「意見が違う人=敵」ではない デリシャスパーティプリキュアが子どもたちに伝える“SNSとの接し方”:サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)
プリキュアは時代に合わせて表現することも柔軟に変わっていくのです。
まさかプリキュアで「厄介なフォロワーのせいでSNSを止めざるを得ないインフルエンサー」といった“現代のリアル”が描かれる時代が来るとは思っていませんでした。
2022年のプリキュアは、インターネットの危険性やSNSとの向き合い方までもが描かれるようになり、その大切さを子どもたちに伝えているのです。
「ごはんは笑顔」がキーワードの「デリシャスパーティ・プリキュア」(・は白抜きハートマーク、以降省略)が面白いのです。
農林水産省も推しているこのアニメ、おいしそうにごはんを食べるプリキュアの描写や、作中で「料理を作る前には、必ずせっけんで手を洗うシーン」が挿入されるなど、料理に関する丁寧な描写が子どもたちや保護者にも大好評。子どもたちの「食育」の観点からも注目されています。
そんなデリシャスパーティプリキュアは、「シェアする喜び」もテーマとなっています。その「シェア」の一つとして「情報のシェア」、すなわち子どもの「SNS事情」が丁寧に描かれているのも特徴です。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
- これまでのプリキュア連載一覧
プリキュアで描かれたSNSの危険性
デリシャスパーティプリキュア第8話「ちゅるりん卒業!?おでかけ!おいしーなタウン」ではSNSの危険性と、その向き合い方についてのストーリーが展開されました。
主人公の一人、華満らん(キュアヤムヤム)は食べ歩きが大好きな女の子。プリキュア界のインスタグラムのようなSNS「キュアスタ」においしいご飯やお店の情報を載せて人気を博していました。
しかし、悪の組織ブンドル団が、そのSNS情報を利用してずっと悪事を働いていたことが判明します。悪用されるのを避けるため、華満らんは自身のキュアスタ更新を止めてしまいます。
いわば「厄介なフォロワーにSNSの情報を悪用されたインフルエンサーが、SNSの更新を止めざるを得ない状況に追い込まれている」といったところでしょうか。
SNSに情報をアップする行為は、たくさんの人に自分の好きなものをシェアできる利点がある一方で、情報を悪用する人も出てきてしまう危険性もある、というSNSの一面を子どもたちに伝えたのです。
しかし、プリキュアたちの保護者的立場でもあるローズマリー(マリちゃん)にも諭され、「SNSは誰が見ているか分からないので注意する必要はあるけど、悪用するやつが悪いのであって、あなたが好きなものを辞める理由にはならない」と結論付けたのです。
「意見が合わない=敵」ではない
また第9話「かみ合わないふたり?ここねとらんの合わせ味噌!」で描かれた、「キュアスタのアイコンをどうするかでプリキュア2人が対立してしまう」のも現代風の描写です。昨今のプリキュアでは、ケンカの原因もSNSの世界にあるのです。
そんなときもローズマリーさんは「意見を合わせるのではなく、思っていることを言い合える仲はすてきである」と結論づけました。
マリちゃん「あら。思ったことを言い合えるなんてすてきじゃない。何でも相手に合わせていたらそれこそいい関係とは言えないもの」
デリシャスパーティプリキュア第9話「かみ合わないふたり?ここねとらんの合わせ味噌!」より
特にSNSの世界では「意見が合う=味方」「意見が合わない=敵」と見なしてしまう傾向が強くあります。
空気を読んで本意でないのに周りの意見に同調してしまったり、意見が合わない人を敵と見なして攻撃してしまったりするのもSNS上では良くみられる光景です。
「意見が合わない人でも友達である」「意見が違うからこそ、自分にない世界を広げてくれる」、つまりはお互いに意見を言い合い尊重できる姿こそが良い関係である、とデリシャスパーティプリキュアでは描かれたのです。
本作においては、ローズマリーさんというクィア的、ノンバイナリー的なキャラクターにそれらを伝える役割が与えられ、いわゆる説教臭さも少なくコミカルに大切なことを子どもたちに伝えられているのも特徴の一つです。
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