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ぶっちゃけ、電ファミって利益出てました? 「電ファミニコゲーマー」編集長・TAITAI氏に聞く、独立の裏側、これからの野望(2/3 ページ)

2016年のオープンから3年、大きな転機を迎えた電ファミは今後どうなる?

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「PV主義ではない」という方針

hamatsu:ちょっと話を変えて、電ファミの3年間を振り返ってみてどうでしたか。自分もかなり初期から寄稿させていただいていて、もう3年もたったんだなーという気持ちと、あっという間だったなーという気持ちと両方あったりします。

平:そうですね、そもそもの成り立ちが各編集部からの寄せ集めで、決して統一された部隊ではなかったんですよね(※)。はみ出しものの集まりというか、能力はあるけど扱いづらいみたいな。

※電ファミは主にドワンゴやKADOKAWA(ファミ通、電撃など)からの出向スタッフで運営されていた

hamatsu:クセの強い人たちというか。

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平:そうそう、斉藤大地とかにしたって、才能はあるけど基本的に不良社員ですからね。そういう人たちが入れ替わり立ち替わりで……なんというか「手間のかかる人たちだなあ」というのが率直な感想でした。でも、電ファミであらためて編集長業務みたいなものをゼロからやり直した感じもあって、そこで学んだことはすごくありました。

カラー、ドワンゴからの出資を受け、斉藤大地さんが立ち上げた会社「バカー

hamatsu:僕の初代連載担当だった稲葉ほたてさんはどんな方でした?

平:電ファミでは編集者という立ち位置で仕事をしてもらったけど、彼こそクリエイターに近い人ですね。

hamatsu:稲葉さん自身、めちゃくちゃ文章書ける人ですよね。

平:あの世代ではトップクラスなんじゃないかと思います。

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hamatsu:僕の原稿とか真っ赤に赤入れされて返ってきて、それこそ「これ俺が書いた文章じゃないんじゃないの」っていうレベルで。でも論旨自体は全く変わっていなくて、ちゃんと読みやすくして返してくれるのでただただすごいなと。

平:「ゲームの企画書」の書籍版でも書きましたけど、彼には本当に感謝しています。あのくらいの才能の人が、僕の企画に付き合って一緒に「ゲームの企画書」の初期をやってくれたのはものすごくラッキーだった。

書籍化もされた「ゲームの企画書」。初期は平さんと稲葉さんが中心となって聞き手・構成を担当していた

hamatsu:僕も商業原稿の初担当が稲葉さんで本当に良かったと思っています。赤入れしてもらった原稿は今でも取っておいて見返しています。そういえばずっと聞きたかったんですが、なんで僕に声をかけてくださったんですか? 他のそうそうたるメンバーの中で。

平:4Gamer時代からhamatsuさんのブログ(色々水平思考)は知っていて、いつかお願いしたいなと思っていたんです。ただいろいろドタバタしていて機会を逸していただけで。

ねとらぼ:hamatsuさんのブログ、ゲーム業界で読んでいる人は多いと思いますよ。

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hamatsu:ありがとうございます(笑)。会社でもまだほぼ身バレしてないんで、てっきりあんまり読まれてないんだろうなと……。

平:以前、ファミ通や電撃から来てもらっていた人に、「手の内の中だけで仕事をするな」って怒ったことがあったんですよ。昔から付き合いのあるライターだけで仕事をするんじゃなくて、面白い書き手はいくらでもいるんだから、それを開拓するのが編集者の仕事なんじゃないですか、って。

「面白い書き手を開拓するのが編集者の仕事」(平さん)

hamatsu:さっき名前が上がった稲葉さん、斎藤さんは途中で電ファミからは離れてしまいましたが、その後の運営にやはり影響はありましたか。

平:そうですね。稲葉さんや斉藤大地がいたことで良かったのは、2人とも“ゲーム以外”への目端がものすごく利いて、それが初期の電ファミの奥深さや幅の広さに貢献したのは間違いない。彼らが居なくなったことで、そこがちょっと弱くなったなあ、というのは実感としてあります。でも一方で石元くんとかクリモトくんとか、“幅の広さ”で言えば稲葉さんとか斉藤大地には及ばないかもしれないけど、ゲームに対する“今”をキャッチアップする力は彼らの方が上ですね。

平:ちっちゃな組織ってある程度人に合わせて運営するしかないところがあって、例えば僕がこういう方針だからといって、その型に彼らを押し込めても誰も得しないわけです。基本的に僕の方針とかポリシーはありつつも、来てくれた編集とか提案してくれたライターの才能を生かして、伸ばしていくというのが一応、電ファミの編集方針ですね。

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ねとらぼ:ねとらぼも時期によって人の入れ替わりがあるんですが、やっぱりどんな媒体になるかって、その時のメンバーにすごく左右されますね。

平:大枠としての方向性や、記事のクオリティーなんかについては編集長である僕がある程度担保していると思っていますが、それ以外の部分、そこに載せるモノについては個人に委ねようと。

hamatsu:平さんが考える“大枠の方向”っていうのはどんなところですか。

平:簡単にいうと“PV至上主義ではない”っていうところです。PVを稼ごうと思ったら、効率的なパターンっていうのはまあいくらでもあるわけですけど、電ファミではそれはやらない。

2017年の振り返り記事の中でも「1万PVの記事を100本作る」のではなく「1本の記事で100万PVを目指す」という目標を語っていた(世界を席巻した『ゼルダの伝説』、「AI」が示す日本の敗戦、「マシリト」の記事はまたランクイン。2017年の電ファミ記事ランキングを、今年のゲーム業界とともに振り返ってみる

ねとらぼ:現状ネットメディアをやるにあたって、是非はともかくとして「PVで稼ぐ」というのは、1つの安定した手段ではありますよね。今後独立採算でやっていくにあたって、そちらに行くという考えはやはりないですか。

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平:ないですね。まがりなりにも電ファミが成立しているのって、その逆張りでやってきた結果だと思っているので。

hamatsu:信頼みたいなものですよね。PV以外のものを獲得してきたっていう。

平:今名乗り出てくれているスポンサーは、PVそのものに対してだけお金を払ってくれているわけではないと思うんですよね。

hamatsu:期待感というか。なんかやってくれそうというか。

平:そうそう。

ねとらぼ:PV主義のデメリットって、やっぱり大きいと思いますか。

平:単純につまんないですよね。それでご飯食べていくんだったら、まだ他の仕事をするわっていう。ただ「脱PV」と言ってしまうとちょっと語弊があると思っていて、メディアである以上、PVは意識はすべきです。逆説的だけど、読まれない記事に存在価値はないので。

 でも一方で、ネットメディアの世界では機械的にPVを稼ぐという方法論が昔からあって、例えば猫動画とかラジオ番組の書き起こしとか、要はネタをよそから持ってきて記事を量産し、あとはSEOで検索に引っ掛かるようにするという。そういうのがいわゆるPV至上主義ですよと。

 で、そういう記事って確かに読まれるんだけど、その多くはどこかの何かを持ってきているだけで一次生産をしていない。それって今の過渡期の中ではギリギリ許されて成立はしているけれども、本質的なところがどんどんやせ細っていくなかで、それが今後どうなるかと考えると、きっといずれは悲しい結末を迎えるんじゃないかなと。

ねとらぼ:メディアの人間の中にも、なんだかんだでPV主義にうんざりしている人は多いんですよね。そういう人たちからも電ファミは注目されていると思います。

平:何か前向きな事例が示せたらいいなと思いますね。

「世界征服大作戦」の名前に込めたもの

hamatsu:話は少し変わりますが、これまでインタビューしてきた中で、面白かった人や注目している人はいますか。

平:あんまり他の人と比較するのもアレなんですが、これまで何十人、何百人とインタビューしてきて「この人は圧倒的だな」と思ったのは、やっぱりフロム・ソフトウェアの宮崎(英高)さん。もちろん「ダークソウル」とか「SEKIRO」とかで十分成功はしているんだけど、もう1、2ランク上に行ってもおかしくない人だと思います。

発売10日で200万本以上を売り上げた「SEKIRO」(「SEKIRO」公式サイトより)

hamatsu:自分は最近ようやく葦名弦一郎を倒したくらいなんですけど(※)、宮崎さんは僕もすごいと思います。平さんが“圧倒的”と感じたのってどのあたりですか?

※インタビュー当時。その後ちゃんとクリアしたそうです

平:説明しにくいんですけど、ワールドワイドで売れる“当て勘”を持ってますよね。特にハードSFとか西洋ファンタジーに対する見識や感覚は、日本のクリエイターでは他に並ぶ人がいないレベルだと思います。あとは純粋に、頭が良くてロジカルというのが大きい。例えば「デモンズソウル」だと……。

(ここから宮崎さんや「ダークソウル」「SEKIRO」の話題で30分ほど盛り上がる)

平:でも、宮崎さんって外で自分の話をされるのをあんまり好まない方なので、いましゃべってたところは記事にはしづらいと思います(笑)。

hamatsu:えー、残念!

ねとらぼ:こんなに盛り上がったのに(笑)。

hamatsu:また話が飛びますけど、平さん、今おいくつでしたっけ。

平:僕、41歳です。

hamatsu:僕が今40歳なので、われわれほぼ同年代なんですよね(※同行しているねとらぼ編集も同じく40歳)。40代になってみてどうですか? 

当日は平さんが41、hamatuさんとねとらぼ編集が40という座組みでした

平:何だろう、自分では大して変わっていないと思うし、思ったより大人じゃないなと。でも自分ではそう思ってるけど、周りが見る目はそうではなくなってきているなという自覚もあります。あとなんだかんだで、ドワンゴ内では役職もついて、気付けばなんだかんだで僕が最年長クラスなわけですよ。部署の中では。

hamatsu:分かります、気付くと年長だった、ってことありますよね。でも一方で、この年になると会社ってけっこう利用できるんだなってことも分かってきたりしませんか。例えば鳥嶋さんのインタビューで感銘を受けたんですけど、「会社員なのにこんなに自由にやっていいんだ」っていう。

平:鳥嶋さんはね、何というか、一会社員の若造にあるまじき行動を取っていますね。

hamatsu:ここまで許されるんだ! って。

平:それでいうと30代後半とか40代って、会社だとそこそこいいポジションだったり、能力的にも若さと経験がいいバランスだったりして、もっと“悪巧み”をした方が絶対にいいんですよ。電ファミのオンラインサロンに世界征服大作戦っていう名前をつけたのは、そういう「悪巧みをしたい」っていう気持ちもあったんですけど……まあ伝わっていないですね(笑)。

事業移管と同時に発表された、有料オンラインサロン「世界征服大作戦

hamatsu:支援者からも「名前が分かりにくい」って突っ込まれていましたね。

平:すいません、移管自体もかなり急だったので、オンラインサロンのあたりはかなり準備不足なまま出してしまったところもあって、そこはいろいろ反省しています。さっきも言った通り、自分が世界征服大作戦でやりたいことは2つあって、1つは「電ファミで記事を作り続けたい」、もう1つは「編集者とかメディアの新しい可能性にチャレンジしたい」っていうことだったんですが、2つ目についてはまだ話せないことが多くて……。

hamatsu:2つ目の方が正式発表されるのを楽しみにしています。

ねとらぼ:平さん、やっていることがだんだん鳥嶋さん化してますよね?

平:……まあ(苦笑)。

hamatsu:なかなか一般的な40代は悪巧みはできないですよ。

平:そういう気概を持っている人は案外埋もれている気はしますけどね。それこそクリエイターでも、40代とか50代手前とかの人たちってすごく悩んでるなーっていう実感もあって。

真剣に「悪巧み」について語る平さん

平:要はサラリーマンとしてヒット作は出してきたけど、その先のキャリアパスって“会社員として偉くなる”以外にないんですよ。でもそれがクリエイターにとって全てかというとそんなことはなくて、そこにマッチしない人たちはけっこう悩んでる。

ねとらぼ:同じようなことって編集者にも当てはまりますよね。立場が上になるほど雑務が増えて、自分で記事を書く機会は減っていって……。というか、日本の会社組織全体の構造問題でもありますね。

hamatsu:平さんなら、僕たちの世代の鳥嶋さんとして、そこに風穴を空けてくれるんじゃないか……って話をしに来たら、既にけっこう進んでいて安心しました。

ねとらぼ:記事だと多分あそこばっさりカットされてますけどね。

平:そこはちゃんと発表できるようになるまで、もうちょっと待ってください。

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