1915年誕生「和文タイプライター」はいまだ現役だった! 日本の印刷を大きく支えた機械と人がつむぐ、103年後の言葉とは(5/5 ページ)
いまでも戸籍や司法書士の関係者には現役で使われています。
ワープロとパソコンが出て「タイプの時代は終わる」
――ワープロが出てきたとき、どんなことを思いましたか?
直志さん:ワープロが出たとき、「これは便利だな」って思いましたよ。
――じゃあ、あと何年か……とか、考えたりしましたか?
直志さん:うん。もうタイプの時代は終わってくるのかな、これは思ったよ。特にパソコンが出てきてからは、これからはこっちになるなって。
――和文タイプライター工業会など、当時「まだまだタイプの時代は続くんじゃないか」と考えていた所もあったようですが、そうは思っていなかったですか?
直志さん:いやそれは、だんだんと変わっていくとは感じていたよ。
ワープロの値段が一気に和文タイプを下回り、時代が終わった
そのあとは、直志さんが予感していた通りになりました。和文タイプライターを最初に発表し、長らく業界最大手として君臨した日本タイプライターも、ワープロの普及で1985年にキヤノングループのキヤノン販売の傘下に。
ワープロなどキヤノンのOA機器の販売が再建の柱で、「ワープロに押され、ワープロに頼り会社を立て直す」という、老舗としては極めて皮肉な形となったのです(現在はキヤノンセミコンダクターエクィップメントとなり、半導体露光装置メーカーになっている)。
それでも「タイプライター」の名前は外せなかった
いまお店の販売の主力はタイプライターではなく、9:1でパソコン。司法書士が書類を作成するパソコンソフトを、タイプライター時代のお得意さんなどへ売って生計を立てていますが、和文タイプライターへの気持ちはゆるぎません。
奥さん:もともと「○○タイプライター」なんて名前だったお店も、タイプを扱わなくなって、別の名前になってる。そのときにウチもどうしようかなと思ったけど、「タイプライター」の言葉を外すのは抵抗があって、今まで来ちゃったの。捨てられなかったんだね、名前を。それで生きてきたから。取れなかった。
直志さん:執着してんだ。ハハ。
奥さん:最後まで執着。
「和文タイプライターだけで生きてきたから」
――ご自身にとって、「和文タイプライター」という存在を一言で言うとなんですか?
直志さん:生活の「メシの種」だよ。長年信頼してもらってるお客さんがいたから、ここまでやってこれた。
――奥さんはどうですか?
奥さん:横でついていくだけ。子供を育てるために必死でしょう。結婚する前からタイピストで。同じタイプの会社で縁があって一緒になって。タイプライターひとすじですよ。
直志さん:よく飽きずに。
奥さん:朝から晩まで。
直志さん:これだけで生きてきたから。
(辰井裕紀)
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