「求められているうちはいいけど、そうでなくなった場合どうなるの」 片瀬那奈、40歳を前に見つめ直した人生:私の人生が動いた瞬間(1/2 ページ)
靴とファッションの通販サイト「ロコンド」の正社員となった片瀬那奈さん。
人生100年時代といわれる現代、「何歳からでも新しいステージに踏み出すのは遅くない」という考え方が広がっています。著名人も例外ではなく、ある分野で成功を収めた人が転機を経験し、別のフィールドで奮闘する姿は多くの人に勇気を与え、モチベーションやインスピレーションを与えています。
インタビュー連載 「私の人生が動いた瞬間」
片瀬那奈さんは、17歳でデビューし、モデルや俳優、タレントなどマルチに活躍。2011年からは日本テレビ系情報番組「シューイチ」で10年間日曜の朝の顔を務めました。そして2021年9月に、芸能事務所を退所し、フリーに。
フリーに転身後、SNSやYouTubeチャンネルの開設など精力的な活動を見せる中、12月1日からは、靴とファッションの通販サイト「ロコンド」の正社員として働き始める驚きのキャリアチェンジをしていた片瀬さん。インタビューでは、「正直、『(芸能界のお仕事を)一生やりたいです』って言えない」と芸能界という不安定な職業に対する不安や葛藤を語ってくれました。
芸能のお仕事は「一生やりたい」とは言えなかった
――「ロコンド」のYouTubeチャンネルで、芸能活動中は夢や目標を特に持っていなかったと話されていたのが意外でした。モデル業をはじめ、マルチに活躍されていたので、野心的な方かと思っていました。
片瀬那奈(以下、片瀬) いろいろやることが好きなんですよ。知らないことは知りたいし、やってみたい。食わず嫌いではなくて、食べてみて自分が好きなのか苦手なのか判断したい。10代20代30代で響かなかったことも、40代になって響くこともありますし、柔軟にいろいろなことに好奇心を持ってやってみるというのは自分の性格なのかもしれません。キチッと結果が出せているのかは分からないんですが。
――目標がないとモチベーションはどのように保たれていたんですか?
片瀬 モチベーションが下がるという状態にしたくなかったので、モチベーションは作らないようにしていました。それよりも私の場合は、小さな目標を決めて1日1日をちゃんとしっかり過ごしていれば明日は来るーと思って過ごしていたら、20年たっていました。悪い言い方をすると、日々に追われていたのかもしれません。
それに、芸能のお仕事はいただいてなんぼの世界ですから、私がゼロイチでこういうことをしたい、こんなことをやりたいんだ、と思ったところで成立する仕事ではないと思うんです。いただいた仕事を、いかに自分の中で消化して120%出し切れるか、という部分を大事にしていました。
――所属事務所を退所されたときは「自分のやりたいことについて考えるようになった」とおっしゃっていました。目標がなかった片瀬さんが、そう思ったきっかけや影響を与えたものがあったのでしょうか?
片瀬 本当にふと、ですね。ありがたいことにすごく恵まれて、いろいろな仕事もいただけていたのですが、自分が本当に一生やりたいことなのかと聞かれたら正直、「一生やりたいです」って言えないなとうすうすは気付いていたんです。
もともと、憧れの職業だったわけでもないけれど、自分はこの仕事しかしてきていないわけで、求められているうちはいいけれど、そうではなくなった場合どうなるんだろう、おばあちゃんになってもやっているのかな、老後とかどうなんだろう。という漠然とした不安はずっとありました。きっと、芸能人のみなさんなら経験したことあると思うんですよ。それに加えて、私は「こうなりたい」目標がないわけじゃないですか。このままでいいのか、とふと、2~3年前から考えるようになりました。
スキャンダルに巻き込まれ芸能活動に急ブレーキ 「まずは自分のことを大事にしよう」
――人生を見つめ直したわけですね。
片瀬 はい。そんな中で、2021年に急ブレーキがかかって、周りに迷惑をかけている状況もいたたまれなかったですし、まっさらな状態で自分がやりたいことをしっかり時間をとって見つけたいなと思い、退所しました。
――10代からずっと築き上げてきた環境から離れるという決断は、容易ではなかったと思うのですが、退所以外の道は考えなかったのでしょうか?
片瀬 正直考えませんでした。急ブレーキがかからなかったら、やりたいことがたくさんあるのに、大きな事務所の中堅的なポジションでもあったので冒険もできないし、周りの目や意見を見聞きしながら続けていくんだろうなという、想像しうる範囲内の人生を送っていたと思うんです。
――では、退社を決意した最後の決め手を挙げるとすると?
片瀬 迷惑をかけたくない、この一点です。申し訳ない気持ちが大きかったのと、私が挽回しますという気力が残っていなかったということもあります。それに、デビューからこんなに長く続けられるわけないと思ってずっとやってきていたので、ここまで芸能界にいられるなんてと驚いているくらいなので、ここがやめ時かなと。事務所のためにとか、誰かのイメージを回復するためにとかではなく、まずは自分を大事にしようと思ったからですね。
――ひとまずは休養されることが大前提だったんですね。その2カ月後に、YouTubeチャンネルを開設されます。なかなかのスピード感でした。
片瀬 退所する前からYouTubeを一緒にやりませんかという相談は受けていたんですが、事務所でやるとなると自由度が限られそうでしたし、当時はピンときていなかったんです。ただ、ちゃんと自分の言葉で発信できて、みんなとコミュニケーションがとれる場所があるといいなとは思ってはいたので、とりあえずやってみようということで生配信から始めました。
ただ、そのときはYouTuberに転身とか、新しいことをしてみようという精神状態ですらなくて、40歳にもなるし、第2の人生をちゃんと考えるために、まずは自分のことを大事にしようと。その割には立ち直り早いなって周りから言われましたけどね(笑)。確かに、早かったと言われてしまえば早かったのかもしれないですが、私的には早い遅いはあまり関係ないと思っています。まさか会社員になるとは夢にも思っていませんでしたが。
――YouTubeをやる上で大事にしたことはありましたか?
片瀬 愛情、熱量は一番伝わる部分だと思っているので大事にしてます。私がただプラモデルを作っている動画なんて絶対面白くないと思うんですけど、愛情を持っていろいろ語っていると、それを面白がってくれる人もいるんですよね。だから、そんなに再生数とかは人よりも気にしているわけではないのかもしれない。自分の趣味を共有出来て、その人がちょっとでも豊かになったり、背中を押せたり、その人の充実感につながっているといいなと思います。
あと、私の動画を見に来てくれる方は優しい(笑)。穏やかな人が多いので、それに助かっている部分はあると思います。
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