補完が見事! 理想の二次創作! 解釈一致!!! なぜ人類はもっとアニメ版「美味しんぼ」の話をしないのか:マシーナリーともコラム
世界は大体「美味しんぼ」でできている。
バーチャルYouTuber、“マシーナリーとも子”による不定期コラム第2回。今回もお題は何にしようかと相談していたところ、「2~30年前くらいに出たゼットンのプラモがめちゃくちゃエモいので紹介したい」と提案されたので、今回は1988年から1992年にかけ放送された、アニメ版「美味しんぼ」の魅力について語ってもらうことにしました(ゼットンのプラモの話については読者の反応を見て検討します)。
なあ人類、もっとアニメ版「美味しんぼ」の話をしようぜ
ノン、教えられません。ソースの秘密だけは……。マシーナリーとも子よ。
人類のみなさんは最近なんか音楽関係の物理的な何かしら買いました? 最近は「配信しねぇ~なら買わなくていいか……」ってなっちゃいがちですよね。ストリーミングサービスも便利だしよ。私はと言うと9月上旬に再販された中村由真さんの「Dang Dang 気になる」のEP盤買っちゃったよ。前回再販されたとき買い逃しちゃったんだよな。
まぁ家にレコードプレーヤーないから聞けないんですけど……。ちなみに同曲はふつうにiTunesとかでも買えるので聞くだけならそっちを買うのがいいでしょう。当然この記事を読みに来たようなみなさんは既に買ってると思いますが……。
そういうわけで今日は「美味しんぼ」の話をしていこうと思います。世界は大体「美味しんぼ」「仮面ライダー」「アイドルマスター」「トランスフォーマー」などでできていますからね。
さて「美味しんぼ」というとインターネットの世界では「アンキモアンキモアンキモ!」で有名なファミコン版や「このあらいを作ったのは誰だァッ!」「山岡はんの鮎はカスや」「じゃあ死ねよ」などのエキセントリックなセリフなどが話題になりがちですが、ちょ、ちょ、ちょっと待ってみんな! なんでもっとアニメ版の話をしないの!? とマシーナリーとも子は疑問でした。
そう、「美味しんぼ」といえば一大ブームとなり同作をグルメ漫画の金字塔へと押し上げたアニメ版の話題が欠かせないはず! なぜインターネットではあんまり話題にならないのか!?(桑の実だ! MADとかあったけど)
まあつい最近(2年ほど前)まで視聴しづらかったのが原因なんでしょうね。分かってます。なんか90年代はしょっちゅう再放送されてた気がするんですけどね。まだクソガキサイボーグだったときはよく夕方に「美味しんぼ」と「ルパンIII世」の再放送やってた気がするわ。
そんなアニメ「美味しんぼ」なんだけど2016年に発売されたBlu-ray BOXの発売に合わせて現在Amazonプライムビデオで視聴可能です(※編注:2018年9月現在。Netflixやhulu、GYAO!などでも見られます)。やったな。こんなコラム読んでないで今すぐ見ろ。いや、マジでアニメ「美味しんぼ」最高なんですよ。「ミスター味っ子」のアニメみたいに演出がブッ飛んでる!!! みたいなハデさはまったくないんだけどとにかく原作の拾い方がていねいで純粋にとても質の高いアニメ化となっていて、原作を読み込んでいれば読み込んでいるほどうなる出来なんだよな。
補完が見事!! 理想の二次創作!! 解釈一致!!!!
例えば初期の名作「そばツユの深み」(2巻第3話)について原作とアニメを見比べてみると……。
そばの屋台の無許可営業をしていた店主が営業許可証を得るために奮闘するというお話。この店主、素人に毛が生えた程度のそば好きなんだけどなかなか凝り性でそばは手打ちの生の十割そばを使用。水洗いの際も水道水だけでなく井戸水を使うなどそばへの愛が垣間見える。
だがそんな愛あるそばにも欠点があることに気付く山岡。香り高いそばに比べてツユの味が弱いらしいんだよな。
その後公権力(編注:中松警部)が介入。屋台の無許可営業は許せねえ、だけどそばの屋台を出すのは許せる!! という独自の理論に基づきうまいそばを出せば許してやろうと譲歩が提案される。
完全に余談ながら譲歩を提案した中松警部は居合の心得もあり、彼に斬られたものは痛みも感じることすらできないだろうと師に太鼓判を押されるほどの実力者。超能力者クリス・ヴォーンと並んで『美味しんぼ』最強キャラクターの1人と目されている。
すったもんだの末、浅草の一流そば屋のレシピを知ることができた店主は見事、中松とのそば勝負に勝利。営業許可証を得ることができる……というのが本エピソードのあらすじなんだけど、これがアニメ版だとどうなるか。
店主の屋台に山岡と栗田が偶然立ち寄り、そのこだわりに驚くという流れは同じだが……。
なんとそばを井戸水で洗うパートで突然、
「こいつは明治神宮御苑の中にある清正の井戸って由緒正しい水なんでさ!」
「なんでもあのあたりは昔加藤清正の屋敷があったとかでその頃からの井戸らしいんで!」
――と井戸水の出典を述べ始めます。どうした???
さらに圧巻なのはその後。山岡がそばツユの味がそばに負けていると気づいたシーンが……。
絵作りが良すぎる。どうした??????????(永久に見ていたいのでGIFアニメを作りました)
揺れた水面が落ち着いて山岡の顔が映り、猪口(ちょこ)を手にすると再び水面が揺れ、猪口が持ち上げられるとともにカメラは徐々に猪口から山岡へとその対象を移す……。
よ、良すぎる!!! そばツユの味が弱いということを伝えるのに全力を費やしすぎている!!! アニメ版山岡が原作初期のハードボイルドな雰囲気を残したまま適度に人当たりがよくなってめちゃめちゃカッコいいのと井上和彦さんの熱演も相まってこのそばツユカメラグルリのシーンは圧巻です。
その他にも原作エピソードの補完がめじろ押しなのがアニメ「美味しんぼ」の醍醐味。原作では基本的にそば屋の屋台と浅草の一流そば屋しか出てこないお話なのですが、アニメ版では店主の家を山岡が訪問して相談に乗るシーンや、会社の人間にそばを振る舞うシーンなどが追加されているほか、エピローグも新たに追加されているなど非常に充実したエピソード補完が盛り込まれており、物語に厚みを持たせているんだよな。この補完具合は原作を読み込んでいるオタクであればあるほど泣ける!
冷静に考えると「アニメにしたら尺が足りなかったんだろうな……」という気もしてくるんだけど、単に尺稼ぎと思わせない心配りが行き届いた補完が見事!!! 理想の二次創作!!! 解釈一致!!!! という感じで胸が熱くなる。人の心を感動させるのは材料や技術ではなく人の心。海原雄山が言ってた通りだ! 私はサイボーグだけど。
「骨髄カレー」などところどころ欠番があるのが惜しい
その他、原作では山岡にヘコまされる登場人物のフォローが効いてる回なんかもあって、例えば山岡が「この豚バラ煮込みは出来損ないだ、食べられないよ」と吐き捨てて楽しい外食を台無しにしてくれるシーンが有名な「手間の価値」では、山岡に完全敗北した中華料理屋の店主が失意のまま去っていってしまう。
ですがアニメ版ではひとしきり山岡にヘコまされて去っていく店主がフッと振り返り、「次に来てくれたときは中国3000年の伝統の味、味あわせてあげるヨ!」と笑顔で語って去っていく……。山岡さんたちも笑顔。みんな笑顔。と手厚いフォローで爽やかな視聴感を与えてくれる。原作のエピソードは死ぬほど読んでいたので、正直このフォローで半泣きになってしまいました。悠久の時を生きてきたけどまさか「美味しんぼ」のゲストキャラのイヤな店の親父に泣かされることがあるなんて思わなかった。『美味しんぼ』原作厨は絶対にこのアニメ化は見ておいてくれよな。
そんなアニメ版「美味しんぼ」ですが、残念ながら配信版ではけっこうな数のエピソードが削られてしまっている。牛の骨髄をカレーの具にする回、スクランブルエッグとハンバーグとカレーとトンカツしか食えない男が登場する回、捕鯨回、ババアのボケが水炊きで治る回……など。
まあ勘のいい『美味しんぼ』原作厨のみなさんならお気付きだとは思いますが、どれも「いま食うのはまずいやろ」「それは政治的にアレやろ」「メーカーから怒られたんやろ」などの「怒られが発生してそうな回」が欠番になっている。惜しい。じつに惜しい。とくに骨髄カレー回なんかは昔再放送で見た記憶では「原作では登場しなかったゲストキャラの積年のライバルが登場して半分以上アニメオリジナルエピソードが盛られてる」みたいなめちゃめちゃいい回だったのに……!
そんな大量の欠番回ですが、幸いなことにBlu-ray BOXでは視聴可能です。マジか! すごいな。ウルトラセブンですらそんな商売の仕方してないぞ。なのでみなさんは究極のアニメドラマ「美味しんぼ」のBlu-ray BOXを買って見ましょう。
あ……そうそう。「美味しんぼ」とはあんまり関係ないんだけど先日マシーナリーとも子のスマホアプリゲーム(iOS / Android)がリリースされたので人類のみなさんにもお伝えしたい。ぜひ遊んでくれよな。
というカンジに最後は宣伝をしまして終わりたいと思います。今年もよろしく美味しんぼ。
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識者の意見や編集部の見解を述べている。「美味しんぼ」の“福島で鼻血”描写、編集部が最新号についてあらためて見解を掲載
「因果関係について断定するものではない」とコメント。大阪府と大阪市が「美味しんぼ」の記述について抗議 「そのような状況は認められない」
作中の記述にあるような状況は認められない。事前の取材も一切受けていないと反論。「断固容認できず、極めて遺憾」 福島県、「美味しんぼ」について見解を発表
「作中に登場する特定の個人の見解が、あたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない」との危惧を示している。「美味しんぼ」問題に環境省動く 「放射線被ばくが原因で、住民に鼻血が多発しているとは考えられません」
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5月19日発売号と同誌のホームページ上に特集記事を掲載します。「美味しんぼ」に「風評被害を招く」と批判 スピリッツ編集部がコメント
「綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載させていただきました」と編集部。
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