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この枠でしかできないことがある――「モテキ」や「ヨシヒコ」のテレ東深夜枠「ドラマ24」、ブレない“核”とドラマの可能性(2/2 ページ)

予算はない。夢はある。

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低予算でも面白いものを作りたい――貫く姿勢がもたらしたドラマの可能性

――視聴者だけでなく、作り手側からも支持されるようになったんですね。

阿部CP: それまでも優秀なクリエイターの方が作品を作ってくださっていたんですが、20作目からぐっと変わって、「みんな!エスパーだよ!」の園子温監督や、「勇者ヨシヒコ」シリーズの福田雄一監督、その他、映画系の監督が「うちでやりたい」と言ってくださるようになりました。挙手していただくこともありますが、「他の局だとできないですけど、うちだったらできます」と口説いて、監督が決まるとそれに伴って出てくださるキャストの方も増えていくんです。相乗効果というか。でも、予算は2005年から変わっていないんです。


園子温さんが監督を務め、2015年に映画化
(C)若杉公徳/講談社(C)「みんな!エスパーだよ!」製作委員会
販売元:東宝

――予算変わっていないんですか!? 驚きました。少ない予算でそれだけ監督やキャストが豪華だと品質を保つの大変そうです……。

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阿部CP: 通常のドラマに比べると4分の1程度なのでかなり大変です。なので、「うちはこれだけしか出せないんです」という予算を先に提示し、台本を組む段階で箱(撮影場所)を減らしたり、スタッフ編成をコンパクトにしたり、撮影期間も短くしたりと削れるところは削ります。でも、通常、こんな価格では出てくれない人が、「面白いことができるならやります、出ます」と言ってくれる人がやっぱりいて。そういう意味では、ドラマ24はブランディングされたんだと思います。

――他ではやれないことができるクリエイティブな場になっていったんですね。昔と比べて表現の自由などに変化はありましたか?

阿部CP: ゴールデンに比べたら緩い方ですが、ある程度の制限はありますね。今、深夜1時35分から始まる遠藤憲一さん主演のドラマ「さすらい温泉 遠藤憲一」をドラマパラビでやっているんですが、肌色成分が多いとダメなんですよ。でも攻めてバックショット撮ったりしてますよ。

 ドラマだけじゃなくて公式サイトもやっぱりダメで、公開前のリリース段階では、大勢の女性が温泉に入ってる写真を掲載していたんですが、さすらい温泉のサイトが原因で、テレビ東京全部のサイトが凍結される可能性もあると言われ……そんなでっかい話になっちゃうのかとびっくりしました。僕も怒られたくないので、今は規制をかけて掲載してます(笑)。

――昔は女性の裸もたくさん出ていたイメージですが、かなり印象が変わりました。
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阿部CP: でも、まだやりようはあるなと思っていて、「孤独のグルメ」だっておじさんが飯食べてるだけなのに、あれだけ人気コンテンツになるということは、何か視聴者の五感に訴えるものがあるのかなと、1つヒントにはしています。

「たった1人の人でも救えたら」ドラマはまだ面白くなれる

――今後の展望はありますか?

阿部CP: 今は当時と違って、別のテレビ局含め、テレビ東京でも平日の深夜にドラマ枠が幾つかありますし、「ドラマ24だからできる」ということでもなくなってきています。でも、ある程度制限はありますが、うちの局だけでいうと、上層部の目に届きにくいのでまだ好きなことが比較的できるかなと思っています(笑)。これだけブランド化もされたので、出たい、やりたいと言ってくださる人もいますし。最近は大ヒットが出ていないかなとも思っているので、チーフプロデューサーとしては深夜から始まって映画化するような作品選びをしたいです。


福田雄一監督の「ヨシヒコ」シリーズは2017年にフェスも開催される人気に
(C)勇者ヨシヒコと魔王の城」製作委員会
販売元:東宝

(C)「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」製作委員会
販売元:東宝

同じく福田監督の作品で、ギャラクシー賞テレビ部門9月度月間賞に選出された
(C)島本和彦・小学館/「アオイホノオ」製作委員会
販売元:東宝

 そのためには物語性が強くないと広がらないような気もしますし……まだあまり決めてはいません(笑)。ただ、テレビというメディア自体、時代に寄り添うものだと考えているので、今はまだそんなに堅苦しいものは求められていないのかなぁと。バカバカしいものをやってみてもいいかもしれませんし、各局、ラブストーリーとかやらなくなったじゃないですか。だからしびれるようなラブストーリーをやってみてもいいかもしれないです。

 そういう意味では、“王道ラブストーリー”を貫いた「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)の衝撃はすごかったと思います。あれを男性キャスト同士で描くという目の付け所が僕らにはない発想だったなと。プロデューサーの貴島彩理さん、お若いのにすごいですね。

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――まだまだドラマは可能性がありそうですね。最後に、ドラマは視聴者にどんな存在であるべきだと思いますか?

阿部CP: もちろん、視聴率が取れたら嬉しいですけど、そうじゃないところでたった1人の人でも「救えたらいいな」と思います。

 2018年の正月に、中井貴一さん主演のドラマ「娘の結婚」という男手ひとつで育てた父娘の話で、自分がやりたかったホームドラマが作れました。幾つか賞も頂いたんですが、それよりも、「昔あったドラマを見ているかのようで、現代にも寄り添って作られていて心に染みた」とか、「あらためて親子関係を見直せました」とかそういう声が聞こえて、作って良かったなと思いました。

 いい話だから救えるのはもちろんですが、面白いから救える、感動させられるから救える、見たことないものだから救える、そういう可能性がドラマにはあります。

 テレビ東京は他のテレビ局に比べると後発なので、僕らは常に「他がやらないようなことをやろうよ」という気持ちでやっています。どの枠でも同じことを思っているのですが、ドラマ24はその考えから始まっているので、特にその思いが強い。その思いを視聴者のみなさんが汲み取ってくださっているのかなと思います。

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