「時代の顔をアーカイブする」――Google、被災地を走ったストリートビュー撮影秘話(2/3 ページ)

» 2012年01月24日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]

 最終的には「Googleとしてやるべきはアーカイブ」と、ゴーサインを出すことに。「オールクリアではないが、そのタイミングでやろうと決断した感じだった」(村井さん)。そのわけを次のように語る。

 「阪神大震災の記憶が今どのくらいの人たちに残っているかというと、すごく難しい。文献を見れば分かるけど、その場所がどうだったかというのは、そこで心が傷ついた人くらいしか、正確に思い出せないんじゃないか。でももしGoogleがアーカイブすれば、日本のみならず世界中でいつでも記憶として蘇らせることができる。危険を感じなければ防災なんかやらないわけですから。悲惨さを体験していない人も知ることで防災に役立つ可能性がある。今撮影しなければと」(村井さん)

トラブル前提で入念に準備

画像 大倉さん

 通常ストリートビューを撮影する際に、Googleが地元自治体に連絡することはないが、今回は住民感情への配慮が「大きな大きなポイント」(村井さん)であったため、撮影に入るであろう市町村には事前に知らせ、事情を説明した。特に宮城県気仙沼市は協力的だったという。「気仙沼市役所に話に行ったとき、『新しいテクノロジーを使って記録を残すことにすごく意義を感じる』と言ってくださった。我々と(ビジョンが)すごく近かった」と村井さん。そこで撮影は気仙沼市から始め、同市を核としてエリアを周辺へ広げていくことにした。

 撮影ではドライバーの安全確保を最優先し、撮影前の準備は「トラブル前提」(村井さん)で入念に進めた。村井さんや大倉さんが実際に現地を視察。信号が機能していない交差点や地盤沈下で満潮時に冠水する港付近など、普段とは状況が違う場所が多いなか「物理的に走って問題ないかを確認し、注意点をドライバーに伝えた」(大倉さん)

 撮影がスタートしたのは、地震からちょうど4カ月後の7月11日。「(地元の人から)怒られたらどうしようとか思ってたんですけど、ネガティブな反応はほとんど無くて、『頑張って』と言われたり、お菓子やコーヒーを差し入れてくれた人もいた。東北の方はフレンドリーで、色々話しかけてくれた」と大倉さんは振り返る。

 何らかの理由で撮影を止められるケースを想定し、プロジェクトの趣旨を説明した紙をドライバーに持たせていたが、その紙を配ることもほとんどなかった。むしろ「『写真はいつ公開されるのか?』と待ち望む声が多かった」(大倉さん)

過去と現在「比較できない限りは出さないと決めていた」

 撮影したのは6県82市町村。カメラは普段と同じ2メートル5センチの高さに据えた。写真はGoogleマップと特設サイト「未来へのキオク」で公開している。震災前からストリートビューに対応していた一部の地域は、未来へのキオクで震災後の新しい写真と以前の様子とを見比べられる。過去と現在のストリートビューを比較できる形で公開するのはGoogle全体でも初めての取り組みだ。

 「過去の写真を無くさない形で新しく撮影したものをどう見せるかは、プロダクトのチャレンジだった。それができない限りは(今回のストリートビュー写真を)出さないと決めていた」と村井さん。「(過去と現在を)同時に見て何を感じてもらうか――我々は事実を事実として見せることに注力していく」と語る。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」