メジャーを狙うジャニーズJr.みたいだった――終了したサービスの経験を語る「失敗カンファレンス」が大盛況「Vox」「nowa」を覚えてる?(1/3 ページ)

シックス・アパートの「Vox」やライブドア(当時)の「nowa」など終了したサービスの担当者が経験を語る「失敗カンファレンス」が大盛況。nowaの担当者は「自分のセンスのなさを直接批判される感じがして」辛かったと当時を振り返り、最後を看取る重要性を説く。

» 2012年03月14日 17時31分 公開
[宮本真希,ITmedia]

 自分が手掛けたWebサービスで「事業化できなかった」「ユーザーが集まらなかった」といった経験を持つ作り手が、当時を振り返りつつ学んだことを共有するイベント「失敗カンファレンス 2012」が3月13日、開催された。成功談が取り上げられることは数あれど、失敗例はあまり耳に入ってこないもの。ゆえにネット界隈の人々の注目度は高かったようで、定員150人分のチケットはすぐに売り切れる人気に。会場ではオフレコの話も挟みつつ、多いに盛り上がった。

【パネラー】

関信浩さん:シックス・アパート代表取締役CEO。2003年の設立からMovable Type、TypePad、Vox、LiveJournal、Zenbackといったサービスの立ち上げと、事業売却(LiveJournal)、サービス停止(Vox)などに携わる。イベントではVoxの失敗談を中心にトーク。

清田いちるさん:ギズモード・ジャパン編集長。シックス・アパートのメディア事業担当シニア・ディレクター。前職のニフティー時代は、すでに終了しているメッセンジャー「デリポップ」、社員によるコラムサイト「マ・ラソン」などに関わった。マ・ラソンのコンセプトは「デイリーポータル Z」に引き継がれている。

赤松洋介さん:05年にサイドフィードを設立。現在は「ツイキャス」でおなじみのモイのCEOも務めている。「基本、オフレコでお願いします」とのことで、記事で紹介できるエピソードは少なめ。

尾下順治さん:アクセルマーク代表取締役。KDDI退職後に創業したモバイルベンチャーをヤフーに売却。ベンチャーキャピタルへ転職後、エフルートに出向・転籍し、08年に取締役に。昨年10月にアクセルマークと合併し、代表に就任した。アクセルマークをソーシャルアプリメーカーに事業転換した経験などから「失敗手前で回避して次に向かうっていうスキルがついたかな」とコメント。

佐々木大輔さん:NHN Japanウェブサービス本部サービス企画2室執行役員CPO。05年にライブドアへ入社し、現在までに「livedoor Blog」や「ロケタッチ」の事業責任者を担当。07年に初心者向けブログサービス「nowa」をリリースするも、09年3月に終了。この失敗でソーシャルサービスへのコンプレックスをこじらせたが、「3回忌」というタイミングで、イベントへの出席を決意したそうだ。

【モデレータ】ゼロスタート社長の山崎徳之さん

【企画者】ユーザーローカルの閑歳孝子さん


メジャーを夢見るジャニーズJr.みたいだった――「nowa」の場合

画像

 イベントはモデレータ山崎さんの「明るくやっていきましょう」という呼びかけで始まった。トークテーマが失敗だからといって暗くなる必要はない。パネラーは皆、失敗を踏まえて次のチャレンジに進んでいる猛者たちなのだ。

 冒頭トークが盛り上がったのは、佐々木さんの「nowa」だ。ブログサービスながら、mixiのように友達登録できる機能や、Twitterのように今何をしているかを書き込む機能を備え、リリース当初注目を集めた。当時livedoor Blogがもうかりづらい状況だった一方で、mixiなどクローズドなサービスにユーザーが集まっており、佐々木さんは「焦りを感じて」いたという。

 nowaの企画が始まったのは06年。ライブドア事件の後だったこともあり、nowaには「虚業のライブドア」から「技術のライブドア」へとブランドイメージの刷新を図る狙いがあった。当時の社員のモチベーションを佐々木さんは次のように表現する。「みんないつか自分の番がやってきて、(自分が作ったWebサービスで)デビューしたいって気持ちがあった。ジャニーズJr.みたいな集団なんですよ」。

画像 オープン当時のnowa

 開発は、エンジニア、デザイナー、企画者でチームを組んで進めた。「マーケッターがいなかった。でも良いと思ったものをやっているので不安はまったくなくて最高に楽しかった」。だが思ったほど流行らず、09年3月に終了。「自分のセンスのなさを直接批判される感じがして」辛かった。「携帯電話で使うと面白かったんだけど、当時スマートフォンは普及してなかったし、タイミングが早かったんですね……」と佐々木さんはポツリ。「暗い!」とモデレータ山崎さんから突っ込みが入る。

 当時を振り返って思うのは「livedoorの名前を使うべきだった」ということだ。livedoorは好きだったが、ライブドア事件でブランドイメージが「地に落ちた」あの時、nowaはあえて独自ドメイン・独自ブランドを選んだ。「知名度が高いけど好感度は低いものは、逆に後から好感度を高めたりできるわけで、勝負すべきだった。livedoorの名前でサービスを出すだけでそこそこ反響をもらえるという“下駄”を履いていたことに初めて気付いた」。

 ライブドアがネイバージャパンとともにNHN Japanに経営統合され、現在大ヒット中の「LINE」にも関わるようになった佐々木さん。nowaの失敗でソーシャルサービスへの「コンプレックス」をこじらせ、「二度とやらないぜ!」と遠ざけてきたが、実はすごくやりたかったことに気付いた。「引きこもりのお兄ちゃんにかわいい妹が同居してきたみたいな」と、佐々木さんは謎すぎる(?)例えで会場の笑いを誘う。

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