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“読者への嫌がらせ”のためにわざと乱丁・落丁・無裁断 印刷会社にお断りされまくった東方projectの同人誌『この作者、天邪鬼につき』

狂ってる(ほめ言葉)。

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 同人誌制作者さんに作品へのこだわり、思い入れなどを伺う読者応募企画「装丁にこだわりまくった同人誌、教えてください」。今回は「“わざと乱丁・落丁・無裁断”というハチャメチャなコンセプトにした結果、印刷会社に断られまくった」という作品のお話を伺いました。……というか、最終的によく刷ってくれるところ見つかりましたね、それ。


無裁断なので普通はカットされる部分が残っています

ミスではなく、こういうコンセプトの本です

『この作者、天の邪鬼につき』

「さまざまな『嫌がらせ』が次々と読者に襲いかかる仕組みになっております」

 主に「東方Project」というジャンルで二次創作活動をしております、同人小説系サークル「すずだんご」代表の土露団子と申します。

 コミックマーケット96(2019年夏)にて頒布した『この作者、天邪鬼につき』は、「鬼人正邪」という天邪鬼(あまのじゃく)なキャラクターが、実際に本の中で縦横無尽に暴れ回るといったストーリーになっております。したがいまして、通常の本ではあり得ない乱丁・落丁・無裁断をはじめとした、さまざまな「嫌がらせ」が次々と読者に襲いかかる仕組みになっております(読者の皆さまは刃物をご用意し、本を切り進めながら読んでいただく必要がございます)。

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本の装丁と内容がリンクした作品

本文が傾いていたり……

切らないと読めないページがあったり……

あ、ここも切るのか

右→左に読み進めていったら、突然、本を読む方向が左→右に反転したり……

本文がジグソーパズルになっていて読めなかったり……

いざ紙面を切って解いてみたら、ピースが1つ足りなかったり

―― なぜそのようなコンセプトに?

 この同人誌は制作当初、「鬼人正邪という天邪鬼なキャラクターが主人公で、物語が二転三転する」という、ストーリー面での天邪鬼さだけを考えていました。

 ですが、「果たして天邪鬼がそのようなストーリーの枠だけに収まりきれるのか」「天邪鬼ならもっと天邪鬼なことを仕掛けてくるのではないだろうか」と思考を巡らせた結果、ふと「読者に嫌がらせをする本」という発想に至り、このような特殊な形(乱丁落丁無裁断本)で制作することにいたしました……というのが1つのきっかけです。

 他にも「装丁に関する自分の知識を総動員させた作品を作りたかった」「そもそも東方Projectというジャンルが、このような突拍子もない創作物に比較的寛容」といった理由もあります。

―― かなり変わった本だと思うのですが、依頼した印刷会社さんの反応は?

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 至極当然ですが、本の概要を丁寧に説明すればするほど、印刷会社の担当者さんの目や声が曇っていき、説明し終えるころに「……あの、大変申し上げにくいのですが……」と丁重にお断りされるケースが続きました。正直、「あっ、面倒な客が来たな」という反応でしたね(笑)。

 最終的に、この依頼を引き受けてくださった印刷会社さんの担当さんも「こんな本を作ろうとする作者が一番天邪鬼だ」と半ばあきれたように笑っていらっしゃいました。

 ただ、あまりにも複雑怪奇な本ゆえ、こちらのミスもあって何度か本当に乱丁落丁させてしまった苦い経験もあります。印刷会社さんとしても、正しく意図する通りに乱丁落丁させるのは、とても大変だったようです。

―― 普通だったらワケが分からない状況ですからね、“正しく意図する通りに乱丁落丁”って。

 完成版が刷り上がった後も、本文中にパケ(麻薬)を模した真っ白な粉末を仕込む作業があり、具体的に言うと、業務用コンスターチ(※)をスプーンひとさじ分すくい上げ、透明なチャック袋に入れては、指定のページにセロハンテープで貼り付ける作業を1冊1冊やっていきました。

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 8月初旬にこの作業をしていた(本書は2019年の夏コミに合わせて出したため)、クーラーや扇風機を回してしまうとコンスターチの粉が風で舞ってしまうので、締め切った部屋の中、サークルメンバー皆で汗だくになりながら作業をしておりました。

※コーンスターチ:トウモロコシを原料に製造されたデンプン。お菓子作りのほか、印刷分野などでも用いられる。ちなみに『この作者、天邪鬼につき』の読者からは「イベント帰りに、警察から職質を受けてヒドい目にあった」という報告もあったとか。


ここに合法的な白い粉があるじゃろ

これをこうして

こうじゃ
気が遠くなる本の数

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