ページ)
まだ4分の1が終わっただけなのにこの密度。2018年のプリキュアはとにかくすごいぞ。
「子ども」から「大人」になること
もちろん「HUGっと!プリキュア」で問題を抱えているのは野乃はなちゃんだけではありません。
2人目のプリキュア、キュアアンジュこと薬師寺さあやちゃんは、母親が大女優で、本人もかつては有名子役だった過去があり、過去に縛られて生きています。
3人目のプリキュア、キュアエトワール、輝木ほまれちゃんも、かつてはトップスケーターとして活躍していたものの「体が成長することによって、思うようなジャンプができなくなる」という現実を突き付けられています。
この2人に共通するのは「子ども」から「大人」へと成長する過程での変化です。
第12話のハリハム・ハリーのセリフにあるように、
「成長することによって、できることも変わっていく」というのも「HUGっと!プリキュア」のテーマの1つになっているものと思われます。
何もできないことがコンプレックスの「野々はな」と、「かつてできたことができなくなった」薬師寺さあや、輝木ほまれの成長を通して、作品テーマの「なんでもできる、なんでもなれる」「輝く未来を抱きしめて」を描いていく、という構成もすてきです。
4:カッコイイ大人を描く、ということ
「HUGっと!プリキュア」のテーマの1つは「子育て」「お仕事」の両立です。
このセンシティブで一見扱いづらいテーマの先に「なんでもできる、なんでもなれる」があるのでしょう。
第12話で、はぐたんとハリハム・ハリーは未来から来た、と明かされました。
そう。
「HUGっと!プリキュア」は「未来」を作っていく物語なのです。
そして、その未来とは「大人」になることなのです。
だからこそ「HUGっと!プリキュア」ではたくさんの「大人」が描かれます。
「超イケてるお姉さん」に憧れ、パジャマパーティーを通して「大人ごっこ」をする野乃はなちゃん。一番身近な「大人」であるお父さんから「お仕事の素晴らしさ」を学び、最大のピンチにはお母さんに助けられました。
また、母親にコンプレックスを抱くさあやちゃん。
大人の体になることを受け入れられなかったほまれちゃん。
共に「大人」になることに躊躇(ちゅうちょ)していました。
そんなときハリハム・ハリーは「イケメンアドバイス」でオトナの助言をします。
クライアス社の悪い大人たち、直接的に「大人の人」と言及された「謎の男」の存在。
ほまれを心配する体育教師、公園のベンチで悪態をついたダメな大人、はなを思うタコ焼き屋の主人……。
「HUGっと!プリキュア」は、とにかく「大人」を描きます。
良い大人も、悪い大人も。
そして子どもたちの一番近くにいる「大人」であるパパやママこそが「カッコイイ」「強い」ということを「子育て」「働くこと」の描写を通して、子どもたちに伝えようとしているのではないかなと思います。
「HUGっと!プリキュア」は大人になることに抵抗しつつも、それを受け入れ、輝く未来を信じる少女たちの物語だと思います。
だからこそ、「カッコイイ大人の姿を見せる」「カッコイイ大人とは何か?」を描いていくのだと思うのです。
そして、その「カッコイイ大人の描写」こそが「HUGっと!プリキュア」が大人にも受け入れられている本当の理由なのではないのかと思うのです。
5:「フレフレ、みんな!」が大人を癒やす
野乃はなちゃんの「応援」は決して独りよがりではない、他人を認める、共感するための「応援」です。
これから、社会へと旅立つ未来の大人たちに。
いま、社会に出て、お仕事を「頑張っている」大人たちに。
いま、子育てに追われながら一生懸命、お母さん、お父さんを「頑張っている」大人に。
「なんでもできる、なんでもなれる」
「フレフレ、みんな!」
日曜日の朝、キュアエールは、そんな全ての大人たちを、ただ認め「応援」してくれているのではないかと、思うのです。
(最後に)
とはいえ、「HUGっと!プリキュア」はまだ4分の1が終わったところなのですよね。それでいてこの密度。この先、どんな展開が待ち受けているのか、楽しみですよね。
(多分)夏ごろには新しいプリキュアも加入するでしょうし、個人的にはクライアス社のアルバイト「ルールー」ちゃんと、はなの妹のお友達「愛崎えみる」ちゃんが気になっています。お話に絡んでくると面白いな、って思いながら、毎週の放送を楽しみにしています。
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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