ニュース

「ウマ娘」を遊んだら育成ゲームとしても良作だったのでベタ褒めする今日書きたいことはこれくらい(1/2 ページ)

そこはかとなく感じる「PS・SS時代くらいのギャルゲー感」。

advertisement

 どうもこんにちは、しんざきです。フィットネスバイクからトレーニング施設を強化したらなぜぞうきんがけになるのか、どうしても納得いきません。なぜなんだ秋川理事長。

 ということで、最近「ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)」を遊び始めまして、大変楽しんでおります。現在の進捗状況としまして、初期ウマ娘はゴルシ以外は育成目標達成、あとサイレンススズカ、シンボリルドルフ、オグリキャップ、スーパークリークあたりで目標達成できました。URA決勝まで勝てたのはまだサクラバクシンオーとサイレンススズカだけですけど。キングヘイローの育成難し過ぎんか?

 あ、皆さん既にご存じとは思うんですが、ウマ娘というのはCygamesさんのゲームアプリでして、競走馬を擬人化した「ウマ娘」を育成してレースでの勝利を目指す育成シミュレーションです。当初2018年リリース予定だったんですが、2年以上の延期を経て一時はリリースすら危ぶまれていたところ、先月ついにリリースされました。ホント、開発チームの皆さんのご苦労が偲ばれます。

advertisement

 で、ウマ娘をしばらく遊んでいるうちに、「これ育成ゲームとしてもめっちゃよくできてないか……?」と思ったので、今回は「育成ゲームとしてのウマ娘」という話をメインに、「ウマ娘を遊んでいて気付いためちゃ面白ポイント」について書いてみようと思います。

 いつものことですが、私がTwitterで「ウマ娘おもしれえ!」って騒いでいたら見かねたねとらぼさんが「書いてもいいよ」と言ってくれただけでして、特にPR記事ではありません。よろしくお願いします。

 前提として、プレイヤーとしてのしんざきの立ち位置なんですが、

  • 競馬ゲームはPS時代くらいまでは結構やっていた。初競馬ゲームはファミリージョッキー、それ以降ダビスタ、サラブレッドブリーダー、ウィニングポストあたりのシリーズ作はかなり触っている
  • ただソシャゲはほとんどやったことがなく、ソシャゲ用語も全然分からなかった。「周回? 凸? なにそれ共通用語なの……?」というくらいのレベル
  • ここ10年くらいは競馬にそれほど触れていなかったため、最近の競馬事情についてはあまり知らない

 ――くらいの経験値および知識量です。よろしくお願いします。

ライター:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。

Twitter:@shinzaki

育成ゲームとしてのウマ娘のすごさ

 ウマ娘を遊んでいて、「これもしかして結構すごいのでは……?」と思ったポイントは、要約すると下記の3点です。

advertisement
  • 難易度バランスが絶妙で、勝つのが困難なレースには一筋縄では勝てず、レースで勝つことにきちんと達成感がある
  • それでいて「これだけやっていればOK」という「鉄板の育成方法」が(サクラバクシンオーを除いて)ほぼ存在せず、工夫の余地が非常に広い
  • プレイヤーの成長曲線がめちゃくちゃよく考えられている

 まず、これは一般論として言ってしまっていいと思うんですが、「課題達成の難しさ、それに伴う達成感」と「プレイヤーにとっての工夫の余地」を両立させるのって、かなりゲームバランシングとして難しいんですよね。難易度がシビアになればなるほど、「とれる選択肢」というのは減っていくのが普通です。「このハードルを越えるためにはこうしなくてはいけない」という制約が増えて、攻略法が限られていく。

 ウマ娘のレース、特にG1やURA決勝ともなると結構勝つの大変でして、周囲は一流ウマ娘ばっかりでガンガンスキルを発動してくるし、周囲を囲まれちゃうと突破するのも大変。レース自体が本物の競馬さながらによくできているということもあり、一筋縄ではいかないんですよ。何も考えずにポチポチしていれば勝てる、という難易度でないことは確実です。

 高いハードルこそ越えがいがあるというのは間違いない話でして、苦労に苦労を重ねて日本ダービーや有馬記念のような高難度レースで勝てた時の達成感はひとしおです。ウマ娘がまた、感情移入を誘ういいキャラぞろいであることもあって、「難度の高いレースで勝ちたい」という目標をプレイヤーに抱かせることについては、ウマ娘は非常に高い誘因力を持っていると言っていいでしょう。

 ところがですね。それだけ高いハードルが用意されているというのに、ウマ娘って、「このレースを勝つには必ずこうしなくてはいけない」とか、「これだけやってればこのレースには勝てる」という、いわば「鉄板」育成方針というものが(後述するごく一部の例外を除いて)ほぼないんです。これ、かなり驚きました。

 例えば、「スピードを○○以上にして、スタミナは××以上にしておけば大体勝てる」みたいな法則が、2回目に同じキャラでやると全然当てはまらない。枠順やスキル発動のようなランダム要素が絡むことももちろんありますが、サポートカードの状況、対戦相手の作戦や位置取り、バ場の影響からスキルの取得・発動状況に至るまで、勝敗に関連する要素がめちゃくちゃ幅広いために、「誰かがうまくいった攻略方法が、他の誰かでも必ずうまくいく」ということをほぼなくしている。

advertisement

 もちろん運やランダム要素も絡むんですが、一方で運ではない部分のシェアも非常に大きいので、勝敗にちゃんと納得感がある。

 この「再現性のなさ」「運次第、だけではない勝敗の納得感」は、本当の競馬さながらです。

 Twitterとか大型掲示板とか見ていても思うんですが、これだけたくさんの人が遊びこんでいて、「鉄板の攻略法」というものが全く形成されないのって、結構ただごとじゃないと思うんですよ。「これだけやってればOK」っていうの、できちゃうとゲームが作業になっちゃいますからね。鉄板が存在しないからこそ、プレイヤーはそれぞれの試行錯誤ができる。

 一方で、これが本当にすごいと思うんですが、「なのに勝ち筋はめちゃくちゃ広い」

 ウマ娘って、パラメーターが「スピード、スタミナ、パワー、根性、賢さ」と5種類ありまして、基本的にはどのパラメーターに重点を置いていくかを考えながら育成するんですが、ここでの方針もものすごく幅広いんです。

advertisement

 例えば「賢さ特化」っていう育て方がありまして、パワーやスタミナではなく、スキル発動確率に影響する賢さを最優先で上げる。それで体力とスキルポイントを確保しつつ、大量のスキルをレースでガンガン発動させて、スキルで勝つ。もちろんやり方にはいろいろシビアな点もあるんですが、これでダービーやら天皇賞やら、高難度レースちゃんと勝てるんですよ。通常なら切り捨てられがちなパラメーターに特化するのが実は強い、というの、ゲームの懐が広い証拠だと思います。

 もちろんスピード特化とかスタミナ特化といったやり方もあれば、スタミナとパワー重視とか、オールラウンドにどのステータスも上げるとか、どんなやり方でもハードルを越えられる勝ち筋があるんです。課題のハードルは高いのに、それを解決するルートは幅広い。このバランス、本当に絶妙だと思います。

 一方、単に「難しくって、試行錯誤が必要」なだけかというと、その逃げ道もちゃんと用意してるんですよね。そう、サクラバクシンオーやハルウララの存在です。

 このSNS時代ですから当然開発側も想定していたと思うんですが、ウマ娘がリリースされて程なく、「サクラバクシンオースピード特化」という攻略法が有名になりまして、あちこちでバクシンバクシンと言われ始めました。本筋と関係ないんですが、これがルアー会社のバクシンオリジナルさんを直撃しちゃったの本当もらい事故でお気の毒だとは思うんですが(※)。

※編注:「バクシン」の検索結果が完全にサクラバクシンオーで埋まってしまい、エゴサーチができなくなってしまった

 「短距離・逃げ」という条件に限っていうと、「他の能力には目もくれず、ひたすらスピードに特化させる」という攻略法が通じる。これが、ものすごく有効な「初心者のための学習の入口」として動作していると思うんです。

advertisement

 このゲーム、ダイワスカーレットが初期ヒロインみたいな立ち位置になっていて、何も知らない初心者は最初ほぼダイワスカーレットで遊ぶと思うんですよね。で、ダイワスカーレットは結構育成が難しいので、最初は大体オークスか秋華賞くらいで敗北する。

 で、Webで攻略法を調べてみると、そこに待ち受けているバクシン教の野望。それに基づいてサクラバクシンオーを育ててみると、あっさりURAファイナルまで勝ち抜けられる。「なんだこれ気持ちいいな!! あとサクラバクシンオー残念委員長でかわいいな!!」ってなる。

 これ、多分なんですけど、開発側が想定していた一つの代表的な導線じゃないかと思うんですよ。遊べば遊ぶほど、「ダイワスカーレットで操作に慣れたら、サクラバクシンオーで気持ち良く勝って、ゲームの味わいを覚えてね!」という開発者さんの声が聞こえてくる。言ってみればゲーム内チュートリアルなんじゃねえかと。

 もちろん、サクラバクシンオー自身も、継承やら覚醒やらを駆使しながら育成を工夫していくともっともっと強くなる。一方、他のウマ娘についてはさらに試行錯誤の余地と必要性がある。

 初心者にウマ娘のUIや育成方法を覚えてもらいつつ、勝利の気持ち良さも味わってもらう。そしてその後、もっと難しいウマ娘で試行錯誤の楽しさを味わってもらう。遊んでいるうちにだんだん、サポートカードや継承の重要さ、友情トレーニングやたづなさんお出かけの強力さにも気付いていく。そして、「自分ならではの攻略法」を徐々に確立させつつ、もっと色んなサポートカードが欲しくなってしまう。

 このへん本当よくできてる導線だよなあと感心しつつ、私自身まんまとハマってしまったわけなんです。

 なにはともあれ、「一部のレース、一部のウマ娘は難易度高くてちゃんと達成感がある」「けど勝ち筋は広くっていろいろ工夫しまくれる」「けど初心者がハマれる逃げ道もちゃんとある」という、この3点については、ウマ娘に関して文句なく高評価をささげたいと考える次第なんです。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.