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インドネシア人が日本語で洋楽カバーしたら人生変わった YouTuberレイニッチ、空前絶後の大反響に「見つかっちゃった」(1/2 ページ)

2020年、現実に起きた夢のある話。

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 インドネシア生まれのとあるYouTuberが、米国を中心に世界規模でバイラルヒット中の洋楽曲「Say So」をオリジナルの日本語歌詞でカバーしたところ、空前絶後の大反響に。本家本元のDoja Cat本人も注目するほどのスマッシュヒットとなり、日本でのメジャーデビューも決定。2020年、世界をクロスする夢のような出来事が、現実に起きました。

Doja Cat本人も認めた日本語カバー

 レイニッチはインドネシア生まれ、スマトラ島在住のYouTuber。甘めの声質を生かし、自身のチャンネルにJ-POPやアニソンカバー動画などを投稿してきました。3月、TikTok上のダンス動画をきっかけにバイラルヒット中だったDoja Catの「Say So」の歌詞を日本語に訳し、80年代シティーポップを思わすスタイルでカバーした動画を公開すると、1800万再生も射程内の世界規模でのヒットに。ついにはDoja本人の目にもとまり「やばい」と言わしめるほどのセンセーションを巻き起こしました。

 Doja Cat自身、かねて業界人から絶賛される存在でしたが、コロナ禍に「Say So」が爆発的ヒットとなったことで知名度が急上昇。SNS時代のアメリカンドリームの体現者として注目され、名実ともに2020年を代表するアーティストの1人となりました。レイニッチも本家Dojaが実現したアメリカンドリームを追いかけるかのように、日本デビューが決定。日本が誇るトラックメーカーtofubeatsによるリミックス版が9月にデジタルリリースされています。

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レイニッチ
2020年、あちこちで流れていた本家「Say So」

 「Say So」だけではなくJ-POPからアニソンまで流ちょうな日本語で歌い上げるレイニッチですが、日本語は全く話せないそう。また甘い歌声とナチュラルなラップは本家Dojaも認める腕前ながら、歌を習った経歴もゼロ。専門学校でロボット工学を教えていた経歴を持つ超理系女子で、少し前までYouTubeは趣味の領域だったとか。

 なぜインドネシア人が日本語で洋楽をカバーしようと思い付いたのか。ねとらぼ編集部はスマトラ島のレイニッチへZoomを通じてアタック。「Say So」大ヒットに至るまでの軌跡と、これからの展望や私生活の変化を聞いてみました。


日本デビュー後もジャングルとほど近いスマトラ島に住む

インドネシア出身、現在スマトラ島のリアウ州在住の女性シンガー。

日本語の『音』の美しさに惹かれ、日本語を話せないにもかかわらずJPOPカバーを中心に動画を上げはじめ、2016年よりYouTube活動をスタートさせる。

80年代シティポップから最新のアニソンまでという幅広い選曲と、ヒジャブをかぶったキュートな見た目と耳に残る甘い歌声が徐々に注目される。

2020年4月、DojaCatの「Say So」の日本語カバーがDojaCat本人から大絶賛されたことにより、一躍話題になる。

Say So – Japanese Version (tofubeats remix)

Hot Pink - Doja Cat

真夜中のドア

原点は“歌い手”カルチャー

レイニッチ 今日は私のための時間を取ってくれてありがとう!

―― こちらこそデビュー前の忙しいタイミングでありがとうございます! 早速ですが、なぜ日本語で歌おうと思ったのですか?

レイニッチ 私がYouTubeを始めた2015年当時は、落ち込むことが多い時期で、何か新しいことを始めたいと思ったの。3歳くらいから歌うこと自体はずっと好きだったけど、自分の歌声を録音したことはなかった。歌を教室や学校で習ったことも全くなくて。

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 最初は日本語でも歌わないし選曲も洋楽ではなかったけど、たまたま、歌うこと、特に日本語で歌うのが好きな“歌い手インドネシア”というコミュニティーを発見したことで変わった。それまでは日本の歌はほとんど知らなかったけど、コミュニティーの仲間から教わったの。全ての始まりはそこから。

―― 歌い手文化が日本の外にまで広がっているとは……。

レイニッチ 私の目標はれをるさん! 歌い手として有名な方で、私と同じくカバーからスタートして、自分の音楽を出すようになった。自分と似ているとまでは言えないけど「共通点があるね」って言ってくれる人もいるのがうれしい。ボーカルスタイルとか小柄な体形とかね。日本の音楽や、ボーカロイド文化も彼女を通して知った。彼女は私にとってミューズなの。

―― いい話……。インドネシアで日本はどんなイメージなのですか?

レイニッチ 若い世代は特に、日本のアニメや漫画に共感していると思う。私も10代のころはよく見ていたし、アラサーになっても好きな人は多いんじゃないかな(笑)。日本のアニメや漫画はインドネシアで有名。

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―― レイニッチさん自身はもうアニメを卒業したと。

レイニッチ いまは長いシリーズについていく体力がなくて(笑)。以前は「名探偵コナン」が大好きで、アニメはもちろん漫画も読んでいたの。いまでも映画は見ているし、スタジオジブリの作品は全部大好きで一番なんて選べない! どれも等しく愛してるから。

アニソンカバーにも積極的

「Say So」日本語カバーが世界的大ヒット

―― Doja Catの「Say So」を日本語でカバーした動画が1800万再生も間近。本人もSNSで配信中に「やばい!」と喜んでいましたね。

レイニッチ Dojaから反応があったときは「あああ! ほんとに? こんなことが? もっとうまくやれたかも……」って大騒ぎしちゃった。いろいろなリアクションがあるからエゴサーチは結構するタイプなの。ネガティブな意見もあったけれど、あれからTwitterで大騒ぎになってもう大変だった。

 両親も……どう言ったらいいのかな。ショックを受けた状態(笑)。ママがご近所に話してまわってた(笑)。いまはこんな時期だしあまり外に出ないんだけど、隣のおじいちゃんおばあちゃんまで「YouTubeで見たよー、歌っていたあの子でしょ」って。「見つかっちゃった」って思った(笑)。

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―― それまでカバーしてきた楽曲は、J-POPやアニソンも多かったですよね。どうして「Say So」を選んだのですか?

レイニッチ 「Say So」はDoja Catのライブイベントで初めて聞いたの。その時点で大好きになって夢中になった。自分でも歌いたいと思ったんだけど、私のチャンネルはほとんど日本語カバーで、たまに韓国語や英語でしょう。だけど曲調はかわいいしシティーポップらしさがあるから、日本語に訳したらイケると思った。歌うときは空気感とかバイブスを大切にしたの。みんなに共感してもらいたいと思ったから。

―― メロディーはもちろんですが、サビは特に耳に残りやすい歌詞ですよね。「Say So」は意中の男の子に積極的にガンガン迫っていく内容ですけど、レイニッチさん自身は共感できますか?

レイニッチ 実はそこまで共感できない(笑)。いまよりもっと若いころはあんな感じだったかも。でもあんなにたくましくはなかった。私は人見知りだから(笑)。

―― か、かわいい……。リミックス版のリリースで、これから日本の女の子がカラオケで歌うかもしれないですよ。

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レイニッチ それが現実だと全く感じられなくて……。まさかこんなことになるなんて、想像すらしたことなかったの。ゼロよ、ゼロ。Dojaに認知されたことも含めてこれだけ大騒ぎになったことも、全部が想定外。動画そのものはシンプルだしね。だからすごく感謝している。現実味は全然ないけど。

Tofubeatsによるカバー版「Say So」

流ちょうな歌いっぷりとは裏腹、日本語は全く話せない

―― 日本のファンから反応はありましたか?

レイニッチ 友達やチャンネル登録してくれたファンに教えてもらってネットのコメントを見た。何もかもが本当に想定外だから「何事なんだろう」って戸惑ってる。私は日本語が話せないから、少し不安もあるの。

―― 日本語は全くしゃべれないんですか!? 歌声を聞いていると、発音にほとんど違和感がないので意外です。

レイニッチ ありがとう~! 全然読めもしないし、もちろん書けない。ローマ字で書かれた日本語を歌うことしかできない。発音は耳で覚えて歌っているの。

 だからトリッキーな単語があると戸惑っちゃうこともある。何曲か歌ってきて、ローマ字でこの表記ならこう発音すると覚えてきたけど、たまに変則的な単語が出てくると混乱して困っちゃう。そういうときはオリジナル版の曲を聞いて解決しているよ。

―― お気に入りの日本語はありますか?

レイニッチ アメ(雨)って単語が好き。雨が好きだから。本当にそれだけなんだけど(笑)。あとスゴイって単語を覚えてからは、友達と話すときに「it's スゴ~イ」とか使っているよ。

―― SUGOI! ちなみにインドネシア語でスゴイは?

レイニッチ keren(クレン)!


「(日本語で)スゴーイ」

これからのレイニッチ

―― YouTubeは趣味で、平日は働いていると聞きました。

レイニッチ 以前はね。YouTubeを始めた当初は専門学校でロボット工学を教えていたけど、職場の移転が決まってフリーランスになったの。いまはYouTubeに専念している。本当についこの間までただの趣味の範囲内でしかなかったんだけどね。

 もちろん、最初のターニングポイントは日本語版「Say So」がヒットして、私の人生がまるっきり変わったこと。チャンネル登録者の数も突然ガンッと増えたし、レーベルから声をかけられるきっかけにもなった。この出来事はかなり大きかったな。YouTubeもだけど、これからは音楽活動と両方やっていきたい。YouTubeで新しいことを試したいし、チャンネル登録者を楽しませたい。感謝を示したいの。

 新しい音楽を始めたいとも思っていて、まずは自分の音楽を作りたい。ミックスやマスタリングも自分でやっているから方法は分かるけど、実際に試してみなくちゃ。いまはそれが夢っていえるようになった。3つの言語で歌っていけたらいいな。日本語、インドネシア語、英語、全部やってみたい。でもまだライブパフォーマンスには自信がなくて。部屋で歌うのとは別物だから修行中。いつか日本に行くまでに猛練習しておくね。

―― 人生を変えてくれたともいえる、Dojaに会えるとしたらどんな話がしたいですか?

レイニッチ まず何を話すかリストを作っていかなきゃ(笑)。「若いのに才能豊かでスゴイですね」とか「大好きです」とか「みんなあなたに憧れています」とか。あぁぁ準備しとかなくちゃね!

―― 謙虚さがとてもすてきだなと思います。日本でのデビューなど、ものすごい勢いで環境が変化していく中で、大切にしている言葉や考え方、支えはありますか?

レイニッチ 自分に正直に、何があっても私は私のままでいようと努めている。私には賢い格言なんてないけれど、自分にうそだけはついちゃダメ。どんなことがあっても私がやりたいことに誠実でいなくちゃ。

―― 最後にファンへ一言お願いします。

レイニッチ ありがとう、心からありがとう! 私のことを知ってくれて、私の音楽を聞いてくれて、精いっぱいお返しできるように頑張るから応援していてね。みんなと直接お話できる機会があればいいな。いつか会えますように!


いつか来日がかないますように
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