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30%がメタバースでの“お砂糖”経験あり―― 既に身近になりつつある「メタバース恋愛」の驚くべき実態とは【バーチャル美少女ねむ寄稿】(3/4 ページ)

“お砂糖”“お塩”って知ってる?

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メタバースでの「お砂糖」とは?

 これまでメタバース内での恋愛について見てきましたが、実際に恋が成就して恋愛パートナー、つまり物理現実でいうところの「恋人」が出来た人はいるのでしょうか?

 実は、VRChatなどのソーシャルVRの一部では恋人を作ることは既に文化の一つとして定着しつつあり、恋愛パートナーの事を日本のソーシャルVRでは俗に「お砂糖」と呼んでいます。なぜ「お砂糖」と呼ばれるようになったかには諸説あるのですが、砂糖のように「甘い関係」というところから来ているようです。あえて物理現実における男女関係に使われることの多い「恋人」という表現を避けているのは、先述したようにメタバースにおける恋愛は物理性別に必ずしもとらわれないものになりつつあること、また、後述しますがメタバースにおける関係性が物理現実における人間関係とは一線を画したものになっている場合が多いことなどが考えられます。

 なお、恋人関係に至ったことをソーシャルVR内の友人に報告することを「お砂糖報告」といい、逆に恋人関係を解消することを「お塩」といいます。

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お砂糖報告の例

 こうしたソーシャルVRにおける「お砂糖」の実態を調査するため、私はさまざまなパターンのお砂糖カップルにこれまで取材を行っており、了承が得られた場合には私の配信にカップルまたは片方に出演してもらい、公開インタビューに答えてもらっています(基本的に「お砂糖」はひっそりと行われているものなので、出演してもらえるケースは多くはないです)。

 カップルの組み合わせとしては、これまで説明してきたとおり、「物理男性+女性アバター」のユーザーが数としては多いため、そのタイプのユーザー同士のカップル(物理的には男性同士・見た目上は女性同士のカップル)が比較的多いです。しかし、物理男女のカップルも普通にいますし、変わったところでは「物理男性+女性アバター」と「物理女性+男性アバター」の性別逆転型のお砂糖カップルもいると聞いたことがあります。

 恋愛関係ですので、必ずしもいい話ばかりではなく、残念ながら「お塩」になって気まずい関係になってしまうこともありますし、「物理男性+女性アバター」のユーザー3名による三角関係や、痴情のもつれなども当たり前のように起こっています。

 また、前章で触れたとおりアバターや声からは物理的な性別は判断できない場合も多いです。物理的な性別は秘密にしている方も多いため、気になるからと言って軽々しく聞くのはマナー違反ですので注意しましょう(私は取材のために口外しない約束でこっそり教えてもらっています)。

 

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「お砂糖」できたのは30%

 さて、ソーシャルVRの住人のうち、いったいどれくらいが実際にパートナー関係を経験しているのでしょうか?

 「ソーシャルVRで出会った相手と恋愛パートナー(いわゆる「お砂糖」関係)になったことはありますか?」と聞いたところ、VRChatの場合、実に31%の方がYESと答えていました。「恋に落ちた」は40%でしたので、そのうちの約8割が実際にパートナー関係に至っているということになります。

 実際に「パートナーができた」と「恋に落ちた」の相関関係を分析したところ、当然ですが、かなりはっきりと「相関有り」と認められました(相関係数 r=0.68)。

ソーシャルVRでの恋人(VRChat)- ソーシャルVR国勢調査

 「パートナー経験率」を条件別でみたところ、サービス別ではやはりVRChatの31%がトップで、一番低いclusterでは7%となっていました。理由は「恋に落ちた」と基本的に同じだと考えられます。

 物理男女別では、物理男性が29%に対して物理女性は37%と8%も多くなっており、「恋に落ちた」よりも差が倍に開いています。理由としては、現在のソーシャルVRでは物理女性の比率が極端に低いため「VR恋愛でも物理性別が重要だ」とする残り25%からモテていることが考えられます。ただし「VR恋愛には物理性別は重要でない」75%の中には「中の人が物理女性だとむしろめんどくさい」と嫌厭する人も一定数おり、なかなか一筋縄ではいきません。このため、中の人が物理女性であることをソーシャルVR内で隠している方もいらっしゃいます。

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 地域別では「恋に落ちた」ではトップだったヨーロッパの41%を抜いて、北米が43%でトップに躍り出ました。日本は29%と大きく下がりました。アメリカ人には、比較的カジュアルにカップルになったり別れたりする人もおり、国民性の違いが出ている可能性があります。そういう意味では、日本人はメタバースにおいても、比較的恋人を作る積極性には欠けると言えそうです。

 「パートナー経験率」と累計プレイ時間の相関関係を分析したところ、時間が長くなるほどに恋をした人の割合がどんどん増えていき、1000時間で48%と約半数に達し、5,000時間だと72%に達しました。「恋に落ちた」以上にはっきりと時間との間に「相関あり」と認められました(相関係数 r=0.46)。

ソーシャルVRでの恋人とプレイ時間 - ソーシャルVR国勢調査

 つまり、メタバースで過ごす時間に応じて、パートナー経験者が増えていくということです。これまで説明した通りメタバースにおける「パートナー関係」は物理現実の「恋人関係」とは異なる性質が多いものの、やはりメタバースを「人類が人生を過ごす新たな仮想空間」と捉えると、そこで過ごすうちにいつか「特別な関係」が生まれるのは、人間として当然のことであると言えるのかもしれません。

 また、「VRでの恋愛パートナーは現在何人いますか?」を聞いたところ、基本的に条件に関わらず90%以上が「一人」と答えており、多くの場合メタバースにおける「パートナー関係」は一対一の関係であることがわかりました。唯一の例外が北米で、「一人」は83%まで下がり、残り17%が「二人」パートナーがいると答えていました。ここにも国民性の違いによるパートナー関係への考え方の違いが反映されているかもしれません。

VR恋人の数(条件別)- ソーシャルVR国勢調査

 この質問をした私の意図としては、メタバースにおけるパートナー関係は物理現実の常識にとらわれない関係なので、もしかすると複数のカップルの掛け持ちが当然になっているのではないか、という仮説がありました。しかし、結果としてはカップルはメタバースでも結構「一途」だということがわかりました。ただし、物理現実でもいると思いますが「特定の相手に縛られたくないために、複数の相手と深い付き合いはするが、あえて公式な恋人関係は結ばない」という方は当然メタバースでもみかけますし、そういう人はこの数字には反映されていません。

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