「キャラクターをどうやって三次元に連れてくるか」 BANDAI SPIRITSが挑む、次元を超えた“変態技術”(後編)(5/5 ページ)
「僕らはキャラクターを三次元に連れてくるために成形を使いたい。そこの差なんです」
「塗らなくていいプラモデル」が存在する意義
――しかし、ここまでやってあると「もう塗装しなくていいじゃん」という感じがありますけども、塗装する必要がないプラモに対してどうお考えでしょうか?
西村:僕自身が企画のコンセプトを立てる際の考え方としては、プラモデルというのはとても自由な遊びだと思っているんですね。プラモは好きに手を加えられる自由な商品なので、その中で「色を塗る」という行為は必須かどうかでいえば必須ではないと思います。別に塗らなくて満足ならそれでいいし、もっと楽しみたければ塗ればいいという感覚です。
――確かに、別に塗りたくなければ塗らなきゃいいですよね。
西村:ただ、塗らなくてもいいくらいまででき上がっていれば、技術レベルに関係なくそこまでは楽しめる。そこから先に行きたければ塗っても改造してもいい。最初から塗るのが前提になってなくて、塗料やエアブラシや筆を買わなくてもいいというのは、それだけで遊べる人の幅が増えると思うんです。逆に塗れる人は最初から色がついていようがなんだろうが塗ると思うんで。
「塗らなくてもいい」って言っちゃうと遊びの幅を狭めているように聞こえるかもしれないですけど、意図としてはそこから先の表現や遊びの幅を広げるための素地として、より遊びやすいものを提供しているつもりです。
――そうか、「塗ってもいい」わけですもんね。
西村:「塗らなきゃいけない」よりは「塗ってもいい」くらいのほうが、気が楽に遊べるでしょって感じですね。キャラやアニメが好きな人が広く遊べるものの方がいいよねと思うところがあるので。
――バンダイの成形技術に関して、今後やってみたいことってなんだと思いますか?
西村:表現の幅は広げたいですね。今回は「透け感を伴った深みのある肌の色を出す」ということに成功して、ひとつ商品が出せました。今度は色を表現するということのバリエーションを増やしたいです。グラデーションをつけるとか、肌色以外の透け色はできるかとか。今回の作りは肌色の表現に特化したものになっているので、ほかのものにそのまま応用できないんですよ。
――例えば同じことを髪の毛でやってみようとしても、そのまま使えるわけではないんですね。
西村:樹脂は溶かして流すものだという、成形の都合を全て踏まえた上で今回この仕上がりになるよう調整をかけているので。だからこの色以外のものを出そうと思うとまた一から調整が必要になるんです。そこの幅を広げていきたいですね。
今回のこの金型で実現できたのは肌の色の表現一点だけですけど、世にある塗装済みフィギュアではもっといろんな表現がされているんです。それが最初から部品の状態でできてて、ユーザーのスキルやロットのばらつきは関係なく同じ品質が出るというのを実現したいですね。
――モデラーがエアブラシや筆でやっていることを、金型レベルからやっていこうという話なんですね。
西村:モデラーさんたちがそうやって塗装するのはなぜかといえば、ひとつにはキャラクターのイメージがあって、それを三次元に起こしてくるための手法として塗装があるわけじゃないですか。僕らはキャラクターを三次元に連れてくるために成形を使いたい。そこの差なんです。
色のついてないものを塗装して楽しむのはそれはそれでいいんですけど、それとはまた別の手法を使って、たどり着くべきはみんなが大好きなキャラクターというのが理想です。
――ネットでは今回のフミナ先輩も「変態技術」っていわれてますけど、そのへん実際どうですか?
西村:褒め言葉だと受け取ってる時の方が多いかもしれないですね。想像の限界を超えたものを見た時の、感嘆符のような意味で言ってくれていると信じているので(笑)!
山上:いきなりこんなものを見せられて驚いているという感じかなあと思います。もちろん成形や金型の知識がある人はいろいろ想像するところがあるみたいで、業界の人は「こういう技術を使っているのかな?」といろいろ考えてくれているみたいなんですけど。そうじゃない一般のユーザーさんは一緒くたに「そういう技術なんだ」と思ってくれているのかなと。
西村:「どうやってできているのか分からない、すごい謎の技術だ」というニュアンスと、「なんでこんなことをしようと思ったんだ?」というニュアンスと、多分2パターンの意味がある気がしますね(笑)。
どちらにしても「思ってもみなかった」という意味で言ってくれている方がほとんどだと思うので、基本的にはいい意味で注目を集めることができたのかなと思ってます。頑張って作ったんで、それは素直にうれしいですね。
(了)
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