ゴールデンタイムに放送されるドラマと比べ、自由度が高く、攻めた作品を多く輩出する独自の姿勢が支持を集める深夜ドラマ。その中でも、テレビ東京の連続ドラマ枠「ドラマ24」は、「モテキ」や「孤独のグルメ」シリーズ、「勇者ヨシヒコ」シリーズなどヒット作を生み出す人気の枠です。
1月に、漫画『大奥』『西洋骨董洋菓子店』などで知られるよしながふみさんの『きのう何食べた?』(4月スタート)の実写ドラマ化が発表されると、原作ファンも納得のキャスティングが話題を集めた他、「ドラマ24、相変わらずセンス抜群」「テレ東のドラマ24枠だからクオリティは期待できそう!」など同枠への高い信頼をうかがわせる声が続出。なぜ、“ドラマ24”は視聴者の欲求を満たすのか、チーフプロデューサーの阿部真士さんにお話を伺いました。
「ドラマ24」のブレない核
――『きのう何食べた』実写ドラマ化で話題になっていました。決定にはどんな背景があったのでしょうか?阿部チーフプロデューサー(以下、阿部CP): ドラマ化するにあたって、以前から、僕も含め局内のプロデューサーたちで利用許諾を取りに行ったり、他の局も動いていたりしたんですが、よしなが先生のキャスティングへの強いこだわりがおありで、企画の着地までは至っていませんでした。そんな中、今回の制作会社の松竹さんがプロデューサーの松本拓と組んで、「西島秀俊さん(筧史朗役)が出演してくれそうだ」ということになってから、一気に動いた感じでした。
『きのう何食べた?』ってもう10年ぐらい前からあるじゃないですか。男性が読んでも面白いし、僕の母親世代も連載中に読んでいたので、男女問わず、幅広い世代の人に刺さるんじゃないかなと。ドラマ化には時間がかかりましたが、キャスティングにはよしなが先生も大喜びされていてよかったです。
――「実写なんだし、何もこんなに似せなくても……」とおっしゃっていましたね。現在はデリバリーヘルスを題材にした「フルーツ宅配便」が放送中ですが、ドラマ化する作品はどのように決定していますか?
阿部CP: 「フルーツ宅配便」はデリヘルを舞台にした漫画原作ですが、性的な描写は一切なく、むしろデリヘルで働く女性の背景がテーマの人間ドラマです。コミックスの1巻が発売されるやいなやプロデューサーの濱谷晃一が原作権をおさえて、会社に提案しました。ただ、題材が“デリヘル”なので、「地上波のドラマとしてどうなのか?」と社内を説得するのに難航したようです。
それでも、濱谷が諦めずにすごくやりたがり、「孤狼の血」の白石和彌さんや「南極料理人」の沖田修一さんといった気鋭の映画監督を口説いてきて、さらに俳優の濱田岳さんも口説いて、ようやく会社も企画にGOサインを出しました。たぶん執念ですね、あれは。企画提案から放送まで2年半かかったと聞いています。
――2年半! 他の作品も同じく?
阿部CP: 2年半は長い方だと思います。もちろんそうではないケースもありますが、プロデューサーが“この人とやりたい”と思ったときは相当時間をかけてやるんです。僕も、「野ブタ。をプロデュース」や「Q10」を手掛けた脚本家の木皿泉さんと、Perfume初主演のドラマ「パンセ」を2017年に2夜連続でやりましたが、あのときは神戸に住んでいる木皿さんのところに何度も通って、関係を築いて、ようやくという感じでした。そのときも3年くらいかかりました。
――阿部さんも執念ですね……。作品を決めるときの“核”になっているものって何なのでしょう阿部CP: 昔と今でだいぶ変わってきている印象があります。ドラマ24は2005年に北川弘美さん主演でキャバクラを舞台にした「嬢王」というドラマから始まったんですが、当時は、テレビ東京のドラマ部自体、連続ドラマの下地がほぼなかったんです。
そんな中で40分の枠をやろう、という話になったときに、そんなにいいキャストは出てこない。前例がないから。それでも、やるなら面白いことをやりたくて、エッジのたったもの、刺激のある目立ったものというテイストのものをずっと低予算でやってきました。
予算は少ないですが、他に左右されないスタイルでやっていたら、“この枠でしかできないことがある”と逆にキャストの方や監督が「やりたい」と言ってくれるようになったんですよ。その転機は、やはりドラマ24の通算20作目となった「モテキ」(2010年放送)だったと思うんです。
大根仁さんが脚本/演出を担当してくださった「モテキ」あたりから、それが映画化にもつながったりして。ドラマ24というほぼ更地から生まれた深夜枠が「もっといろいろできるんじゃないか」とドラマの可能性を広げていったんです。
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