25歳までに読みたいマンガ3選 「ローファイ・アフタースクール」「マフィアとルアー」「ストロボライト」虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ! 第7回(2/2 ページ)

» 2013年11月01日 10時00分 公開
[ねとらぼ]
前のページへ 1|2       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
画像

 その後、この「マフィアとルアー」の続編的短編集として、「DON’T TRUST OVER 30」(星海社文庫)が出版。こちらは結婚や出産、家族との軋轢など、前作から10年の時を経て、例によって作者の精神性が如実に反映された30代の男を主役とした半自伝的短編が収録されています。実年齢において10年、精神年齢において20年遅れている社主が、この作品群に込めたTAGRO先生のメッセージを理解できるのは40代になってからでしょうか。

 ちなみに社主がTAGRO先生の存在を知るきっかけになった「四畳半スペースオペラ」こと「宇宙賃貸サルガッ荘」(講談社)も超おすすめです。「月刊Gファンタジー」(スクウェア・エニックス)で連載されていた当時、発行部数があまりに少ないまま絶版したことから、後に入手困難に陥り、一時期ネットオークションで1冊6000円の値がついたこともありましたが、手持ちの単行本を出品しようかという誘惑にも駆られましたが「変ゼミ」が人気を得たおかげで、現在講談社から追加エピソードを収録した新装版が全4巻で再刊されています。本連載が続くようなら、機会を改めてこの「サルガッ荘」も取り上げたいところです。

ストロボライト(青山景)

 最後に紹介するのは青山景先生の「ストロボライト」(太田出版)です。この名前を聞いてピンとくる人もいるかもしれません。作者の青山先生は2011年10月9日、32歳の若さでこの世を去りました。自殺によるものでした。

画像 (C)青山景/太田出版

 2009年発売の「ストロボライト」は、小説家志望の大学生・浜崎正が聖典のようにあがめるカルト映画のヒロイン・桐嶋すみれにそっくりの大学生・町田ミカとの交際を「書く」ことによって構築していく作品。社主はその表紙のインパクトに惹かれて買ったのですが、美大卒という経歴に裏打ちされた画力の高さと、現在と過去、現実と空想、主観と客観が交錯する世界で紡がれていく重層的な物語構造が融合した、まさしく傑作と言って差し支えない作品でした。

 その後2010年には小学校を舞台に、学級の中に宗教が芽生えていく過程を描いた「よいこの黙示録」(全2巻・未完)の連載を開始。まさにこれからというタイミングで報じられた自殺の知らせに、社主はその後1週間ほど魂が抜けたかのようになりました。亡くなる3日前、自らのツイッターに遺したメッセージ(現在削除済み)は、ほぼ同世代の人間として、とても切実なものと感じられました。

 世に問うた作品が高い評価を受け、その将来が期待されていたマンガ家がなぜ死を選んだのか――。おそらく悩みに悩んだ末に導き出したのであろう彼の言葉は、亡くなった当時の年齢を追い越してしまった今も心に引っかかったまま、なおその答えを見つけ出せずにいます。


 さて、前回とは打って変わって、今回はいつになくシリアスに紹介してみました。ここまで読んで「どれも重いな……」という印象をもった人も多いかもしれません。しかし、すでに30代に足を踏み入れた者として、老婆心ながらに一言助言させてもらうと、こういう重い作品を自らの血肉として吸収できるのは若いうちに限ります。人間、歳を取るに従い、「私」という自我は良くも悪くも硬直していく一方です。だからできるだけ早く、できれば25歳までにこういった作品に触れてほしいと思うのです。

 今回はちょっとまじめに書きすぎたので、次回はうんこをモグモグ食べるようなマンガを紹介しようかな、などと思いつつ、今回はこれにて筆を置きます。

 今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2505/19/news109.jpg マクドナルド、ハッピーセットの「早期終了」を発表 横行する転売――モラルのない行動に第2弾販売への不安広まる
  2. /nl/articles/2505/17/news021.jpg 50年間放置して“ジャングル化”したおばあちゃんの家 → 掃除したら…… “木の中から現れたもの”が170万再生 「予想を超えた」「ブラボー」【海外】
  3. /nl/articles/2505/18/news010.jpg 日本人のママと米国人のパパが国際結婚→生まれた子どもは…… 290万再生の“まさかの現在”に「びっくりしました」「心温まる」【海外】
  4. /nl/articles/2505/14/news157.jpg Nintendo Switch 2の抽選に当たったのはいいけど…… “とんでもないミス”に1800万表示の絶叫「やべえええ」「めっちゃ笑った」
  5. /nl/articles/2505/16/news171.jpg 1室1万円“忘れられた別荘地”、1DKアパートのドアを開けると…… まさかの光景に「すごい」「驚きました」
  6. /nl/articles/2505/13/news026.jpg 「購入して大正解」 ワークマンの“1780円最強暑さ対策ポンチョ”に称賛続出 「文句なし」「ずっと販売して」
  7. /nl/articles/2505/15/news035.jpg “1K8.5畳”の新居を一人暮らし男子が模様替え→1年後…… 「もうホテルやん笑」生まれ変わった空間に驚き「こんな部屋に住みたい」
  8. /nl/articles/2505/17/news037.jpg 水族館で夫が撮った妻と息子のショット、見返そうと思ったら…… 妻の予想外すぎる姿に「コーヒー吹いた」「これはさすがに王騎将軍もびっくり」 投稿者に話を聞いた
  9. /nl/articles/2505/18/news030.jpg 「アムロ専用ザクか……」 ガンダムが奪われた世界でアムロが乗る機体を“妄想したガンプラ”に反響 「すごく“ありそう”」
  10. /nl/articles/2505/16/news148.jpg マクドナルド、「ちいかわ&マイクラ」ハッピーセット→即日売り切れの店舗も…… 対策とるもフリマサイトに転売「早速転売ヤーの餌食に」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 急性骨髄性白血病で闘病中だったVTuber、死去 「復帰を目指して闘病」 専門学校の講師としても活動
  2. 万博の“着物ショー”に天皇陛下だけ許される「装束」登場で物議…… 「深くお詫び」主催者謝罪
  3. 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」 投稿者に話を聞いた
  4. 大人なら解けないと恥ずかしい? 「(1/8)−(1/8)」を計算せよ!【算数クイズ】
  5. 「女の子みたいな顔だね」と言われ続けた男の子、20歳になったら→「神がかってる」姿に驚がく 「人体の不思議」「オーラが凄い」
  6. 使わなくなったカラーボックス→“ずぼらシンママ”が簡単DIYしたら…… 天才的な仕上がりに「かしこーい!!」「これ作ってみよう」
  7. クリスマスに出会ったギャルとギャル男が21年後…… 誰も予想できない現在に「素直に凄い」「人に歴史あり」と称賛の声
  8. カルディ全店で販売の生ハムから「サルモネラ属菌」検出…… 「心よりお詫び」7万個自主回収
  9. マクドナルド、次回ハッピーセットコラボに「待ってました!」 人気作の登場に混乱の懸念も「すぐ売り切れそう」「初週ヤバいぞ」
  10. お隣さんから丸見えの土地→巨大ウッドフェンスを7日かけてDIYしたら…… 雰囲気ガラリで「すごい大作ですね」「ワクワクした」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 築53年家賃4万円・何てことない団地のドアを開けると…… まさかの空間出現に驚きの声「素敵」「ここまでお洒落に」
  2. 小学生時代「こんなプラモ誰が買うんだよw」→40年後…… “大人になった”を実感するエピソードに「分かる」「特大ブーメランw」
  3. 49歳病没の大宮エリーさん、生前開催の個展で「体調も万全でなかったので不安」 3カ月前には苦しげな姿も「声が出にくい」
  4. 自販機に“1000円”を入れたら……? 出てきた“とんでもないお釣り”にお口あんぐり「こんなん初めて見た」
  5. 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫、1年後の姿に「泣いた」と大反響 それからどうなった?現在の様子を聞いた
  6. 100万円の“錦鯉”を自宅の池に入れたら…… 「おかしいでしょ」3日後、まさかの事態に「鯉は難しい…」「信用が大切ですね」
  7. パパに、保育園へ行く娘のヘアアレンジを任せたら…… ママがひっくり返った“仕上がり”が400万表示「重力どこ?」「頑張った感がいい!」
  8. 「成長したらそのうち襲ってくる」と言われたワニ、16年後……→ 280万回再生を突破した驚きの姿に「初めて見た」の声
  9. 人里離れた山にカメラを設置→1週間後…… 「なんで?」映っていた“意外すぎる住人”に「笑った」「実在していたのか!」
  10. 「神パンツきた」 ユニクロ新作“3990円パンツ”が品切れラッシュの大人気 「過去イチかも」「本当にこれは買い」