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「知っている方がいたら教えてください」―― カラオケで一瞬流れた「正体不明のアニメ」、Twitterユーザーの呼びかけで正体が明らかに

代々木アニメーション学院への取材でも同校で作られたものと確認され、ビデオソフトとして流通していたことも明らかになりました。

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 カラオケ映像に映っていた謎のアニメの詳細を知りたい――。そんなツイートがもとで、4月ごろから話題になっていた出所不明のアニメ作品が、関係者の証言から「代々木アニメーション学院(代アニ)の卒業制作」と判明しました。またTwitterで謎が1つ解明されてしまった。

発端のツイート
何かに似てはいるものの、誰も特定できない謎の作品と話題に(虫塚さん撮影)
発端から約3カ月後、制作に携わったという人がついに名乗り出たことで、出所が完全に明らかとなりました

映像の目撃報告はあれど正体は見えず

 発端となったのは、虫塚“KERA”虫蔵(@pareorogas)さんが4月に投稿したツイート。カラオケで「老人と子供のポルカ」(左卜全とひまわりキティーズ)が選曲された際、ツインテールの少女が印象的な、見知らぬアニメが背景で流れたといいます。この映像に引きつけられた虫塚さんは撮影した画像を公開するとともに、詳細を知る人はいないかとTwitterで情報を求めました。また、一部始終を自らTogetterにもまとめています。

 ツイートが広く拡散されるなか、「カラオケの練習」としてYouTubeで流れていた、元映像の発見が報告されました。画面は全部入り切っていないものの、内容は虫塚さんの撮った画像と一致しています。

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当該のシーンは1:58ごろから。女の子のくくった髪がちぎれる、衝撃的なシーンも
別方面での目撃証言

 こうしていくつかの目撃例は確認されましたが、大勢のTwitterユーザーをもってしても、映像の出所にまではなかなかたどり着きません。「未放映のパイロットフィルム」「カラオケ用に作られたオリジナル映像」「一時期よくカラオケに用いられていた、専門学校生の作品」など、それらしい説は出てくるのですがいずれも推測レベル。編集部でも、DAMの第一興商やJOYSOUNDのエクシングに問い合わせたのですが、両社とも「弊社では当該の映像を確認できなかった」との回答でした。

制作参加者の証言・さらなる事実も判明

 しかし、それからさらに1週間ほどが経過し、関係者を名乗る人物から虫塚さんにダイレクトメッセージが届いたことから、事態は一気に核心へ近づきます。件のアニメは代アニの生徒が手がけた「TOYS BOX」という卒業制作作品だというのです。情報提供者(本人希望により匿名)は参加者の1人で、Twitterで話題になっていると知って連絡したとのこと。古いことゆえ詳細は覚えていないものの、25年ほど前にたずさわった作品が思いがけず注目を浴びて驚いている様子でした。

 ネット上ではこれを受け、「普通は学内のみで公開される制作物が、カラオケで日の目を浴びたと思うと胸熱」「70年代後期~90年代初頭の、ネットにアーカイブされにくいオタク文化が見られた」などさまざまな反応が。さらに調査は続き、やがて代アニの創設者が著したアニメ制作の参考書『アニメ&コミックのための絵コンテ作法』の中で、「TOYS BOX」が作例として使用されていたことも判明しました

図版やコンテが参考資料として掲載されている

 加えて、かつて代アニの卒業制作作品がビデオソフト化されていたという発見も。1994年の『月刊アニメージュ』に広告が載っていたことも判明し、関連情報がどんどん発掘されていきます。

絵コンテ担当者から第2の有力証言

 そして、最初のツイートから約3カ月が過ぎた7月17日、さらなる重大な証言が。同作の絵コンテを担当していた、“がし”(gashikun35)さんが名乗りを上げたのです。さらに手元に残していた絵コンテのコピーを公開したことで、詳細はより明らかに。

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 がしさんは虫塚さんにメッセージを送り、心境を語りました。「TOYS BOX」は大事な思い出ながら手元に映像が残っていないのが心残りで、20年以上探し続けていたところ、ネットで話題になっていたことを知ったのだそうです。

 同作が断片だけでも見られたことに、がしさんは虫塚さんや情報を集めた人たちに感謝を述べ、最後にこう語りました。「カラオケ動画も見せていただき、本っ当に感涙ものですが、こうなってくると欲が出てきて、やはり本編30分フルバージョンが欲しくなってしまいますね(笑)。人生およそ半分まできました。残り半分でそれを探すのも良いかもしれませんね」

ジャケット画像入手! 代アニへの取材でさらなる事実が判明

 Twitter上で続々と事実が明らかになるなか、編集部は代アニへの取材も進めていました。広報担当者によると、「TOYS BOX」は1993年度の卒業制作作品で間違いなく、社内にも同作が収録された当時のビデオテープが残っていたそうです(なお、100%生徒が作ったわけではなく、背景はプロの制作会社に発注していたほか、BGMも既成の作品を使用していた可能性があるとのこと)。ただ残念ながら、なぜそれがカラオケ映像に使用されていたかについては、当時の詳細な状況を知る者がおらず不明なまま。少なくとも現在は、同校の制作物をカラオケに提供することはしていないそうです。

 また、追加で同作が収録されているビデオソフトのパッケージ画像も提供いただくことができました。そこには「トイズ・ボックス」のタイトルや画像、物語のあらすじもはっきりと載っています。

裏面で「TOYS BOX」のあらすじまで明らかに

「TOYS BOX」あらすじ
 秋山瑞恵(みずえ/25歳)、イベント企画会社に勤める平凡なO・L(オフィス・レディー)である。恋人もできず、仕事もうまくいかず、悶々とした日々をすごしていた。
  ある日、押し入れの奥にしまい込んでいたトイズ・ボックスからクマのぬいぐるみ「プータン」が現れ、トイズ・ボックスの世界が、魔王により平和が乱されると聞かされる。人形のリコちゃん、ウルトラ・ヘブンと協力して、魔王に立ち向かい、悪戦苦闘の末、魔王を倒すことができた……が、仮面の下から現れた魔王の素顔は、なんと、瑞恵の顔だったのである。驚きの余り、声も出ない瑞恵は、プータンから意外な話を聞かされる……。

 以上のことから、「トイズ・ボックス」は代々木アニメーション学院の1993年度卒業制作作品の1つで、また同作が収録されたビデオソフトが少なくとも商品として流通していたことも分かりました。まだ本編映像などは見つかっていませんが、この事実が少しでも、「TOYS BOX」に魅せられた虫塚さんたちや、がしさんら関係者への希望となれば幸いです。

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協力:虫塚“KERA”虫蔵(@pareorogas)さん/がし(gashikun35)さん

7月24日11時30分追記

 虫塚さんのツイートで、当時のビデオテープや本編映像が見つかったことが明かされました。エンドクレジットによると、「ふしぎの海のナディア」でナディアを演じた鷹森淑乃さんや、「ケロロ軍曹」のケロロ役で知られる渡辺久美子さん、「機動戦士ガンダムZZ」ジュドー役の矢尾一樹さん、「すごいよ!!マサルさん」フーミン役の金丸淳一さんが特別出演として声をあてていたことも分かったそうです。

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