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「冷凍食品を使う後ろめたさを払拭したい」 宅配冷凍弁当サブスクに参入する味の素の思い(1/3 ページ)

価格設定にも深い理由が。

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 「味の素」では初となる、宅配冷凍弁当のサブスクリプションサービス「あえて、」が1月31日に発売され、約1カ月が経ちました(関連記事)。なぜ宅配冷凍弁当に参入するのか、サービス名の意味は――その思いや売れ行きなどについて聞きました。

「あえて、」のお弁当は全20種

 「あえて、」は混ぜご飯とおかずの一体型冷凍弁当。メニューは「ギョーザ、枝豆と干しえびのまぜご飯」「ネギ塩竜田揚げ、しらすと蓮根のまぜご飯」など全20種で、どれも肉や魚介、野菜と大麦の混ぜご飯に数種類のおかずと豊富な内容です。

 サービスは、Webで定期配送(1週間ごと~4週間ごと)の間隔、1回に届く数を「6食お届けコース」(1食あたり1177円)、「12食お届けコース」(1食あたり1069円)、「20食お届けコース」(1食あたり961円)から選んで利用します(※送料別)

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 忙しい生活の中で、献立を考えたり、買い物に行ったり、調理したりという手間を省ける「あえて、」は、食に関する「タイパ」への注目の高まりに応えたサービスと言えます。一方でSNS上では「高い」との声も。購入した人からの反響や、価格についての考え方などを、「味の素」コーポレート本部R&B企画部の羽藤さん、開発担当者の金澤さんに尋ねました。

「ネギ塩竜田揚げ、しらすと蓮根のまぜご飯」 大きさは、ほぼA5サイズ(縦15.4センチ×横20センチ×高さ4.3センチ)

なぜサブスクなのか

 さまざまな冷凍食品を手掛けてきた「味の素」ですが、冷凍宅配弁当に参入した理由として、2030年に向けて「味の素」が成長したい領域のひとつ、「フードアンドウェルネス領域」があるとのこと。

 「健康や幸せなどに関わる生活全般をトータルプロデュースすることを目指しています。これまでのようにスーパーでたくさんのお客様に販売する商品だけでなく、1人ひとりのお客様の健康や栄養に合わせた提案・提供ができる、新しい方向性でビジネスやサービスを開発しています」(羽藤さん)

 また、同社が実施した調査によると、多忙な生活の中で調理に掛ける時間は減少傾向にあるそうで、その現状にこれまでに培った技術で貢献しようとしたのもきっかけだといいます。

 「電子レンジのあたためで6分から7分で食事ができる『日常の食事をお弁当にする』というコンセプトのサービスで、週に1回くらい、ご飯とおかずがセットになったものを提供し、お客様の忙しい生活に役立てたいと考えました」(羽藤さん)

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 サブスク形式にした理由については、定期的に冷凍のお弁当が届けば自宅の冷凍庫に一定期間保存できるので、買い物の手間を省きたいというニーズに応えられること、6つ以上のまとまった個数で送ればお客さんにとっての送料の負担や環境負荷を減らせるということがあるそうです。

「あえて、」というサービス名の意図

 お弁当の内容については、さまざまなこだわりが詰まっているようです。

 「おいしさは当然のことなんですけど、同時に健康栄養にも大きな価値があると思っています。今回の商品は、食物繊維や食塩相当量、野菜配合量で1日当たりの摂取目安の3分の一が摂れるとという設計になっておりますので、一食で結果として健康のケアにもなるというところが、大きなポイントかなと思っています」(金澤さん)

 また、和・洋・中・エスニックなど、さまざまな要素を盛り込んだメニュー展開については、以下のように語ってくれました。

 「おいしさって単純なおいしさとプラス情緒的なおいしさや価値があると思っています。毎日食べていただくものなので、『今日は和食だったから明日はエスニックにしようかな』という選ぶ楽しさも提供させていただきたいと、メニューはかなり幅を広げております」(金澤さん)

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名前に込められたさまざまな意味

 ユニークなサービス名、「あえて、」については、冷凍食品など便利なものを使うときに感じがちなうしろめたさを払拭したいという思いがありました。

 「『あえて』という言葉を言い換えると、『積極的に』『意図的に』になると思うんです。便利なものをうまく取り入れてもらうことはよいことですし、『味の素』が作るものだから、おいしさとか安心安全の面とか自信があるので、積極的に意図的に生活に取り込んでもらいたいというメッセージで、お客様がを後押ししたいっていうのが『あえて』という言葉を選んだ理由です」(羽藤さん)

 その上で、句点「。」ではなく読点「、」としたのにも、さまざまな意味があるそうです。

 「ひとつはお客様によってサービスや製品を使う文脈がちがうのかなって思ってまして。例えばホームページにあるように、作り置きが尽きるころ、あえて木曜日の夜に使ってくださいとか、人によってメッセージを出し分けてるんですね。お客様に沿ったメッセージを『、』の前後に入れていきたいなと」(羽藤さん)

 さらに、「マルハラ」という言葉があるように「。」だと冷たく断定的なイメージですが、「、」だと後に何か続くイメージや、製品の「ほっと一息ついてほしい」という気持ちも込められるという理由で、こだわって選択したとのことです。

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