インタビュー

「人間の全ての過程を歌いたい」 “超歌手”大森靖子が今、叫びたいこと(1/2 ページ)

「人間はただただ経験して、ボロボロになってひたすら美しくなっていく生き物、それでいいじゃないか」

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 大森靖子は叫ぶ――愚直なまでに音楽と向き合いながら、独自の肩書である“超歌手”として、ここに生きていることを訴える。

 2019年にはメジャーデビュー5周年を迎え、道重さゆみさんや峯田和伸さんとコラボした大森さん。「超歌手大森靖子2019 47都道府県TOUR“ハンドメイドシンガイア”」ではその名の通り、47都道府県を回る全国ツアーを実施し、ベストアルバム「大森靖子」をリリースするなど、アニバーサリーイヤーを駆け抜けていった。

 最近ではアイドルグループ「ZOC」のプロデュースを行うなど、表現者としてアップデートしていく大森さんが、今冬発売となるアルバム「Kintsugi」の収録曲である新曲「シンガーソングライター」を7月29日にリリース。メジャーデビュー5周年の節目を超え、成長し続ける彼女が今、何を伝えたいのか聞いてきました。

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大森靖子「シンガーソングライター」

シンガーソングライターの肩書に当てはめられることへの違和感を分解したかった

――新曲「シンガーソングライター」は2019年から2020年にかけて行われた全国ツアーや生配信「今日のおやすみ弾語り」でも披露されていましたね。楽曲が生まれたのはいつごろですか?

大森靖子(以下、大森) 全国ツアーでは断片的にやっていましたが、2019年の10月ごろだったような気がします。メジャーデビューしてからの6年で3枚のアルバムを出しましたが、これまではアルバムを作るから曲を作ろう、というような制作スタイルでした。締め切りがないと作らないタイプなので(笑)。でも、そうではなくて生きていく過程で曲ができるという自然な作り方ができたらいいなと思っていて、徐々に形にしていきました。

――これまで“超歌手”としてさまざまな垣根を超えてきたと思いますが、あらためて「シンガーソングライター」を歌おうと思ったのはなぜですか?

大森 もともとシンガーソングライターという肩書を、自分に当てはめられることに違和感を抱いていました。でも、その違和感を分解したことはなかったので、曲を作りながら解明したかった、というのがこの曲ができたきっかけです。

 シンガーソングライターってこういう人、自分が生きて感じたことを自分で曲にして歌う人、という固定概念が多くの人にはあると思いますが、私は逆に自分のことを歌いたい気持ちはないんです。私が音楽でやりたいことは、世の中にある感情を自分の捉え方で一つ一つ丁寧に曲にしていくこと。「こういう可能性があるよ」とか「こういう想像ができるよ」ということを受け取り手側に見せたい。その認識が、私の思うシンガーソングライターというイメージの中になかったから違和感を覚えていたんだと思います。

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――アレンジにもこだわりましたか?

大森 基本、私の歌詞は情報量が多いので、編曲家さんたちがそこから本質をくみ取って、広げるようなアレンジをつけてくれることが多いです。私から注文をすることはほとんどなくて、あってもファッションショーの画像やドラゴンの生首の画像だけを送って、全体のイメージを伝えるぐらい。

――すごい信頼関係……。次のアルバム「Kintsugi」はどんなイメージで作られているのですか?

大森 最近、さまざまな問題において「人間はこうあるべき」という主張が強くなっているような気がしていて、いわゆる“正義警察”が増えましたよね。

 「多様性があってこその人間」という意見もありますが、結局、何について話しても偏りは生まれてしまうので、いろいろな人がいる、いろんな可能性がある、と一人一人が想像できるようにならないと無意味だと感じているので、その気持ちを取りこぼさないことが大事だなと思います。

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 でも、主に最近の若い子たちは、深い部分で人間のダメな部分やいい部分に向き合うことが少なくなってきている気がします。インターネットが普及して、開けた交流ができるようになったからこそ、自分と合わない人は切り捨てる、仲のいい人とだけ仲良くする、という取捨選択が簡単にできてしまう。表層の部分だけ、自分にとって都合のいい部分だけを受け取って気持ちよく生きるコミュニケーション弱者になっていると感じるので、そこを補いたいです。

 私の音楽は、若年層の人もたくさん聞いてくれているので、「人間はこんなところがあって、こんなところもあって、だから魅力的なんだよ」ということを歌いたいと思っています。

――人間のダメな面もいい面も歌いたいと。

大森 人間の全ての過程を歌いたいですね。私はもともと失っていく少女性と失ってしまったおっさん性にしか興味がなかったんですけど、そうではなくて、人間はただただ経験して、ボロボロになってひたすら美しくなっていく生き物、それでいいじゃないか、って絶対言いたい。だからその過程を全部美しく描きたいんです。

――今のインターネットにいろいろ思うところがあるようですね。

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大森 「それは本当に共感か?」とは思います。タグとか苦手です。タグ付けするのは簡単ですが、その時点で、自分が消えちゃうっていう感覚があります。「これ自分と似てるな」「これは自分だな」って思ったら、本当はそうじゃないかもしれないのに、そうじゃない部分が面白いかもしれないのに、共感したことで誰かのものに変わっちゃうじゃないですか。

――「シンガーソングライター」の歌詞にも「共感こそ繊細な感情を無視して殺すから」「お前に刺さる歌なんかは絶対書きたくないんだ」というフレーズがありました。

大森 この曲が絶対正義とは思ってほしくない。でも音楽に対する没頭、というのはそういうものを生みがちなので、想像力を養った上で音楽を聴けたら、もっとすてきな解釈が生まれて、見る想像聞く想像をより養えるのに、といつも思っています。

 それを育てていくのがミュージシャンだとも思います。でもミュージシャンも思考する1人の人間だから、共感と結び付けたいんです。でも結び付けて、押し付けすぎると宗教化してしまう。私はそういうことがしたいわけではないです。

――でも今の時代、売れるためには共感って重要視されるポイントではないですか?

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大森 それでもその共感が本物かどうか懐疑心を持つことを育てたいです。でも、1回刺さらないとそれすら伝わらないのでメジャーにいます……(笑)。

 私の曲も“刺さる曲”として語られがちですが、曲によって人格が崩壊しているはずなので、「そんなことないんだよな~」と思ったりもします。あえて前とは真逆の曲をやろうとかもあるので。

 みんな簡単に刺さりすぎだと思うんです。もう少し、“硬い皮膚”を持ってほしい。「そんなに刺さりまくってたら自分がいなくなっちゃうよ、刺されて死んじゃうよ」って感じます。

――大森さんの中でファンとの関係性はどのように捉えているのでしょうか?

大森 ライブの場合は、会場にいる一人一人を見て、「あ、このスーツがよれている人は仕事が終わって走ってきたんだな」とか、「この人は完璧にできたんだろうな」とか「この人は完璧にしたかったけど髪は間に合わなかったんだな」とか、その人の生活のヨレみたいなところと対話したいなと思っています。それぞれに向けて、秒ごとに曲の表現を変えつつコミュニケーションをとりたいですね。

 配信のときはどんな人が画面の向こうにいて、何曜日の何時なのか、どんな生活を送っているのかというのを考えて、その生活にどう入り込むかを意識しています。

――最近はライブもなかなかできない状況が続いています。

大森 全くできていないですね。どんなに嫌なことがあっても、その燃料を全部ライブにぶつけて、いい表現にできればそれでOK、むしろよかった! という気持ちで生きてきたので、今はそれをどこにぶつけたらいいのか分からないです。

 文章を書くことも好きですけど、それが基で炎上することもあるので……。本とか書けばいいのかな、と思ったりもしますが、やっぱり音楽がやりたい。

――外出自粛期間中は弾語りを100日続けるという配信「今日のおやすみ弾語り」を行っていましたね。

大森 毎日手作りする感覚を毎日続けることの大事さを伝えたかったんです。こんなときだからこうする、という雰囲気を絶対に出したくなかった。だからライブ感みたいなものは出せたのかなと思っています。夜にみんなが集まるあの感じとか。100日間、動画を編集し続けてスキルが上がったので、もう自分でMV作れると思います(笑)。いつか作りたいですね。

――COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響による変化をどう感じますか?

大森 もともとこんな感じだったよ世の中って、と思うことの方が多いです。

 露見されただけのことを「変わった」とか、「こういうときに人間って分かるよね」と言う人が苦手です。初めからちゃんと見て、話していれば分かっていたことなのに。

 でも今、何ができるかということを秒ごとに考えていかなければいけなくなったとは思います。変わったというより、変わるスピードが上がっているなとは感じます。

――ご自身で変わったと思うところはありますか?

大森 ……ちょっとだけ大人の対応を覚えました。私、「これはこうなっていて、私はこう考えていて、だからこうなんです」って最初から最後まで全部説明して、説得して生きてきた人間ですが、それは大人の対応じゃないなと。自分の立場的に物事を動かすことも増えたので、誤解されようが、どう思われようが、説明しない部分があってもいい、というバランスを少し覚えたように思います。

 私のことを分かってくれる人は分かってくれているから、大きい部分でどう思われようが、なんでもいいや、という気持ちです。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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