漫画家ってどんな食生活? 『響~小説家になる方法~』作者の執筆現場を取材、大ファンという“けやかけ”話も:漫画家メシ
“漫画家はどんなご飯を食べて執筆に励んでいるのか”に迫る「漫画家メシ」。
“漫画家はどんなご飯を食べて執筆に励んでいるのか”に迫る「漫画家メシ」。初回となる今回は、漫画『響 ~小説家になる方法~』の作者、柳本光晴先生の食卓にお邪魔してきました。アシスタントさんが作る絶品料理から柳本先生が大好きだというバラエティー番組「欅って、書けない?」のことまで、普段は聞けないお話を伺ってきました。
2014年から小学館『ビッグコミックスペリオール』で連載中の漫画『響 ~小説家になる方法~』。
出版不況にあえぐ文芸業界に、圧倒的な才能を持つ15歳の少女、鮎喰響(あくいひびき)が現れたことをきっかけに次々と事件が巻き起こる――というストーリーで、「マンガ大賞2017」「第64回小学館漫画賞」を受賞した他、2018年には欅坂46の平手友梨奈さん主演で実写映画化され大きな話題を呼びました。
第1回:柳本光晴の食卓
そんな『響』の作者、柳本光晴先生は普段一体どんなものを食べているのか――。お伺いしたのは、都内にある柳本先生の仕事場。フィンランドを代表するアーティストが作り上げたガラスアート「イッタラバード(トイッカバード)」やアンティークの食器などがディスプレイされている、とてもオシャレなお部屋です。ドアを開けると柳本先生の愛猫“にゃー”ちゃんがお出迎えしてくれました。
――漫画家の方の生活ってすごくミステリアスなのですが、柳本先生は普段どんなものを食べて『響』の執筆に臨まれているのでしょうか。
柳本:アシスタントさんが作ってくれるものを食べています。漫画家さんの食事ってできあいのお弁当だったり外食だったりが多いといいますが、うちのアシスタントさんが作ってくれるお料理は毎回おいしいし、栄養バランスも良くて、すごく恵まれていると思います。
――アシスタントさんは何人いらっしゃるんですか。
柳本:男性1人、女性2人の3人で、みんな絵がうまいです。今日来てくれている吉田さんはアシスタント募集掲示板がきっかけでお仕事をお願いすることになりました。来てもらったときから「お料理もお願いできればありがたいです」という感じでお話していたと思います。
吉田:アシスタントになった当初は、お料理が全く出来なかったんです。それまで実家暮らしだったこともあって、本当に簡単なものしか作れませんでした。
柳本:でも最初に作ってくれたものからおいしかったですよ。
――吉田さんが柳本先生に最初に作ったものは何でしたか。
吉田:忘れもしないですけど、「パイナップルを豚肉で巻いたやつが食べたい」って言われて(笑)。
――パイナップルを豚肉で巻いたやつ。
柳本:そう。そのとき「パイナップルが食べたいなぁ」と思ってね。
吉田:でもパイナップルをご飯のおかずにする習慣ってないじゃないですか。だから「何言ってるんだろう」と思いました(笑)。
――最初の注文がパイナップルとはかなりエキセントリックですね(笑)。先ほど、最初から「お料理もお願いします」というスタンスだったとおっしゃっていましたが、そうなったのは何かきっかけがあったのでしょうか。
柳本:吉田さんの前に来てくれていたアシスタントさんがお料理をしてくれる方だったので、その影響ですね。そのアシスタントさん自身も僕もコンビニのお弁当とかに飽きてしまっていたので、「作る時間があるならやります」と申し出てくれて。僕の方も作ってもらえたらありがたいなぁと思ってお願いしました。
でも最近は新しく来てくれたアシスタントさんにお料理をお願いするのって、一歩間違えたら「私が女性だからお料理しろってことですか」みたいなことにもなりかねないので、吉田さんに最初にお願いするときはすごく気を遣ったのを覚えていますよ。「ねぇ、お料理とかってする?」「全然しないです」「あぁそう。してみるのってどう?(いやじゃない?)」みたいな(笑)。幸い吉田さんにはご賛同いただけたので、今に至ります。
――恐る恐るのお願いだったのですね。
柳本:そうですね。でも吉田さんもすごく真面目なので、なんでもしっかりおいしく作ってくれて。本当にありがたいです。
吉田:でも時々失敗もありましたよ。例えば「ムニエル」とか。
柳本:あ~、ムニエルね!
吉田:今もうまくいかないことがあるんですけど、焼き上がりがべちゃべちゃになっちゃうんですよね。カリッとふわっとしないっていうか。結構簡単なはずなんですが、多分苦手料理なんだと思います。
柳本:でも「まずい」と思ったことは一度もないですし、基本的に何を作ってくれても本当においしいですよ。例えば漫画みたいに塩と砂糖を間違えるなんてこともないしね(笑)。
吉田:塩と砂糖を間違えたらそれはもうわざとですよ(笑)。
――最近は柳本先生のInstagramにもお料理がアップされていますよね。いつも楽しく拝見しています。
柳本:Instagramは2018年の8月ぐらいから始めたんですが、きっかけはまさに「アシスタントが作ってくれるお料理を自慢したい!」という気持ちからだったんですよね。漫画家に限らずこんなおいしいものを毎日食べられている人は少ないだろうし、他の漫画家さんとかにも自慢したいなぁと思ってこっそりと投稿し始めました。
吉田:ひどい話なんですが、隠れて投稿しているから私は柳本先生のInstagramアカウントがあるっていうのを最初は知らなかったんですよ(笑)。
柳本:いやぁ、なんて言っていいのか分からないけど、本人に「君のこと世の中に自慢するから」って言うのもあれだからと思ってコソコソしていたら、「私の料理の写真が世間に出回っているって本当ですか?」と問い詰められちゃって。
吉田:いやだって、ギャグですよ。ここに勤めているのに、よそから先生の情報を知るって何!? っていう(笑)。
柳本:お友達から聞いたんだよね、インスタのことは(笑)。やべぇ、バレたと思いました。
吉田:インスタ投稿が発覚してから本格的にランチョンマットを導入したり、お箸をきれいに並べたり、“映え”も意識し始めるようにもなりました。
柳本:でも一般の主婦の方とかの投稿を見ていると、“毎日パーティー”みたいな画像も多くてビックリしますね。うちの写真はリモコンとかティッシュとかガンガン写り込んでいるんですけど、あぁいうのを見ると「こういう写真がインスタ映えか!」と勉強になります。でもあくまでうちは職場なので、飾りすぎないのが良いのかなと思いますね(笑)。
――これまでにはどんなものを作られましたか。
柳本:これ食べたい、と伝えたらだいたいなんでも作ってくれますよね。
吉田:ナンカレーとか、お好み焼きとか、すき焼きとかいろいろ作っていますね。でも唯一正解が分からない料理があるんですよ。ビーフストロガノフなんですけれども。
柳本:あれは奥が深いよねぇ。
吉田:基本的には「これ食べたい」って言われたのをクックパッドで検索して、1番人気のレシピで作るようにしているのですが、ビーフストロガノフに関しては、フォンドヴォーを使うパターンもあるし、仕上がりが黒っぽいのもあるし、サワークリームを入れるものもあるし、作り手によってかなりレシピが違うんですよ。あれはちょっと極めたいです。
――まずビーフストロガノフが職場で出ているっていうことに驚きました(笑)。一番人気のメニューはなんですか。
吉田:タコライスですね。
柳本:あれは初めて作ってもらったときに2人で感動したよね。「あれ、なにこれすげぇおいしいぞ!」ってなって。
吉田:ちょっと料理ができるようになってきてから、「これはカフェに出してもいける」みたいな“認定メニュー”を決め始めたんですが、それの第1号認定が「タコライス」でした。見た目も最高に良いですし。
――またインスタに載せてほしいです。ちなみに好き嫌いはあったりしますか。
柳本:オクラとか納豆とか、ぬるぬるしたものだけは避けてもらうようにお願いしていますが、他には特にないですね。でもデスクワークなので、太ることを気にして野菜は多めでお願いしています。運動もしないですし、本当に動かないからすぐ太っちゃうので、お料理でカロリー制限するしかないんですよね。
――なるほど、身体は資本ですからね。と、そうこうしていたら、お料理ができあがりました! おいしそう……!
吉田:今日は温玉の乗ったカルボナーラと、タコのサラダ、いちごです。タコのサラダの方はナッツを砕いて散らしてあります。いつもこんな感じで18時から作り始めて19時にはご飯が食べられるようにしているんですよ。
柳本:本当は「めちゃくちゃキメキメのお料理にしようか」、とも相談していたんですが、「やっぱり普段通りが一番いいよね」ということで、カルボナーラにしてもらいました。
――最高のまかないだと思います!
最近「けやかけ」で土生ちゃんが活躍していてうれしいんですよ
――柳本先生には、2018年の8月にも取材させていただきました。あのときはちょうど映画「響 -HIBIKI-」の公開前でしたね。
柳本:そうそう、そんな時期でしたよね。主演の平手友梨奈さんとは『スペリオール』の企画で1度対談をして、試写会でもう1回お会いしました。あちらがすごく緊張していらしゃって、あんまりお話はできなかったんですけれども、一緒にお写真を撮ってくれたんですよ。
- 「平手さんも響も、ウソがつけない人」 漫画『響 ~小説家になる方法~』作者が語る平手友梨奈と主人公の魅力 (2018年8月1日掲載)
――お写真を……! 改めて平手さんが鮎喰響を演じたことについてどう感じていますか。
柳本:映画「響」は平手さんの作品だなと思っています。将来どうなるかは分かりませんが、もし平手さんが女優さんの道に進むということになったとして、そのお手伝いをちょっとでも『響』ができたのだとしたらうれしいなと思います。
――欅ファン仲間から「これだけは聞いてきてくれ」と頼まれた質問があります。作中、フィンランドから帰国した響が髪をバッサリ切ってショートカットにしましたよね。あれは平手さんと何か関係があったりしますか。一部では響が髪を切ったタイミングで平手さんも髪がちょっと短くなっていたなんていうお話もあるんですが。
柳本:それはね……全く関係ないです(笑)。なんか急に「響の髪切ろうかな」と思って短くしただけなんですけれども、ひょっとすると響と平手さんが何かシンクロしたのかもしれないですね。特に意味はないけど、そういう時期だったのかもしれません。
――欅坂46といえば、前回の取材時には「欅って、書けない?」(テレビ東京系)を毎週欠かさずに見ていらっしゃるとお話されていました。
柳本:今も毎週楽しみに見ていますよ、けやかけ。最近は土生ちゃん(土生瑞穂さん)が番組内で活躍してくれていてうれしいです。そういえば欅も2期生が入って、体制が新しくなりますね。メンバー紹介企画も楽しみにしています。
――元銀行員の松田里奈さんなど、個性豊かなメンバーが入ってきましたね。
柳本:一気に9人加入ってすごいですよね。例えば男性のアイドルグループとかってメンバーが減っても増えることはないじゃないですか。でも女性のアイドルグループだと、どんどんメンバーが入れ替わっていく。不思議なシステムですよね。
(嵐ファンの)吉田:男性グループだと、そういうのはないですもんね。女性グループならではの文化だと思います。
――確かに。けやき坂46も日向坂46に改名しましたが「ひらがな推し」も見ていらっしゃいますか。
柳本:見ていますよ。楽屋隠し撮りで2期生がはしゃいでいたのに、1期生が帰ってきた途端にめちゃくちゃ静かになるやつとか面白かったです。けやかけもがな推しも面白いから、もっと見たいなぁって毎週思います(笑)。
――そろそろお時間が来てしまいました。3月8日発売の『スペリオール7号』では、『響』が連載100回を迎えます。最後に今後の展開など一言をお願いします。
柳本:『響』に関してはそのときそのときに「お話が面白くなるように」ということと、「その作品の世界」に任せて展開を考えています。だから正直どれだけ続くのかも分からないし、自分自身予測不能ですが、これからも多くの人に読んでもらえる作品にしていきたいです。最後に一言……そうだな。(推しメンの)原田葵さんが帰ってきてくれるのを楽しみに待っています(あれ、ひょっとしてそういうことじゃない?笑)。
取材後記
今回は柳本先生とアシスタントさんのご厚意により、聖域ともいえる仕事場を見せていただくことができました。アシスタントさんの絶品まかないの効果もあって、2年前から担当している編集さんいわく、「体形が変わっていない」という柳本先生。今回もどんな質問にも笑顔で気さくに答えてくださるのが印象的でした。現在タピオカブームが絶賛到来中とのことなので、今度はお返しにおすすめのタピオカドリンクを差し入れたいと思います。ありがとうございました!
おまけ
(Kikka)
関連記事
「平手さんも響も、ウソがつけない人」 漫画『響 ~小説家になる方法~』作者が語る平手友梨奈と主人公の魅力
柳本先生の「涼太郎は理想の彼氏像」発言に平手さんもビックリ。冷徹な表情にゾクッ……! 平手友梨奈、初主演映画「響」の“てちキック&てちビンタ”が無限ループ動画に
平手のそれは右上段膝蹴りから始まった。それとはすなわち――。欅坂46「不協和音」「サイマジョ」はどうやって誕生したのか 作曲家「バグベア」に聞く“ヒットの裏側”
「サイレントマジョリティー」「不協和音」などの作品で知られる「バグベア」に「作曲家になる方法」などを聞きました。ロケ地探訪:欅坂46「避雷針」ロケ地で「ここにあるのは愛の避雷針」してきた! 東京・山梨を巡る壮大な聖地巡礼
【動画&画像】東京と山梨、それぞれのロケ地を巡ってきました。ロケ地探訪:全てはここから始まった 欅坂46「サイレントマジョリティー」MV撮影地、渋谷でたどる21人の足跡
「サイレントマジョリティー」から『21人の未完成』まで渋谷のロケ地を一挙紹介。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.