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いびつなエネルギーが生み出した“秘め事映画” 斎藤工と永野が語る、怪作「MANRIKI」が持つ“究極のリアル”

一度心をつかまれたら最後。

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 お笑い芸人の永野さん、俳優の斎藤工さん、ミュージシャンで俳優の金子ノブアキさん、映像監督の清水康彦さんらによる映像制作プロジェクト「チーム万力」が手掛ける映画「MANRIKI」が、11月29日から劇場公開されています。

 永野さん原作・脚本となる同作は、斎藤さん演じる猟奇的な整顔師が、小顔を求める女性たちに万力による小顔矯正を施していくブラックコメディー。韓国の第23回プチョン国際ファンタスティック映画祭では、2018年の大ヒット作「カメラを止めるな!」に続いて、ヨーロッパ国際ファンタスティック映画祭連盟アジア賞を受賞しています。

 着想からおよそ3年。さまざまな苦難を乗り越えて公開へと至った同作について、企画・プロデュースも兼任した永野さんと斎藤さんにお話を聞きました。

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―― 上映まで2週間を切りましたが(11月18日に取材)、いまの気持ちは?

永野 ついに来たかという感じです。すごく甘い考えで、「斎藤くんのプロデュースだったら簡単に公開までいけるだろう」と思っていたんですけど、なかなか企画が通らなくて。でもそれが功を奏して、小顔矯正の話から自分の闇というか、自分自身の内面に向き合った話になりました。達成感はありますが、いまはそれよりも「ここからだ、ついに(お客さんが)見るんだ」という思いです。

斎藤 かかるべくしてかかった時間だったので、初日が来るというのは不思議な気持ちです。ただ、どこか見せたくないものになってきたというか……。

―― 見せたくないもの?

斎藤 どうぞと見せるというよりは、こっそり公開したい気持ちもあるんです。この作品は、ピンポイントに“刺さる人にしか刺さらない”ような映画なんです。

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 いま日本の多くの映画がチェーン展開というか、まず観客が喜ぶだろう要素を集めて作っているものが多いですよね。時代的なものもあると思うんですけど、スポンサー至上主義、コンプライアンスが過度なこの時代の中で、秘め事のような作品。僕は“秘め事映画”を作ったと思っています。そういう意味では、アンテナが働いちゃった人へ向けた作品かなと。

―― 頭で考えるより、まずは体感してほしい?

永野 体感してほしいですね。そういうものだと思うんです、映画って。皆が良かったって言ってたら、答え合わせのように映画を見たりするじゃないですか。確認作業みたいになっちゃう。

―― 先ほど海外の映画祭の話も出ましたが、プチョンでは大変ウケが良かったそうですね。笑い声も上がっていたとか。

永野 海外だと僕に対するイメージがないじゃないですか。もちろん斎藤くんたちは知られていますけど、僕なんて韓国では全然なので。映画を評価してくれたから「世界へ!」というわけではなくて、日本ではイメージが付いちゃっている2人だからこそ、世界に期待を、というのはあります。

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斎藤 僕は、この作品がどういう作品なのかというのは、海外のオーディエンスに託しています。そこから何か反逆心みたいなものをガソリンにして作っていったところがあります。

 映画って面白いのが、完パケ(※コンテンツとして仕上がること)たら、そのあともお客さんのリアクションで育っていくんです。MANRIKIもその時期に入っていて。特に海外から見られる日本という目線を意識して作った作品なので、プチョンでのリアクションがものすごく良かったのはうれしかったんですけど、これからこの映画のウイルスがどれだけ感染を広げていくのかというのは、確かめたいですね。

―― お2人は企画・プロデュースも担当されていますが、映画の公開に当たっては、制作会社や配給会社との間でかなり難航したと聞きました。

永野 話し合いも全然進まなかったし、上映できるのかなって思っていました。自分も監督も「これ、だめだな」とか言ってたんですけど、斎藤くんは進まないことが面白いと考えてくれていたらしくて。

斎藤 不採用通知みたいなものをたくさん受けてきました。映画会社からも受けましたし、一緒に作っていこうとした人の中にも、船に乗ろうとして残念ながら降りていった人もたくさんいます。個人的な感情なのかもしれないですけど、彼らが後悔するような代物を作ってやろうという気持ちがずっとありました。このMANRIKIが宿すものを信じ切って、最後まで走り抜けて出来上がったものなので、手からMANRIKIを逃していった人たちへのレクイエムだと僕は思っています。

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永野 あはは(笑)。

斎藤 そのいびつなエネルギーみたいなものこそが、この作品を生んだと思っています。だから、全てが必要だったんです。僕らを突き放した人たちや会社も、実はMANRIKIのガソリンになっている。超エコ映画なんです。

永野 企画を持っていった段階でめちゃくちゃ言われたんですよ。「学生の発想だよ。プロでしょ? プロってこういうものじゃないから」とか。でも僕はそうは思っていなくて。お客さんを平等に満足させるのがプロって考える人もいるかもしれない。そういう人から見たら青臭いのかもしれないですけど、実際できちゃったので。そういう意味では、確かにレクイエムです。

斎藤 いじめられたわけではないですけどね(笑)。健全、クリーン、清廉潔白みたいなものが時代として求められている――っていうハラスメントなんじゃないかって思いましたね。

―― 最後に、映画が気になっている人たちへメッセージをお願いします。

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永野 映画にも出ている「虹の黄昏」の野沢ダイブ禁止くんが、撮影途中の映像を見て「この映画はクズの束ですね」「でも、クズの束だけど、俺もいままで通りやっていていいんだ。気持ち良いです」って言ってくれたんです。だから、いま何か嫌な気持ちを抱いて生きている人も、優しい言葉を掛けられるより、こうやって黒いのを見せられたら、その先に希望が見えてくるんじゃないかなって。そういう人に届けたいし、見てもらいたいですね。

斎藤 いま大ヒットしている「ジョーカー」も大好きなんですけど、こう感じてほしいっていう、キャラクターに対する心の導きがどの作品にもあるじゃないですか。でも、その目線みたいなものが、この作品には無い。それって究極のリアルだと思うんです。そういう感情の導きみたいなものが一切ないというリアリティーを追求した作品としては、近年では唯一無二の作品に到達できたんじゃないかと思います。

 「こう思ってください」というものがない虚無な時間って、人間生きていて一番長い時間だと思うんですよ。それをごまかすために、仕事だったり、何かをしてみたりする。そういう味付けをしない心の模様、見た人の“本当の姿”というものが、このMANRIKIのスクリーンに見えてくると思います。だから、MANRIKIはあなたの物語です、と言いたいです。

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