ゲハブログ最大手「はちま起稿」が謝罪文を掲載、管理人交代へ「ステマ騒動」の矛先はゲハブログへ(2/3 ページ)

» 2012年01月16日 23時21分 公開
[池谷勇人,ITmedia]

事態は急転、再び「祭り」へ

 こうしていったんは収まったかに見えたゲハの移住騒動だが、年が明けてから意外な形で再燃することになる。上述した「ニュー速民の大量移住騒動」を「はちま起稿」が「2ちゃんねるで一揆発生! ニュース速報板住民の不信不満が爆発……大量移住へ」というエントリで取り上げた際、抽出したレスがあまりにも偏向的だったために(「ちょっと何言ってるかわかんない」「移住しても誰も困らない」といった、移住者を煽るようなレスばかりを抽出した)、移住した嫌儲民たちがこれに猛反発したためだ(おそらくその中には、以前からゲハにいた「反はちま勢」も少なからず加わっていただろう)。嫌儲板には一時、はちま起稿のアンチスレが乱立し、ついには管理人の名前や住所を突き止める者まで現れた。個人情報を特定し、晒すのはTwitterやmixiなどの「炎上」でもよく見られる攻撃方法だが、今回はゲハブログへの積年の鬱憤もあって、たちまち「祭り」へと発展した。「いつか陥れてつぶしたいと常時ロックオンしていた人たち」の敵対心が、ここぞとばかりに爆発したわけだ。

画像 「はちま起稿」へのアンチスレ。こちらはゲハ板側に立てられたもの

 個人情報に関わる部分については非常にデリケートな問題なので、ここで詳しく触れることは避けたい。しかし個人情報が特定されたことで、同時にこれまでは公にされていなかった「広告代理店とのつながり」が露わになり、そのことがさらなる燃料を投下した形となった。「広告代理店からお金をもらってゲームの宣伝記事を書いていたのではないか」という疑いがますます濃厚になったわけだ。これまでステマについてはその性質上、存在の立証が難しかったが(だからこそステルスなのだが)、「これこそステマの証明だ」と騒ぐ者も現れた。

 これがステマにあたるのかどうかはさておき、広告代理店とのつながりが浮かび上がったというのは少なからず衝撃を与えた。「同ブログが『個人運営』ではなかったという点が、今回の炎上の1つのポイントになっています。個人ではなく企業ぐるみだったという部分がキャッチアップされ、アンチまとめブログ派の怒りにますます油を注いだ形になった」(吉田さん)

ブロガーと広告代理店

 また、具体的に支払われる金額について、別の大手ゲハブログ管理人がTwitterでこんなこともつぶやいている。

「(略)ゲームのブロガー体験会イベントはゲーム会社が代行会社に多大な報酬を払ってブロガーを集めてます(いわゆるステマ)。相場は1つのブログによって30〜100万円ぐらい。それ聞いてアホくさくなったので体験会にいくのは辞めました」(大手ゲハブログ管理人)

 ここで言う「30〜100万円ぐらい」というのは、メーカーから広告代理店に支払われる金額であって、必ずしも全額がブロガーに行くわけではないだろう。とは言えこうした「ブロガーと組んだプロモーション」は以前から行われていたという。

「いくつかの広告代理店が、クライアント(ゲームメーカー)へ営業を仕掛ける際のカードとして、個人ブログを飼い慣らしているのは事実です。例えは悪いですが鵜飼いのようなものだと思ってください。代理店は個人ブロガーを集めて、新作ゲームの体験会をやらないかとメーカーに提案する。その際、代理店からブロガーに一定の『協力費』が支払われることもあれば、単に『体験会取材』という形で何も支払われないこともあります。大手ブロガーともなれば別ですが、中小クラスの個人ブロガーであれば、人よりも先にゲームを体験できる、ゲームメーカーを直接訪問できる、お小遣い又はギャラが発生することもある――といったアドバンテージだけでも喜んで参加してくれるでしょう。代理店としては少ない予算で効果をあげることができるため、ブロガーと組んだプロモーションは効率が良かったわけです」(吉田さん)

 「はちま起稿」の場合、1日あたりのアクセス数は「200万アクセスを誇る」(吉田さん)と言われる。月間なら約6000万アクセス。これはもはや商業ゲームサイトをも上回る規模であり、そこで商品が紹介されれば確かに認知度アップは見込めるだろう。しかし前述のとおり、ゲハブログ自体が非常にグレーな存在であり、これまではメーカーが堂々と彼らにコンタクトを取るのはタブー視されてきた。そこへ「広告代理店というフィルターが間に入ったことで、メーカーもゲハブログを使ったマーケティングを展開しやすくなった」(吉田さん)という背景事情もあるという。

 こうした「一般消費者の口コミを狙ったプロモーション」は、一般に「バイラルマーケティング」と呼ばれ、広告業界では以前から普通に行われてきたことでもある。先ほど「ステマにあたるのかどうかはさておき」と書いたのはそのためで、今回の例も厳密に言えばステルスマーケティングというよりは一種のバイラルマーケティング、もしくはタイアップマーケティングの一種と呼ぶべきかもしれない。しかし、高まりに高まった「はちま憎し」の流れはもはや止まることはなく、「ニュース速報(嫌儲)」に立てられたアンチスレは現時点で80スレ目に突入。はちま起稿のコメント欄にも、管理人を糾弾するコメントがいまだ多く寄せられており、ついには「謝罪文掲載、管理人交代」という事態を引き起こすに至ったわけだ。

画像 真偽のほどは分からないが、体験会の報酬について書かれたつぶやき。現在までに100人以上がリツイートしている

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