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「本当は孤独ってめちゃくちゃ楽しい」 『ハヤテ』『神のみ』作者がそれでも「結婚漫画」を描く理由(後編)畑健二郎×若木民喜(1/3 ページ)

畑健二郎×若木民喜のスペシャル対談、後編です。

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 『ハヤテのごとく!』の畑健二郎と『神のみぞ知るセカイ』の若木民喜、週刊少年サンデー誌上でしのぎを削った2人のラブコメ作家が、今度は同時期に「結婚漫画」を連載中。キスだけじゃ終わらない「ハッピーエンドのその先」を描き出します。

 『結婚するって、本当ですか 365 Days To The Wedding』(若木民喜)は、旅行代理店に勤める男女が、とある事情をきっかけに偽装婚約を画策する物語。8月7日に待望の第1巻が発売されました。

 アニメの放送を秋に控えた『トニカクカワイイ』(畑健二郎)は、夫婦生活の幸せだけを抽出したような、ひたすら甘々でイチャイチャなラブコメディ。クールだけどゲームが大好き、ミステリアスだけど夫にデレデレ……そんなヒロインがどにかくかわいい!

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 片や青年誌、片や少年誌で繰り広げられるふたつの「結婚漫画」が伝えたいメッセージとは? プライベートでも親睦の深い若木民喜×畑健二郎による対談が実現。ますます白熱する漫画家トークをお届けします。

結婚を通じて考えた「大人になることの意味」

――前編で「少年誌の倫理観」といった話が出ましたが、若木先生は青年誌に移って何か変わりましたか?

若木: サンデーのころは“変顔でドタバタするような演出”をよく使っていたんですけど、『結婚するって』で描いたら即ボツにされましたね。担当編集からダメ出しの電話がかかってきて、「なんか子どもっぽいな~。もっと大人のコメディを求めてるんですけど」って……。

担当編集: そんな言い方してません!

若木: 48にもなって、年下の編集者に「もっと大人っぽく」とかダメ出しを食らう、その情けなさっていうか! ○○先生がサンデーの後でスピリッツに描いたマンガもあんな感じだったんですけどねえ……?

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畑: 書けないでしょそんなの。

若木: でもまあ、それはそれで楽しいんですよね。自分のやってきた仕事がゼロに戻って、新人として扱われてるような気持ちになるんですけど、この歳で新しい自分に変われるってある意味で貴重だなと。「ありのままの自分でいい」って考え方もあるけど、僕はできるだけ変わりたいし、「これしかできません」じゃなくて、どんな仕事も請けられるマンガ家になりたいんですよ。「できる」としか言わない、「できません」は言わない。

畑: 島本和彦先生の世界だ……!

若木: 何を頼まれても「分かりました、やります」って、自分を保ちながら世界と順応していける人が“大人”だと思うから。駄々っ子みたいになりたくないわけですよ。むしろ48にもなって、まだこんなこと言ってんのかよって感じですけど。

畑: いやいや。若木先生、そんなこと言う人だっけ?(笑) 飲み会で「マンガ家なんて、いつまでも子どもで世間知らずなくらいがちょうどいいんだよ」みたいに言ってなかった?

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若木: めちゃくちゃ言ってました(笑)。でも、それこそ結婚したタイミングで、いつまでも「変わりたくない」って主張していたら周りの人を不幸にしてしまうって気づいたんですよ。僕は「結婚式は嫌だ、面倒くさい」ってタイプの人間で、妻の家族も「やらなくていいよ」って言ってくれたんですけど、お義父さん、本音はすげえ結婚式やりたそうなの。

畑: それは……。

若木: 「めっちゃ俺、気ぃ使わしてる」ってなるじゃん! 駄々っ子みたいなことを言わずに、周りと調和を保って仲良くしなきゃダメだなって実感しました。結婚を通じて「大人になることの意味」を考えた経験は、『結婚するって』のテーマに生きてるなあと思います。

──両親にあいさつする話は畑先生の『トニカクカワイイ』にも出てきました。2人で実家に宿泊するドタバタが楽しかったです。

両親と壁一枚隔てた寝室に泊まったナサたち夫婦。そのシチュエーションになぜかナサくんがちょっと興奮ぎみ!?

畑: あれは一回目の結婚の実話が多分に含まれています。相手のご両親と顔見せのために温泉旅館に泊まるイベントがあって。

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若木: あるある。

畑: あるでしょ? お義父さんと温泉に入らなきゃいけないんですけど、何を話したらいいか全然分からない。何だったら僕よりもお義父さんの方が気を遣ってドギマギしていたと思いますし。あの拒否できない「ウワ~!」って気まずさを描きたかったんです。

――それも「少年たちに伝えたいこと」の1つですね。年齢層の高いスピリッツ読者は共感してくれる人も多そうです。

若木: いや、意外と伝わらなかったりします。タイトルとかまさにそう。

――元ネタはダ・カーポの曲「結婚するって本当ですか」ですよね?

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若木: 僕ね、みんな知ってるもんだと思っていたんだけど、誰にも気付かれない……。

畑: いや~今の読者はさすがにダ・カーポ知らないって。僕も言われるまで気付かなかったもん。

───調べたところ、1974年の曲でした。

若木: 「みんなが知ってるだろ!」ってベタなタイトルを付けたつもりが、あまりにも読者に気付かれない。僕が往々にしてやりがちなパターンなんですけど。

畑: まあ得てして読者に意図をくんでもらうのは大変だよね。

若木: 『トニカクカワイイ』はどうやってタイトル決めたの?

畑: ぱっと見た瞬間に「バッカじゃねーの!」って思われるようなタイトルをつけたかったんです。「とにかくかわいい……『トニカクカワイイ』……ああ、なんて頭の悪い言葉なんだろう!」って。

若木: 「とにかくかわいい」ってセリフの中でも使いやすいよね。日常会話でも普通に使うし。

畑: そこは意図的に「日常的に使われているけど作品のタイトルにはなっていない言葉」で空いている席を狙いました。例えば『ワンピース』とか、それこそ『ハヤテ』もそうですけど、いまや「はやてのごとく」って耳にした瞬間、漫画の方を思い浮かべてくれる人もそれなりにいると思うんです。だから「これだ……! 売れたら利権を独占できる……!」と思って。

若木: あはは。

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