インタビュー

交わるのは“傘と傘立て” コミックシーモアが仕掛ける異色のBL漫画『放課後水入らず』、担当者に狙いを聞いた

「斬新すぎる」と話題のBL漫画はどのように生まれたのか。

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 電子書籍配信サイト「コミックシーモア」で公開されている“濡れ場がやさしい”BL(ボーイズラブ)漫画『放課後水入らず』(漫画:あぶく、原作:株式会社人間)をご存じでしょうか。7月22日の配信開始以来、ネット上で「私は一体、何を見たんだ…!?」「斬新すぎる」などと話題になっています。


放課後水入らず

 同作は、カップルの関係性における「攻めと受け」を「傘と傘立て」に描き換えた、新たなBLジャンル「カサバース」。これだけ聞くと、な…何を言ってるのかわからねー、となりそうですが、BLジャンルに一歩踏み出せない人に向けて企画された作品なのです。


水泳部に所属する立山と笠井

 登場人物(?)は、自分の泳ぎに自信をなくしマネジャー業に徹している水泳部2年生の立山(傘立て)と、そんな立山に思いを寄せる1年生エースの笠井(傘)。特設サイトによると、「棒」と「穴」をシンボリックに表現するために傘と傘立てを採用したそうで、他にも「(傘が)濡れる」「(傘が開いて)大きくなる」「(傘に傘袋を)かぶせる」など、BLに関わる事柄も傘ならではの比喩表現で表すことができるといいます。

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 公式X(Twitter)による「BL初心者の方のために『傘と傘立てのBL』を作りました」とのポストは、執筆現在で約1万9000リポスト、約4万1000いいねと大反響。あまりのカオスっぷりに読者からは「初心者ってなんだっけ」「上級者向けすぎて戸惑ってる」「ヤベーのが出てきたな……」と良い意味で困惑する声も上がっています。

 この作品がどのようにして生まれたのか、そして今後どうなっていくのか。企画を手掛けた「コミックシーモア」の担当者に話を聞きました。

最初から傘と傘立てでいく、と決まっていた

―― あらためて、今作『放課後水入らず』に込めた思いを教えてください。

担当者 今回の企画を立ち上げたのが、昨今BLが映像化されたりなど一般にも浸透してきて、「コミックシーモア」でも人気のジャンルのひとつではあるものの、もっとBL初心者含めて多くの方に読んでもらえるコンテンツを作りたい、という思いからでした。結果、おかげさまでかなり多くの方に読んでいただき、良いきっかけ作りができたかなと思っております。

―― 「傘と傘立て」をテーマにした理由を教えてください。他のカップリングのアイデアもあったのでしょうか。

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担当者 もともと梅雨の時期に実施したいという社内事情があり、梅雨といえば町中に傘があふれるからちょうど良いんじゃないか、ということからです。そのため、他のカップリングはなく、最初から傘と傘立てでいくと決まっておりました。

―― 漫画を担当したあぶく先生も「最初話を伺ったときに困惑した」「わたしは騙されているのかも」とおっしゃっていたようですが、あぶく先生に依頼した理由を教えてください。

担当者 あぶく先生は、もともと「コミックシーモア」内でも実績も人気もある方でしたので、今回ご連絡させていただきました。普段は獣人ものといわれるジャンルを描いているので、傘と傘立てもいけるのでは? と思ってのお声がけでしたが、実は最初この尖った企画をそもそも理解してくれるかどうかという心配もありました。しかし、すぐに理解していただき、とっても面白いと言っていただけました。

―― どのようにキャラクター設定やストーリーを考えていったのでしょうか。

担当者 傘で代用するということ自体がかなりシュールなので、話の筋は王道が良いのではと考えていました。実はもともとプロットは2案あり、ひとつは今回のスポ根もので水泳部の先輩後輩もの、もうひとつは親友同士で雨宿りしているところから告白される学園ものというものでどちらも甲乙付けがたかったのですが、お打ち合わせ時に先生から「水泳部の方は見えました」と言っていただけたので、そちらで決定しました。

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 その上で、BLあるある――どっちが先輩で後輩なのか、どっちが攻めで受けなのか、というところは意識して作っていきました。今回の企画の趣旨的にも先ほどの設定の話通り、王道のシンプルで伝わりやすいものが良いと思っていたので、万人のBL好きに受けるか、みたいなことは強く意識していました。

 弊社のBLをメインで扱っている部署にも事前に聞いていたのですが、みんなに「素晴らしい!」と太鼓判を押してもらった、良い設定、良いストーリーになったと思います。

セクシーだけどエロすぎない

―― 企画を進める上で大切にしたことや気を付けたことや、やらないと決めていたことはありますか?

担当者 シンプルで伝わりやすいものにするということ、そして、初心者の方に読んでもらうことを前提にしていたのでエロすぎないものにするというのは気を付けていました。

 最初にいただいたあぶく先生のネームでは画力がすごすぎて逆に18禁見えしてしまうということもあり……擬音や描写はソフトなものに変更いただきました。擬音は、あくまでも傘と傘立てでも成立するものにしたことで、セクシーには見えるけれどもエロすぎないものになったかなと思っています。

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現在のものより激しかった初期のネーム

―― 担当者として、一番気に入っているシーンを教えてください!

担当者 2人が絡む際の「ばすッばすッ」「ばじゅっばじゅっ」という擬音の付いているシーンも大好きなのですが、冒頭の笠井くんが泳いでいるシーンが一番のお気に入りです。傘が泳ぐとはどういうことなのかと思っていましたが、あぶく先生の画力の強さを感じました。傘がクイックターンしているところや、ゴーグルを付けているシーンも、先生だからこそ生まれたシーンだと思っています。


あぶく先生の超画力で描かれる笠井(傘)のクイックターン

―― SNSでの反響もすごかったですね。中には「上級者向け」とのコメントもありましたが、読者の声をどのように受け止めましたか?

担当者 BLをある程度知っている方は戸惑っている方が多く、一方で本来のターゲットであった初心者の方は読んでみようかな、という方も多くいらっしゃいました。BL好きにも、普段BLを読まない方にも受け入れられる良い作品になったんじゃないかなと思っています。

―― 今後、第2弾の企画や続編などはあるのでしょうか。

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担当者 SNSやレビューでも第2弾や他のカップリングを楽しみにしている声や、傘と傘立てではなく笠井くんと立山くんという人間としての描写だとどうなるのか見たいという声が寄せられているのですが、いまは全く決まっていないんです……。

 でも、今回特設サイトではより“BLらしい写真”を撮りたい方のために専用のカメラフィルター「カサバースカメラ」を8月31日まで公開しているので、例えばコーヒーの入ったグラスとストローで「コーヒーバース」など、いろんなバースを妄想して楽しんでいただきつつ、これからの「コミックシーモア」の企画を楽しみにしていただけるとうれしいです。


笠井・立山の人間バージョンイラスト(本邦初公開)

―― ありがとうございました。最後に記事の読者へ向けて一言お願いします。

担当者 『放課後水入らず』をきっかけに「コミックシーモア」を知っていただいた方もいると思うのですが、実は「コミックシーモア」は8月16日で20周年を迎えるにあたり、現在さまざまなイベントを実施しています。そのなかには、BLをはじめとした漫画をお得に読めるキャンペーンもやっているので、『放課後水入らず』をきっかけにBLに興味を持ってくださった方も、上級者の方も、ぜひ楽しんでいただけるとうれしいです。



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