人魚のローラが「キュアラメール」に変身 「トロピカル~ジュ!プリキュア」で描かれた“足を得る”選択について:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
人魚姫の物語は足を得てからが本番なのです。
人魚のままでプリキュアになることの是非?
さて、この「キュアラメール」の誕生、子どもたちはもちろんのこと、大人プリキュアファンにも大きく響いたようです。放送終了後のTwitterの人気トレンドには「キュアラメール」が入り、大きく盛り上がりました。
もちろん「ローラがプリキュアになれてよかった」という肯定的な意見が大半だったのですが、一部では「足を得るのではなく、人魚の姿のままプリキュアになった方がよかったのでは?」という意見も一部見られたことも事実です。
もちろん、人魚スタイルではなく「足のある人間スタイル」になったのは、身も蓋もないことを言えば「商業上の理由」が1つにあるものと思われます(アニメ本編やプリキュアショーなどでも足がないと動かしづらいですしね。推測の域をでませんが)。
ただ「人魚スタイルのままの方が良かった」という思いも分からなくもないのですよね。
もちろんプリキュアは子どもたちのためだけに描かれるアニメであり、外野の大人ファンの意見に意味がないことは承知の上で、一部の大人のプリキュアファンたちがローラの初変身のときに何を思ったのか見ていきたいと思います。
人魚としてのアイデンティティー
おもちゃなどの展開をみる限り、この先ローラは人魚姿に戻ることなく人間の姿のまま活動していくものと思われます。つまりローラは「人間になった」のです。
ただ一部では「ローラには人魚の姿に誇りを持ってほしかった。わざわざ人間と同じ姿になる必要はあったのか?」「人魚の姿のままで、人と過ごせる世界の方が多様性のある健全な世界なのでは?」という言説も見られました。
いわゆる「人魚としてのアイデンティティー」の提示方法に疑問を持った人も多かったようです。
これに関しては、この先の展開でアイデンティティーの問題が解決するかもしれませんので何とも言えませんが、個人的には「人間になりたいと願ったローラが、人間になった」のですから、これ以上何も文句のつけようがありません。「なりたい自分になる」ことはずっとプリキュアで描かれてきたことであり、過剰な道徳的側面はあくまで副次的な要素だと思います。
また一部では、人魚という存在を「ハンディキャップを背負った子どもたち」のメタファーとみなし、歩けることこそが良いことと一方的に定義づけるのではなく、むしろ人魚のままプリキュアとした方がハンディキャップを背負った子どもたちを勇気付けるのでは、という論調もありました。
ただ、前作「ヒーリングっどプリキュア」のように医療がテーマの一つならともかく、今作の明るいテーマ的にも人魚が「ハンディキャップを背負った子ども」のメタファーとするのは、やや考えすぎだとも自分は思います。
なまじローラの人魚姿でのポジションや振る舞いが完璧な立ち位置だったために、人魚姿のままでいてほしい、という気持ちも良く分かるのですけどね。
とにもかくにも「自分で道を切り開き、プリキュアへとなった人魚ローラ」を祝福したいと思います。
ローラが一番やりたいこと
ローラが「今、一番やりたいこと」は「まなつたちと一緒に過ごすこと」と明示され、晴れて人間になり「キュアラメール」へと変身しました。ではローラにとって作品のテーマでもある「今、一番大事なこと」は何なのでしょうか。「まなつたちと過ごしたい」の先にある彼女の「一番大事なこと」がこの先のローラの物語へとなっていくのではないでしょうか。
この先ローラは「足を得ることができてよかったね」で終わるのか、それとも「足を得たことによる代償」が描かれるのか?
明るく楽しい作風のトロプリですので、暗いお話にはならないと思いますが、この先の展開も楽しみですよね。
さて、そんな魅力が詰まったローラなのですが、せっかくプリキュアになったことですし、ぜひたくさんの人に広めてほしいのです。
ローラは(偶然かもしれませんが)“写して人に見せると病気から逃れられる”という「アマビエ」に似ている、と一部では言われています。
みんなの手でローラの魅力を広めれば、子どもたち、そして世界が元気になり災厄も遠のくのかもしれません。
2021年の人魚姫ローラは自分の手で道を切り開きます。人魚姫の物語は、足を得てからが本番なのです。
「トロピカル~ジュ!プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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