スパイダーマンに役者として高めてもらった―― 映画「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」ピーター・パーカー役、榎木淳弥インタビュー
榎木淳弥さんにとって「スパイダーマン」とは?
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)におけるスパイダーマンの新シリーズとして華々しくスタートを切った映画「スパイダーマン:ホームカミング」(2017年)の公開から約2年。第2作目となる「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」が6月28日、世界に先駆けて日本で最速公開されました。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)の壮絶な戦いの直後から始まる今作では、夏休みのヨーロッパ旅行を楽しむピーター・パーカー/スパイダーマン(トム・ホランド)の前に、突如として「エレメンタルズ」と呼ばれる怪物が出現。高校生らしい夏休みを満喫したいピーターですが、異次元の地球から来たというヒーロー、クエンティン・ベック/ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)や、元S.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)らによって戦いに巻き込まれていき――と、トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)がいなくなってしまった世界で、強敵に立ち向かっていく姿が描かれます。
そんなピーターの吹き替えを演じているのが、「この音とまれ!」の倉田武蔵や「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」のパンナコッタ・フーゴなどで知られる声優の榎木淳弥さん。ねとらぼでは、公開を直前に控えたタイミングで榎木さんへのインタビューを敢行。今作の見どころから、演技への思いに至るまで話を伺いました。
スパイダーマンが体になじんできた
―― 「スパイダーマン:ホームカミング」から約2年ぶりの続編ですね。今の率直な気持ちを教えてください。
榎木 続編が決まって良かったなと。こうやって2作目に出させてもらえるというのは、応援してくださる皆さんがいるおかげです。僕は吹き替えという本当にちょっとしたことしかできないですけど、作品に関わっている一員として、またピーターを演じられて本当にうれしく思います。
―― 前作のピーターはアベンジャーズとして認められようと背伸びする姿が描かれましたが、今作ではヒーローをお休みして夏休みを満喫したいという学生らしい一面も見られました。演じ分けは意識されましたか?
榎木 俳優さんの演技から逸れずにやれば自ずとそういう姿は出来上がっていくと思っているので、演じ分けというのはあまりしていません。「アベンジャーズ/エンドゲーム」後の世界で、アイアンマンを失ったトラウマというのが、この「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」からも感じられるので、“元気にやっているんだけど、ちょっと心の中に引っ掛かりがある”という部分はトム・ホランドさんの演技に沿いながら気を付けて演じましたね。
―― 「スパイダーマン:ホームカミング」の頃のインタビューで、「もとの俳優さんに寄り添ったお芝居をしないといけない」、その上で「その表現を超えたい」と答えられていましたが、今作の中で超えられたと感じたシーンはありましたか?
榎木 それはやはり自分で決めることではないと思うので、見てくださる方がいいなあと思ってくださるのが一番です。演技については、日本語で表現するのと英語で表現するのはちょっと違うと思っていまして。もとの俳優さんがそこまで大きく表現していないところでも、日本語の場合には大きく表現した方がケレン味があるというシーンもきっとあるなと。引くところは引いて、出すところは出すというのは意識して演じました。
―― 前作「スパイダーマン:ホームカミング」ではピーターと心情が重なり、号泣しながらの収録となりましたが、今作でもシンクロを感じたシーンはありましたか?
榎木 だいぶスパイダーマンを演じさせていただいているので、体になじんできたといいますか、意識しなくてもスパイダーマンになれるようになってきています。すごく集中しようとしなくても、リラックスして役に入れるようになったかなと。ですので、見ている方もより自然に、声などを意識せずに見ていただけるような出来になっていたらいいなと思っています。
―― 収録時の印象的なエピソードはありますか?
榎木 セリフは台本から変わったりしましたね。より若者らしい、高校生らしい言い回しになったり。吹き替えのセリフを変えるって、あまりないことなんですよね。元が日本で作っているものではないので、あまり変えちゃいけないのかなと思っていたんですけど、このスパイダーマンの現場に関しては、“日本語としての作品が良くなるなら変えても構わない”というスタンスなので、そこはどんどんディレクターさんたちが変えてくださって、すごくやりやすかったですね。「ホームカミング」のときは、僕が提案したセリフを採用してくださったこともありました。
―― 榎木さんが考える今作の見どころは?
榎木 今回は「ホームカミング」のときよりも、さらにアクションシーンがパワーアップしています。旅先のさまざまなシチュエーションで戦っていくんですが、ウェブシューターをいろんな風に使ったり、肉弾戦も結構多かったりして。あと敵が「エレメンタルズ」というかなり巨大な存在なので、それに対して飛び回って戦うシーンだったりとか、アクションシーンがかなり面白い出来になっていると思うので注目してほしいですね。あと、MJとの恋愛も今回の見どころの一つになっているので、アクションと恋愛とどっちも楽しめるんじゃないかなと思います。
役者としての代表作に
―― 過去のインタビューで「常に自分自身を物語の主人公だと思って生きている」とおっしゃられていましたが、榎木さんの物語において、スパイダーマンは今どんな存在になっていますか?
榎木 役者としての代表作の一つであることは間違いないです。この作品に出てから「スパイダーマンの吹き替えやられているんですよね」と、先輩後輩問わずたくさん声を掛けていただいていて。そういう意味で役者として高めてもらったというか、表現が難しいですが……一生覚えている大切な作品になっています。
―― ピーターはヒーローとして認められたいという願望を抱いていましたが、榎木さんも声優として認められたいと思うことはありますか?
榎木 ピーターはアベンジャーズの一員として認められたいという気持ちが強く出ていると思うんですけど、僕はなんでしょうね、認められようと思って活動するとブレると思っているので、あまり意識していないんです。自分が知名度ある役者かというと決してそうではないので、それで損をすることも正直あります。かといって有名になりたいからこう行動しようといっても、必ずしも良いことが起きるかというと、僕はそうではないと思うんです。やっぱり欲というのは自分の心を惑わせると思うので、結果は後から付いてくると思いながら活動しています。そこは高校生的な考えと30歳のおじさんの考えで違うところなのかもしれないですね。
―― どこまでもストイックですね。欲は持たないとのことですが、「夢」はあったりするのでしょうか。
榎木 一つ、自分の中で“理想の芝居”というのがありまして。具体的にどういうジャンルでどういうニュアンスの芝居かというのは想像できないんですけど、自分が追い求めている姿というのが漠然とあります。そこにたどり着きたい……たどり着けないんでしょうけど、近づきたいと思っています。演じるというより、人間としてセリフを言いたいんです。
―― 「人間として」とは?
榎木 単純に言えば、心を込めてセリフを言うということでしょうか。込めようとしているんじゃなくて、心がこもった言葉が勝手に発せられるというのが僕は難しいと思っていて、それをなんとかもっとできるようになりたいなと。なかなかないんですよね、1作品やっていても本当にそういう言葉を発せる瞬間というのが、ひとセリフふたセリフあったら良い方かなと。結局は見てくれている方の感想が全てなので、自己満足なんですけどね。
―― 最後にファンの皆さんに一言お願いします。
榎木 今回の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」は、「アベンジャーズ/エンドゲーム」後の世界で、アイアンマンを失った悲しみをピーターがどう乗り越えてヒーローとして成長していくのかというところが見どころになっています。あと、先ほども言ったようにMJとの関係がどう進展していくのかっていうところもすごく楽しみな作品になっていますので、ピーターの人間としての成長を楽しんでもらえたらなと思います。
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のストーリー
ピーター(トム・ホランド)は夏休みに、学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出掛ける。しかしそこに待っていたのは、元S.H.I.E.L.D.長官であるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)だった。迫りくる新たな脅威(きょうい)を察したニックは、その戦いに向けてスパイダーマンの力を必要としていたのだ。目の前に立ちはだかる圧倒的な敵にピーターはおじけづくが、ニックはその使命をスパイダーマンに託す。ヴェネチア、ベルリン、ロンドンといったヨーロッパ都市をはじめ、各国を危機に陥れるのは、“火”や“水”など自然の力を操るエレメンタルズ。ニックは異次元から来たというミステリオ(ジェイク・ギレンホール)をピーターに引き合わせ、彼もまた、ピーターとともに敵に立ち向かっていく。そしてこの戦いに、ソーやキャプテン・マーベルの力は借りられない。ピーター=スパイダーマンはこの厳しい戦いにどう立ち向かうのか――今、世界は彼に託される……!
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■「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(原題:Spider-Man:Far From Home)
■全米公開:2019年7月2日
(C)2019 CTMG. (C) & TM 2019 MARVEL.
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