現地の人しか知らない場所に行ける旅行サービス「Meetrip」誕生 「東京案内人」を体験してみた

心に鮮明に残っている海外旅行の記憶って何だろう――。ふと考えてみたときに思い浮かぶのは、現地の人に親切にされた思い出、彼らの顔、会話、珍事件(?)などではないだろうか。現地の人の案内でガイドブックにない旅を楽しめるサービスがスタートした。

» 2012年09月18日 11時52分 公開
[池田園子,ITmedia]

 ピーチ・アビエーション、エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパンなど、LCC(格安航空会社)の台頭で、2012年はLCC元年とも言われている。海外旅行はこれまで以上に身近なものになっていくだろう。しかし旅行の中身はというと、ガイドブックを持って主要スポットを巡り、写真を撮り、買い物をし……とごくごく普通に過ごす人は多い。それはそれで楽しいのだけれど、もっとオリジナリティのある旅にしてみない? いつもの旅に彩りを添えてくれるWebサービス「Meetrip」が9月18日にスタートした。旅先で現地の人にガイドしてもらえるサービスだ。

現地の人に案内してもらう「私オリジナル」の旅

 Meetripのコンセプトは「現地の人と一緒に旅しよう」というもの。観光ガイドブックには載っていない、現地の人が知っているレストランや店、スポットを案内してもらえるのが売り。Facebookのアカウントを使ってMeetripにログインすると、日本版(東京)と台湾版(台北)が表示される。私(日本人)が旅するという設定で話を進めていこう。

Meetrip

 台湾を旅する場合は台湾版のページを見てみる。中にはガイドになってくれる台湾の人たちがずらりと並んでいる。各々「旅のプラン」を作っていて、例えば「温泉、夜市、古い町並みなど、地下鉄とバスで回りたいところを一緒に回ります」というようなプランもある。かかる時間と案内料金は自由に設定できるが、1〜2時間で5ドル前後とそんなに高くはない。これらのプランから、行ってみたいものを選ぶ。

 日本版のページは、主に日本に旅をしに来る外国人向け。日本のユーザーが作った東京周遊プランが並んでいる。「お好み焼きを食べに行く」「純喫茶を巡る」など、それぞれが得意(?)とする分野での内容が多い。だからこそ個性的な旅ができて面白い。

 プランに関して分からないこと、追加で聞きたいことなどがあれば、Meetrip内のメッセージ機能を使ってたずねることができる。プランへの申し込みや決済も、Meetrip内で決済サービスのPayPalを使って行う。旅当日までのコミュニケーションはかなりしやすい。現在はPCとスマートフォンのブラウザで見られるが、今年度内にアプリをリリースして、より使いやすくすることも検討しているという。

旅の醍醐味は「現地の人との出会い」

 「旅行が好きなんです。これまでに訪れた国は30カ国くらい」と語るのは、Meetripを運営するダックダイブのCEO、貴山敬さんだ。初めての海外旅行は18歳で訪れたネパール。初体験にしてはなかなかハードルの高いエリアを選んでいるような気がする……。

ダックダイブの貴山敬さん(左)と有安伸宏さん

 「地図にないものを見つけるワクワク感、行き当たりばったり感を楽しみたいんです。ネパールに行ったときも初の海外への不安というよりも、楽しいことだらけでした」(貴山さん)

 現地で出会ったネパール人の男性から「日本に戻ったら渡してほしい人がいる」と手紙を託された。昔日本に出稼ぎに来ていた頃に、お世話になった人あてに書いたものだという。情報は電話番号のみ。帰国後、その番号にかけてみると、相手は北千住に住んでいることが分かり、預かっていた手紙を渡しに行った。ひたすら感動されて、喜ばれた。

 これが初めての旅で経験した初めての出会いだった。濃すぎるくらいに濃厚。それから旅に出る度に、貴山さんは偶然の出会いを積み重ねていく。いくつもの経験を振り返って気付いたのは「旅の醍醐味って、現地の人との出会いではないか?」ということ。Meetripの立ち上げにはこのような背景があった。

「地元ガイド」になってみた イスラエル人旅行者と下北沢ぶらり旅

 私もMeetrip(プレオープン版)を使ってみることにした。しかし台湾旅行へは行けないため、日本に旅をしに来る外国人向けに、東京を案内する側になってみた。まずはプラン作成。せっかくなので、スカイツリーとか浅草とかありがちなコースは避ける。そこで思い付いたのは下北沢ぷらぷらコース。下北のおしゃれカフェでお茶+かわいい雑貨屋でお買い物という1時間プランだ。

Facebookにアップした写真から選ぶので、とても写真が選びやすい
Litalさんと対面

 ほどよい雑多感が味わい深い下北沢は、外国の人にとっても新鮮なはず。渋谷や原宿はわりと有名そうなので、このチョイスが当たるといいなと思いながら、あえて下北沢にしてみた。今回私の作ったプランを選んでくれたのは、Litalさんという26歳のイスラエル人の女の子。英語をきちんと話せるかなぁと少しドキドキしながら、待ち合わせ場所の下北沢駅南口に向かう。

 そこにいたのは、かなりアクティブそうな女子。軽く自己紹介をした後、早速カフェまで歩いていく。その間に知ったのは、8月末に来日したこと、つい先日まで富士山に行っていたこと、肉・魚・卵・乳製品を食べないこと、登山が好きなこと、など。男子以上にたくましいバックパッカーらしい。

Litalさんと下北沢を歩く

初対面でも不安はないワケ

 最初の目的地である「kate coffee」というおしゃれカフェに到着。富士登頂時の写真を見せてもらった。英語力がめっきり衰えた私は、身振り手振りを交えて何とかコミュニケーションを取る。Litalさんも英語が得意というわけではないらしく、お互い手探り状態だけれども、何だかこれがとても新鮮。

カフェで富士登頂の写真を見せてもらう

 旅行業に従事したことのない私が、案内人になっているということにワクワクする。日本には1カ月ぐらい滞在する予定らしく、後で北海道に向かうという話も聞いた。しばらく休憩をしてからキュートな100円均一アイテムを集めた雑貨屋「banabana」へ向かった。

 途中で通りかかった「ヴィレッジヴァンガード」に興味を示したLitalさん。お面を物色し始めた。パックツアーなどで参加していたら、こういったところには来られないはず。偶然の発見、偶然の出会いが、旅にはたくさんある。それを逃すのはもったいないなと感じた瞬間だ。

ヴィレッジヴァンガードに立ち寄る

 2つ目の目的地のbanabanaで「日本のKAWAII」について少しレクチャーした後、そろそろ時間が来たので「Enjoy Shimokita-zawa Tour」は終了。何だか早かったなぁと名残惜しくもなる。Litalさんは最後にお守りをくれた。赤い紐に目と手のモチーフが付いた独特なアクセサリーだ。うれしいけれど寂しい気持ちになる……。確かにこういう旅は忘れられない。「世界ウルルン滞在記」みたいだ。

雑貨屋さんへ

 旅の感想を聞いてみると「下北沢は初めてだったけれど楽しかった」とLitalさん。「初めて会う私に不安はなかったのか」という問いに対しても、Meetripに載せた顔写真をあらかじめ見て、悪い人ではないと思ったらしい。まったく心細さはなかったという。その後も「下北沢面白い。もっと見てみたい」と1人で散策を続けたLitalさん。もっと案内してあげたかったし、一緒に探索できて良かった。

 いつもの旅に特別という名のエッセンスを。Meetripを使ってみて私が勝手に思い付いたコピーだ。案内してもされても、そのときに見た景色はきっと忘れないだろうなと思った。

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