「常識的に考えて溶ける訳ないでしょ」　“焼き鳥とビールが水になる”痩せサプリ、販売会社が効能ないと認める（1/2 ページ）

　「ビールと焼き鳥の中にサプリを入れたところ全ての成分が水に変わってしまった」と、過激な広告を掲載しているダイエットサプリの販売会社社長が、ねとらぼ編集部の取材に応じ、「常識的に考えて溶ける訳ない」「広告代理店が勝手に制作したもので、僕には責任がない」と語りました。

「ビールと焼き鳥が水に変わる」GIFで話題に

　6月8日掲載の記事、「“シミがベリベリ剥がれるクリーム”はウソ　漫画村関与の代理店が偽装広告作成、販売元は『広告見たことない』 」で、広告代理店が“偽装広告”を制作していたとの内容を取り上げたところ、多数の読者から「ビールと焼き鳥が水に変わるダイエットサプリ」も怪しいとの情報が寄せられました。

　「ビールと焼き鳥が水に変わるダイエットサプリ」とは、ネットショップCが販売する栄養補助食品のこと（以下、サプリと呼びます）。広告では、透明なグラスにビールと焼き鳥、粉末のサプリを入れて焼き鳥の串をグルグルかき混ぜると、焼き鳥の肉が消失し、ビールが透明になっていく様子がGIF動画で紹介されています。

　同広告は、「有名トレーニングジムのR（実名ですが記事では伏せます）の幹部が、『これが世に出てしまったらうちが潰れてしまう…』そう、悲鳴をあげるほどのダイエットサプリ」と実在の有名トレーニングジムの名前を挙げて紹介。

　「飲むだけで-14.3kgをさせる衝撃の脂肪溶解テクノロジー」「医療特許を取得」「世界最先端の科学技術により寝ている間に脂肪を溶かす成分を配合している」としたうえで、「さすが世界のNASAの技術」「仮装通貨もそうだけど一見すると怪しいっていうものに手を出す勇気って絶対必要だね」と体験者らしき声も掲載していました（全て原文ママ）。

編集部で同じ実験をした

　前回の記事と同様、サプリに全く関係のない海外の人のダイエット画像を使用している、永遠に表示される「特別価格終了まで残り3名」など問題のある表現が散見される同広告ですが、やはり気になるのは「このサプリで本当に焼き鳥とビールが水に変わるのか」。ということで編集部で実際にこのサプリを購入し、実験を行ってみました。

　注文から数日後、無事に商品が届きました。開封してみると、錠剤が60粒入っており、広告で使用していたような粉末ではないことが分かります。早速ビールと焼き鳥をコップに入れて、すりこぎで粉末にしたサプリ2錠分を投入（1日2錠推奨のため）。広告と同じようにグルグルと焼き鳥の串を回してみました。数分間串を回し続けましたが焼き鳥は溶けず、ビールも透明になりません。またそもそもビールにサプリが溶け込まず、コップの底にはたくさんの粉末が残っていました。

　この他にも水にサプリを溶かしたものを用意して、編集部員の手を5分間漬けてみましたが、痛みなどを訴えることはなく、何の異常もみられませんでした。そしてこのときもビール実験と同様に、水にサプリが溶けず、水全体が黄土色に濁るという現象を確認しました。

　これらの実験から、サプリによりビールの色素が抜けることはないこと。サプリにより焼き鳥や肉が溶けることはないこと。サプリを水に溶かすと透明にはならず、全体が濁ることを確認しました。

販売元・製造会社の社長が「ビールと焼き鳥が溶ける訳ない」と回答

　編集部ではこの実験を受けて、販売店であるネットショップCについて調査を行いました。その結果、ネットショップCの運営会社・I社と、サプリの製造元・H社は同じ人物が社長を務めていることが判明。社長に取材を申し込みました。

　

――サプリの広告にあった「ビールと焼き鳥が水になる動画」についてお伺いしたいことがあります。

社長：広告については分かりませんので、動画も見たことがありません。ビールと焼き鳥が消えるっていう動画があるんですか。

――では今メールで広告のURLをお送りしますので、見ていただけますか。

社長：分かりました。

（メール送信）

――サプリを入れて焼き鳥とビールが水になっていますよね。サプリにこういった効能があるのでしょうか。

社長：ないんじゃないですか。こんな、ビールとか焼き鳥が溶ける訳ないでしょ。